WildLight というツール (JTFセミナー補足)●齊藤 貴昭

2015/03/13

齊藤 貴昭


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ワードアドインマクロ「WildLight」開発者

WildLight Blog : https://wordwildlight.wordpress.com/
東京ほんま会:https://tokyohomma.wordpress.com/

 
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今年度最後の記事は、昨年と同様、私自身で書くことにしました。昨年12月18日に行ったJTFセミナーの報告記事が今号に掲載されていますが、誌面の関係からWildLightに関する説明を割愛しています。そこで、当コーナーにWildLight記事を掲載し、セミナー記事を補完する形にいたします。記事中に登場するファイルは、すべて WildLight Library (https://app.box.com/wildlight) からダウンロードできます。
 
Easy to Notice ツールとしてのWildLight
個人翻訳者がひとり完結で品質保証を行う上で一番効果的なチェック方法として提案している「Easy to Notice」。拙作のワードマクロ「WildLight」の開発動機は、チェック項目の設定に高い汎用性を持った「Easy to Notice」ツールが欲しかったためです。
 
WildLightの機能を簡単に言えば、事前に準備したテキスト形式の定義ファイル(辞書ファイル)から検索・置換条件を順に読み出すことによって、ワードの検索・置換処理をバッチ処理し、その結果に蛍光ペンを付けるという単純なもの。ただし、ワイルドカードとWildLightの特殊コマンドを利用する事で、チェックのみならず文書加工や置換翻訳など、翻訳周辺業務の自動化、簡略化にも使用できます。
 
チェックツールとして使う
一番簡単な使い方は、チェックすべきポイントをハイライトすることで、意識を集中する箇所を分かり易くするというアプローチです。例えば、自分の癖からくる間違い易い単語や、過去の案件で問題となった要注意用語/表現をずらずらと羅列した辞書ファイルを準備し、WildLightで処理する事で翻訳文書中の注意すべき箇所に蛍光ペンを付け、そこを重点的にチェックします。
 
チェック辞書を作成する上での考え方
1. 間違いを検出する辞書を作る
最初に目指すべきは「間違いを検出する」チェック辞書です。つまり、間違い箇所へ色付けがされ、判断することなく明確に間違いを認識できる方法です。例として、化学式に見られる下付処理の忘れを検出する辞書(WLDIC_ECHK_化学式チェック.txt)がこの方法に当たります。この辞書では、下付処理を忘れた「CO2」といった化学式に蛍光ペンが付きます。
 
2. 間違いを検出し易くする辞書を作る
ワイルドカードやWildLight特殊コマンドを駆使しても「間違いを検出する辞書」を実現できない場合は、Easy to Notice のアプローチを取ります。つまり「間違いを検出し易い」辞書作成をします。Easy to Notice は、人間の意識をチェックポイントへ集める(焦点を合わせる)ことで集中力と検出力を上げ、それを持続させることを目的にしています。また、チェック方法として、視覚や文字認識のみに頼らず、人間の持つ五感と色々な認識力を複合的に組合せてチェックがされるように辞書を作ります。
 
ポイント:
1)チェック項目を性質別に分ける。
まず、自分が行っているチェックがどのような知覚と認識能力を使ってチェックされているかを解析します。例えば、「文章を読み、理解する」ことと「数字を認識して照合する」というふたつの事は、使う思考プロセスが違うので同時実施すると抜けが発生し易いのです。したがって、分けて別々にチェックするというアプローチを取る必要があります。このように、チェック項目別に性質的分類をし、それに基づいてチェック辞書を分けるようにします。
 
2) 一度にチェックするポイント数は多くし過ぎない。
Easy to Noticeは、チェックポイントを目立たせる事で意識集中し、検出力を上げようとしているので、一度にチェックするポイント数が多過ぎると意味をなさなくなります。どれくらいの数が適切であるかは個人差があるため、実際にチェック作業を行って自分なりの適正チェックポイント数を探しましょう。
 
3) 色を効果的に使う。
複数の知覚と認識力を組み合わせるのが Easy to Notice の手法ですので、色付けの機能を有効に利用し、文字認識だけではなく、色認識や色パターン認識を併用するチェック辞書を作成します。
 
上記のポイントを反映している辞書が「WLDIC_CHK_数チェック.txt」です。この辞書ファイルは、数と英略語の転記ミスをチェックするために作成されました。この辞書は、視覚による数字/文字の認識に加え、色認識と色のパターン認識を使って間違いの検出力をあげることを特徴としています。文字が認識できる蛍光ペン色数には限りがあるため、0~9までの数値を5色に分けて色付けするようにしています。(これは辞書の書き方で自分の好みに変えられます)


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(図) 数チェック辞書適用例
 
例えば、2月とFebruaryには同じ色の蛍光ペンが付きます。それぞれの数字にはそれぞれの色が付くので、連続した文字列の場合、図のようなカラーパターンが形成されます。したがって、パターン認識でも判断することができます。この例ですと、電話番号の下4桁に転記ミスが発生していることが一目瞭然です。
 
その他、辞書作成のポイント
1) 100%を目指さない。自分特化にする。
この手のツールを使う上での注意事項は、100%を目指さないということです。妙な事を言うように聞こえるかもしれませんが、私は常にこの姿勢でツールと付き合っています。「100%できないから使えない」と考えるより、「30%は使える」と考えた方が、遥かに用途が広がり、結果的に自分の仕事の効率や精度を上げてくれるからです。
WildLight辞書も汎用性を考えると、あれこれとチェック項目を盛り込んでしまいたくなります。しかし、それではあまり重要でないものにまで目を通してチェックすると言うムダが生じてしまいます。辞書は、自分の間違い癖に特化した専用辞書という位置付けで考え、自分のミスを確実にチェックできるものを作る事が大切です。
 
2) チェックフローに従って、辞書内容を決める。
どのような順番で何をチェックするか?は、翻訳者の考えによって、まちまちです。そのフローによって、各チェック時のチェックする項目と深さが変わってきます。つまり、WildLight辞書に盛り込む内容も、フローによって変える必要があるということです。
 
最後に
WildLightは以下のURLにあるWildLight Blog を参考にしてください。
WildLight Blog : https://wordwildlight.wordpress.com/
また、WildLightセミナーは、東京ほんま会 (https://tokyohomma.wordpress.com/) にて不定期に開催されますので、興味のある方はご出席ください。

 

 

コラムオーナー

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齊藤 貴昭
(Terry Saito)

 
電子機器メーカーにて開発/製造から市場までの品質管理に長年従事。5年間の米国赴任から帰国後、社内通訳・翻訳者を6年間経験。2007年から翻訳コーディネータ兼翻訳者として従事。「翻訳者SNSコーディネータ」として業界活動に精を出す。ポタリングが趣味。甘いもの好き。TwitterやBlog「翻訳横丁の裏路地」にて翻訳に関する情報発信をしています。

■Twitter: terrysaito
■Blog: http://terrysaito.com




 

MISSION STATEMENT

「翻訳横丁の表通り」には色々な人々が往来するようになりました。このコーナーでは、翻訳者さん達に「翻訳横丁の表通り」に出店して頂き、自身が持つ翻訳への「こだわり」を記事にして頂きます。「想い」であったり「ツール」であったり、「翻訳方法」であったり「将来の夢」であったり、何が飛び出るかは執筆者の翻訳への「こだわり」次第。ちょっと立ち寄って、覗いていきませんか?