地方都市におけるネットワーキング●中島 拓哉

2015/07/03

中島 拓哉
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英日翻訳者。専門は法務。東京都内の法律事務所と米国企業法務部における英文契約書レビューやドラフティング、訴訟対応を経て、2010年よりフリーランス翻訳者として活動。2012年に数名で経営コンサルティング会社を設立。通常業務は管理部門の統括。クライアントからの依頼がある度に、契約書を中心とした翻訳に加えてビジネス文書の校正やDTPも担当。都内の大学における研究支援活動(英語教材・コーパス辞書作成)にも従事。現在は静岡に拠点を置きつつ、東京にも構えたオフィスとの間を往復する日々。
 
 
静岡翻訳勉強会(しず翻)の幹事をしている中島拓哉です。この度は、運営に携わっている勉強会の様子をお伝えします。
 
Facebookの「しず翻」グループには、現在50名弱の会員がいます。うち静岡在住者は10数名で、少ないながらも専門分野は多岐に渡っています。県内在住者だけですと参加者が固定されてしまいますので、県外からの参加者も呼び込むよう努めています。そのため、開催場所は静岡や浜松、掛川といった新幹線停車駅近くにしています。今のところ大々的な宣伝はしていませんが、口コミによって県外からも多くの方にご参加いただいています。「翻訳勉強会」と銘打っていますが、メンバーには英語塾経営者や一般企業勤務の方もいます。当勉強会に関心をお持ちの方はどなたでも歓迎です。翻訳を媒介とした交流の場になればと考えています。
 
そもそもの発足のきっかけは、ちょっとした好奇心でした。2011年頃からJTFやJAT、翻訳学校が東京で開催するセミナーに参加するようになったのですが、当初は知り合いが全くいませんでした。しかし懇親会にも参加して様々な業界関係者と交流するにつれて、非常に有益な情報交換ができるようになりました。このような横のつながりを持てる場が静岡にもあればと思ったのですが、自分の知るかぎりではありませんでした。
ならば作ってしまえばいい。そこで、2013年の夏にTwitter上で交流があった村田博文さん(写真左)、天野隆平さん(写真右)に呼びかけ、共同主宰者になってもらいました。自分1人で全てをやろうとするのは限界がありますが、志を同じくする者が3人いると非常に心強いです。
 
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(写真1: 村田さん

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(写真2: 天野さん
 
見ず知らずの者同士が最初から飲み会というのはハードルが高いと思い、まずは3人で協力してTwitter上でお茶会の開催を告知しました。こうして始まった最初の会に集まったのは5名。参加者は互いに初対面でしたが、翻訳という共通項のおかげですぐに打ち解けることができました。地方都市ならではの強みや弱み、業界動向などについての情報交換ができました。当初の目的は地元の翻訳者ネットワークを作ることのみでしたが、そのうち誰からともなく勉強会をやってみようという話になりました。
 
そうなると、ある程度の人数を集めたいところです。ただし東京や大阪のような人口密集地ではないので、ウェブ上で漠然と告知するだけでは集客は見込めません。そこで、まずは自分たちの情報網と足を使ってみました。普段から出入りしている地元の飲食店や小売店に足を運び、店の方から翻訳者のお客さんをご紹介いただきました。他には地元での異業種交流会で知り合った方をはじめ経済同友会や青年会議所会員の知人、ソースクライアントの担当者から社内外の翻訳者をご紹介いただいたりもしました。さらに、そうして知り合った社内翻訳者の方に、職場での呼びかけをお願いしました。そうして2014年の春に集まったのが15名ほど。FacebookやTwitter経由での宣伝もしましたが、ほとんどがSNSだけでの告知では知り合えなかった方でした。
 
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(写真3: 勉強会)
 
こうしてみると、たとえ翻訳者の実数が見えにくい地方都市であっても、その気になって探せば意外といるものだなと思いました。簡単なことですが、勉強会等の立ち上げに際して集客の参考になれば幸いです。いまでは勉強会メンバーがオンラインとオフラインとを問わずお声がけしてくださったおかげで、毎回10名以上の参加者が見込まれるようになりました。本コラムオーナーの高橋聡さんからもご紹介いただき、会員は着実に増えつつあります。
 
勉強会の形式は、希望者による1人あたり15~30分程度のプレゼンと質疑応答が中心です。テーマは特定分野に偏らないよう、普遍的なものを取り上げるようにしています。例えば、写真による仕事場の紹介や凡ミス防止策、海外との取引の際に気を付けるべき点、一日の業務の流れの紹介などです。そうなると、どうしてもツールや辞書、仕事環境に関する話が中心になりがちです。そこで、今後はメンバーの意見を参考にどのようなテーマを設定しようか模索中です。
 
時折、テーマを決めた座談会も開催しています。昨年6月にIJETが東京で開催されましたが、参加者が得た情報をシェアする場を設けたりもしました。これら以外にオフ会もあり、Jリーグ観戦やビアガーデン、静岡おでん横丁巡りなどをしています。各種メーカーの生産拠点が多い土地柄なので、工場見学ツアーも予定しています。今のところ評判も良く、今後も参加者を呼び込むための様々な仕掛けを作っていきたいです。とはいえ幹事一同、あくまで本業優先という「ゆるい」関わり方をしています。そのため開催頻度は年に数えるほどですが、末永く続けていくつもりです。
 
たとえ小規模でも、実際に会って交流できる場はオンラインで得られる情報以上の価値を与えてくれます。ちょっとした思いつきから立ち上げた一地方の勉強会ですが、いずれは各地の翻訳者ネットワークと連携して情報交換のみならず人的交流も図ることができればと考えています。多少なりとも翻訳業界の活性化に貢献できれば幸いです。
 
Facebook「しず翻」グループ:https://www.facebook.com/groups/562275113882374/
 

コラムオーナー

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高橋 聡
(たかはし あきら)

 
CG 以前の特撮と帽子をこよなく愛する実務翻訳者。翻訳学校講師。学習塾講師と雑多翻訳の二足のわらじ生活を約10年、ローカライズ系翻訳会社の社内翻訳者生 活を約 8年経たのち、2007年にフリーランスに。現在はIT・テクニカル文書全般の翻訳を手がけつつ、翻訳学校や各種SNSの翻訳者コミュニティに出没。

■ブログ「禿頭帽子屋の独語妄言」
http://baldhatter.txt-nifty.com/trados/


 

MISSION STATEMENT

「意外と知られていないフリーランス翻訳者の素顔をさぐる」ために始まったこのシリーズ。そもそもは、私自身がいろいろな翻訳者さんの様子を伺ってみたいと思ったことがきっかけでした。思ったとおり、今に至るまでの人生も、生活スタイルも仕事のしかたも千差万別です。これからも、登場していただきたい方はたくさんいますが、執筆してみたい方がいらっしゃれば、ぜひ帽子屋までご連絡ください!