イベント報告

2016/07/08

2016年度第1回JTFスタイルガイドセミナー報告
TransQAの基礎

 

小林 卓

IT業界でSEとして10余年勤務。その間、各種のシステム構築を手がけ、官庁主催の技術標準化ワーキンググループにも参加。その後、翻訳業界に転身。会社勤務を経て独立。今に至る。
 

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2016年度第1回JTFスタイルガイドセミナー報告
日時●2016年5月16日(金)10:00~12:30
開催場所●剛堂会館
テーマ●TransQAの基礎
登壇者●小林 卓 Kobayashi Takashi 翻訳工房ベルテック代表/TransQA開発者
報告者●田嶌 奈々(株式会社 翻訳センター/JTF標準スタイルガイド検討委員)

 



日本語スタイルガイドと日本語の表記について学習したい方を対象とした4回の連続講座の第1回目は、「TransQA」の開発者である小林卓氏を講師として迎えた。「TransQA」は、スタイル違反や表記揺れの検出など、訳文の品質管理機能を豊富に取りそろえたQAツールである。「TransQA」の基本的な操作手順をじっくり学んで頂けるよう、受講者数を制限したハンズオン形式での開催となった。
 
セミナーの流れは以下のとおり。
導入編:QAチェックツール、TransQAの概要説明(20分)
基礎編:サンプルファイルを使った簡単なチェック(60分)
応用編:実業務を想定した定義のカスタマイズ(40分)
質疑応答(30分)

TransQAとは

もともとはIT分野の英日翻訳をターゲットに、IT分野特有の複雑な決めごとに対応できるよう開発されたツールであるが、IT以外の分野にも応用が可能である。通常のチェックツールに備わっているスタイル違反や用語準拠チェック機能の他に、表記揺れを検出する機能を有している。2016年5月現在の最新バージョンは0.2.5.7である。

TransQAの3つの特長

1) 日本語の表記揺れのチェックに強い
2) 訳文のみのチェックにも使える
3) プロジェクトごとにカスタマイズできる

参考1:TransQAとXbench(2.9)の比較表

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比較表からも分かるとおり、このツールではチェックの基準となるスタイルや用語集を一から作成する必要がない。また、日本語の用法チェックを主たる機能とする市販のツールと比べて、表記の揺れを細かく指摘してくれるのがこのツールの強みだ。

参考2:TransQAの使い方

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具体的な操作方法は、ツールを実際に触って確かめて頂くしかないが、クライアントの仕様に合わせて細かくカスタマイズできるのが便利だ。手元にスタイルガイドや用語集がない場合でも、訳文があれば、それをベースにスタイルガイドと用語集を簡単に作成してくれる点も魅力的である。

 参考3:TransQAツールの画面

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ダウンロード:http://www7b.biglobe.ne.jp/~taku3/toolindex.html

TransQAの使い方いろいろ

基本的な使い方は上述のとおりだが、他にも活用の幅は広い。
① 訳文の表記揺れをチェックする
② 複数の翻訳者から納品された訳文の表記揺れをチェックする ⇒ 事後的に表記揺れを統一する
(複数のファイルを読み込むことができる)
③ 翻訳支援ツールのファイルをチェックする
(SDL Trados Studioのsdlxliffファイルにも対応している)

TransQAを使う際の注意点

様々な機能を持つ優秀なツールであるといっても、ツールが受け持てる範囲は限られている。ツールを使ったからといって品質が飛躍的に向上するわけではない点にご注意頂きたい。なお、WORD文書の処理は安定性に欠ける部分があるが、バージョン0.2.5.8で改修される予定とのこと。
 

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最後に

今回のセミナーは参加者を少人数に絞ったハンズオン形式での開催となった。事前にツールをインストールした上でノートパソコンを参加者が持参したのだが、個々の環境が異なることから、念のためツールがきちんと起動するかの確認を行う時間が設けられた。パソコンに苦手意識を持っている人の多くは、ツールの操作以前にインストールや起動の段階で諦めてしまうことがあると耳にするので、このようなハンズオン形式のセミナーの意義は大きい。
 
パソコンが苦手な人にとってはややハードルの高いツールかもしれないが、逆に少し操作に慣れると、プロジェクト単位でスタイルや用語を管理できたり、細かく仕様をカスタマイズできたり、長期的に見た場合に導入する価値の高いツールである。さすが、翻訳者としての10年以上の経験が生かされている、というのが感想だ。IT分野の翻訳者にとってはsdlxliffファイルに対応しているのも嬉しい。今回のセミナーでデモをして頂く時間はなかったが、仮想化の機能やファイル変換ツールとしての機能もあるという。これほど多くの機能を備えたツールであれば有償であるのが一般的だが、開発者である講師いわく、当面は有償にするつもりはない(将来的に有償になったとしても、廉価にする予定)、とのこと。また、使い方が分からない場合にはオンラインヘルプが用意されているので、今回のセミナーに参加できなかった方々も、是非一度は試して頂きたい。