ほんまかい●糸目 慈樹、西垣内 寿枝

2015/09/04

糸目 慈樹

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10代後半~20代前半をカナダのノバスコシア州で過ごす。帰国後、愛知県で英会話講師をする傍ら、メーカーで派遣社員として通訳及び翻訳の業務に従事し、2004年から大阪の特許事務所にて特許翻訳を始める。2011年5月にほんまかいを発足。現在インハウスの特許翻訳者として、大阪の別の特許事務所にて勤務する。
 

 

西垣内 寿枝
 
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特許翻訳者(日英・英日)。専門は化学。フェローアカデミーの通信講座修了後、1990年頃から特許翻訳の世界に入る。ふとしたきっかけで、ブルーグラスの父ビル・モンローのビデオ作品を訳すことになり、そのまま音楽にのめり込む。2007年頃に特許翻訳の世界に舞い戻り、フリーランスとなる。株式会社Office GrassWord代表。
 

今年で発足5年目の「翻訳者のためのマクロ勉強会(略して、ほんまかい)」を私(西垣内)とリーダーの糸目さんとで振り返ってみました。
 
ほんまかい前夜 糸目の孤独
 
「改善」とは無理や無駄を省きつつ、品質を維持または向上させて生産性を上げる活動。
いわゆる「根性」だけで生産性を上げるといった方法は、一時的には有効なこともあるが持続可能ではない。
これは、私(糸目)が翻訳を始めた某大手企業でお世話になったある技術者から教えられたことでした。
 
「無駄」を省くことで、「無理」は軽減される。また作業を工夫することで必要だった作業を不必要にすることができ、この不必要な作業(無駄)を省くことにより更に「無理」が軽減される。一度に劇的な変化は難しいが、僅かな変化でも積み重ねていくことにより、トータルで大きな変化にすることができる。たった一年派遣社員として働かせて頂いただけですが、この企業で学んだことは現在でも自分の考え方の基盤となっています。
 
特許事務所に転職し、特許翻訳者になった後もその考え方は変わらず、できる範囲で小さな改善策を講じていました。周りの翻訳者も、従来のやり方には満足しておらず何かいい方法はないかと模索していました。
 
幸い、私の前にはテキストエディタとマクロを駆使して翻訳をする先輩がおり、翻訳そのものだけでなく、マクロというもの、テキストエディタの良さ、原文を単語単位で一括置換して翻訳を進める方法など、多くのことを学ぶことができました。ただ、良い改善策を見つけても、こういった情報を共有する場は非常に限られていました。
 
「翻訳環境向上をテーマとした翻訳者による勉強会」という構想が頭に浮かび上がったのは、そういった背景からです。ただ、場所、集客など懸念材料が多く、自分ひとりでは到底できないだろうと思っていました。そんな中、当時私が参加していた大阪富井翻訳塾で授業開始前の1時間を有効に使ってもいいという許可を富井篤先生から頂き、2010年度は興味のある人だけでマクロ勉強会をしていました。これが、現在のほんまかいの前身です。
 
2011年3月、その最終回に参加した方からマクロだけの勉強会を続けて欲しいという声をもらい、同年5月に第1回を開催しました。この1回目のほんまかいで、色々大変だろうから運営を手伝うよと申し出てくれたのが、現在勉強会の人たちから社長と呼ばれている西垣内さんです。以降、ほんまかいは彼女が中心となって集客からお金の管理までもしてくれるようになり、現在に至っています。
 
ほんまかい発足 西垣内の悩み
「マクロ勉強会をしませんか?」
大阪ILCの同窓生から誘われて、その一回目に参加しました。私、西垣内はちょうど翻訳ソフトを使用した品質向上・効率化にも限界を感じており、マクロによる上書き翻訳に挑戦してみようと思いました。
 
集まったのはILCの同窓生3人と糸目さんの元同僚3人。全員特許翻訳者で、ひとりをのぞいて全員が文系、IT専門家ゼロ。糸目さんがtermfetcherマクロのデモをしてくれた後、ペアになって秀丸で簡単な一括置換マクロを書きました。
 
終了後の話し合いで勉強会を継続することになり、私は人集めで協力することにしました。
 
とは言ったものの、こんなニッチな勉強会に人が来るのだろうか...自信も見通しもないけれど、とりあえずILCの同窓生や勉強会仲間に声をかけていきました。当時ILCの特許翻訳講座では秀丸のgrep検索を使ったテキスト検索を教えており、秀丸の良さを体験していた人が多かったのは幸いでした。
 
2回目からは大阪天満橋にあるエル大阪で開催しています。使用料が安いというのが決め手です。私の作戦は、参加費を固定して経費が払えるだけの参加者を募るというものでした。使用料は部屋の予約をしてくれる別の仲間が立て替えて、当日精算の繰り返し。最初はカツカツでしたが、気がついたら余剰金が出るようになっていました。
 
そのお金の使い道をスタッフで相談した結果、これまでの参加者に還元するという案が浮上。いい先生によるいいセミナーも全部は聞きには行けないので、そういう先生を招く資金として活用しよう。それで、通常会のほかに特別会として外部から講師をお招きするという現在の運営スタイルとなりました。
 
勉強会で取り上げるテーマは、初期の「秀丸マクロを使う・書く」から発展して、通常会ではWordマクロ、AutoHotKey、Evernoteなどさまざまなツールについて学びあっています。また「翻訳環境向上」はツールだけでは為し得ないという考えから、特別会では特許(西村英人弁理士)、翻訳(富井篤氏、高橋聡氏)、辞書(松田浩一氏)、技術(小林晋也氏)、通常会では手帳術・スケジュール管理など、参加者の声を聞きながら自分たちが本当に学びたいことを選ぶようにしています。
 
秀丸の輪
偶然の産物ですが、ほんまかいは非IT系翻訳者が中心になってやっているツール勉強会です。それが継続できたのも、糸目さんのほかに、鈴木亮吉(通称なめこ)、AHK愛でおなじみの松本明彦さん(くまさん)という、秀丸マクロ、Wordマクロ、AHKに精通したインストラクターが発足時からいてくれたこと、特許業界のスーパーサブ、ほよちゃんがしっかりサポートしてくれたおかげです。
 
当初の心配をよそに、大勢の方が参加してくださり、心から感謝しています。来る人があってこそ、勉強会という入れ物に血が通います。鋭い質問、場をほぐすボケとツッコミ、ランチや懇親会でのおしゃべり。その積み重なりでだんだんと人間関係ができてきました。最近ではインストラクターから参加者への知識や情報の一方通行的な受け渡しにとどまらず、最初は参加するだけだった人たちも覚えたことや教わったことを教えあったり、簡単なデモをしてくれたり、さまざまな形で協力してくれています。
 
ほんまかいは2ヶ月に一度、開催しています。詳細はHP(http://translatorsmacro.jimdo.com/)をご覧ください。また、Facebookのグループ「ほんまかい本丸」でも情報交換を行っています。
 


 

コラムオーナー

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高橋 聡
(たかはし あきら)

 
CG 以前の特撮と帽子をこよなく愛する実務翻訳者。翻訳学校講師。学習塾講師と雑多翻訳の二足のわらじ生活を約10年、ローカライズ系翻訳会社の社内翻訳者生 活を約 8年経たのち、2007年にフリーランスに。現在はIT・テクニカル文書全般の翻訳を手がけつつ、翻訳学校や各種SNSの翻訳者コミュニティに出没。

■ブログ「禿頭帽子屋の独語妄言」
http://baldhatter.txt-nifty.com/trados/


 

MISSION STATEMENT

「意外と知られていないフリーランス翻訳者の素顔をさぐる」ために始まったこのシリーズ。そもそもは、私自身がいろいろな翻訳者さんの様子を伺ってみたいと思ったことがきっかけでした。思ったとおり、今に至るまでの人生も、生活スタイルも仕事のしかたも千差万別です。これからも、登場していただきたい方はたくさんいますが、執筆してみたい方がいらっしゃれば、ぜひ帽子屋までご連絡ください!