ほんやく検定受験 ― 私の場合●三浦 朋子

2014/11/07

三浦 朋子


201411051557_1-150x0.jpg
日英・英日医薬翻訳者。外国語学部英米語学科卒業。英国の大学でArts and Heritage Managementを専攻し、修士号(MA)取得。新聞社、映画会社等での勤務を経て、2008年から医薬分野を専門とする翻訳会社で翻訳者として勤務し、2013年にフリーランス翻訳者として独立。治験関連文書、論文、厚労省通知、照会事項、副作用報告等を得意とする。
 

医薬翻訳者の三浦朋子です。2008年から医薬分野を専門とする翻訳会社に勤務し、2013年にフリーランスになりました。まだフリーランス歴が1年数カ月と短いため、フリーランス翻訳者のライフスタイルをテーマとしたこのコラムに寄稿させていただくことは少々恐れ多いような気がしましたが、コラムオーナーの高橋様から「ほんやく検定のお話を」とのお題をいただきましたので、ほんやく検定の受験経験と、受験をとおして感じたことを中心に書かせていただこうと思います。
 
私が初めてほんやく検定を受験したのは2012年7月の第57回で、まだ翻訳会社に勤務していた時のことです。ちょうどこの頃に家庭の事情で翌年(2013年)の年明けに転居することが決まり、転居と同時に退職してフリーランスとしてやっていこうと決めた時期でもありました。
この時点で翻訳会社での医薬翻訳経験が数年あったものの、それ以前は「新聞社の広告営業→音楽大学の助手→映画会社の宣伝担当」と、なんとも一貫性のない仕事人生を歩んでいました。そのうえ理系出身でもなかった私にはこれといって強い「売り」もなく、フリーランスになるにあたって少しでも「売り」になりそうなことはなんでもやってみよう、と考えていました。そんな時に第57回の受験申し込みの受付期間中であることを知り、すぐに申し込みました。
 
さて、試験当日。自分のPCを使って自宅で受験できる制度はとてもありがたいのですが、当時まだ5歳と3歳だった子どもがいる我が家の場合、休日の自宅は決して集中できる場所ではありません。とりあえず試験に集中する環境を確保するため、電車で1時間かかる実家に行って子ども達を預けてから1人で帰宅し、ギリギリのタイミングでPCの前に座りました。自宅受験だというのに、なぜか受験のために往復2時間電車で移動するという慌ただしい受験となりました。
時間の制約もあり、試験開始時間が遅い日英のみの受験でしたが、この時に2級に合格し、その後2014年2月の第60回で、医学薬学の日英で1級に合格することができました。
1級に合格してから日が浅いので、1級合格の仕事への影響についてはまだ語れるほどではありませんが、2級合格時にJTF翻訳ジャーナルにプロフィールを掲載していただいたため、ジャーナル経由でご連絡を下さり、お仕事をいただけるようになった会社が数社あります。
 
フリーランスになるための最初の関門はトライアル受験ですが、課題送付や合否判定に何カ月もかかったり、初仕事がなかなかこなかったりということは、私も含めて多くの方が経験されているかと思います。しかし、あくまでも私の少ない経験に限った話ではありますが、検定合格者のプロフィールから興味を持っていただき、声をかけてくださった翻訳会社では、トライアルの課題送付や合否判定に時間がかかったところは1社もありませんし(合否判定はどこも1週間以内)、どこも価格の交渉時にこちらの希望レートを了承してくださいました(通常は若干下がることが多い)。偶然といえば偶然なのかもしれませんが、翻訳者を探していた翻訳会社のニーズと、こちらの提供できるものがマッチしたということも多少はあるのかな、と勝手に考えています(そう思いたい)。こちらから積極的に登録先を探してトライアルを受験することももちろん大事ですが、多くの翻訳者の中から「自分のことを見つけてもらい、先方から声をかけてもらう」きっかけを作ることも大切だと感じています。
 
ほんやく検定に合格したおかげ…かどうかは断言できませんが、どうにかコンスタントにお仕事をいただきながら、フリーランス生活も2年目に入りました。
少しだけ仕事スタイルについて書きますと、私は超朝型なので、仕事開始は午前3時頃です。3時から5時半まで仕事をし、朝の家事を済ませて子ども達がそれぞれ登校・登園した後、8時半頃に仕事を再開します。その後、休憩等をはさみますが、午後2時過ぎに子供が帰宅するまでが仕事時間です。トータルで1日7時間ぐらいでしょうか。日中にもう少し時間がとれるとよいのですが、しばらくは難しそうです。
 
仕事机の周りは写真のような感じになっています。隣のピアノは、予定していた場所に置けずにやむを得ずここに置くことになったものですが、置いてみるとこれがなかなかいい感じなのです。仕事に行き詰まったらそのまま左に移動してピアノに触って息抜きをし、終ったらまた右に戻って仕事再開です。仕事中はほとんど動かないので、外に出たり、運動したりしたほうがいいのだろうと思いつつ、根っからの運動嫌いなのでなかなかできずにいます。
 
201411051558_1-300x0.jpg
 
この秋には、娘と一緒にバイオリンを習い始めました。20代の頃に習っていたものの1年で辞めてしまった過去がありますが、10数年のブランクを経て再開しました。会社勤めで帰宅が夜になる生活では練習時間の確保が難しかったのですが、今はお昼の休憩時間に練習しています。この時間を確保するため、午前中の仕事の集中度がかなりあがったような気がします。
仕事をして、楽器を弾いて…、と書くと、なんだか優雅な感じもしますが、実際には、子供のお迎えなどで仕事の時間はいつも強制終了され、時間に追われている生活です。それでも、育児や趣味の時間と比較的折り合いがつけやすいこの生活を、今はとても気に入っています。
 
最後に、ほんやく検定の話に戻りますが、翻訳には「これでなければダメ」という解答があるわけでもなく、たった1つの課題だけで実力を判定することについてはいろいろな意見があるでしょうし、翻訳に試験なんて必要ないという考え方もあるかもしれません。それでも、トライアル合格へ向けて勉強中の方や、仕事を始めたばかりの方にとっては、検定合格が仕事上の良いご縁を得るためのきっかけにはなると思いますし、受験して損をすることは何もないので、なにはともあれチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
 
「声をかけてもらえるきっかけをつくることが大切」と書きましたが、継続的に仕事をするための本当の勝負は声をかけていただいた後の仕事そのものです。今後は、「登録のため」だけではなく、継続的に声をかけていただける翻訳者になるために、試行錯誤を重ねながら、ほんやく検定以外の自分の「売り」を作っていきたいと思っています。



 

コラムオーナー

201309060821_1-200x0.png
高橋 聡
(たかはし あきら)

 
CG 以前の特撮と帽子をこよなく愛する実務翻訳者。翻訳学校講師。学習塾講師と雑多翻訳の二足のわらじ生活を約10年、ローカライズ系翻訳会社の社内翻訳者生 活を約 8年経たのち、2007年にフリーランスに。現在はIT・テクニカル文書全般の翻訳を手がけつつ、翻訳学校や各種SNSの翻訳者コミュニティに出没。

■ブログ「禿頭帽子屋の独語妄言」
http://baldhatter.txt-nifty.com/trados/


 

MISSION STATEMENT

「意外と知られていないフリーランス翻訳者の素顔をさぐる」ために始まったこのシリーズ。そもそもは、私自身がいろいろな翻訳者さんの様子を伺ってみたいと思ったことがきっかけでした。思ったとおり、今に至るまでの人生も、生活スタイルも仕事のしかたも千差万別です。これからも、登場していただきたい方はたくさんいますが、執筆してみたい方がいらっしゃれば、ぜひ帽子屋までご連絡ください!