イベント報告

2017/07/14

TAUS Executive Forum Tokyo 2017
 



TAUS Executive Forum Tokyo 2017
日時●2017年4月25日(火)・26日(水)
開催場所●東京・オラクル青山センター
主催●Translation Automation User Society(TAUS)、日本オラクル株式会社
報告者●目次 由美子(XTM International)
※ 本稿は、アジア太平洋機械翻訳協会が発行する『AAMTジャーナル』にも同時掲載いただいています。

 


 

世界の翻訳業界で機械翻訳などイノベーションを推進するシンクタンクであり、アムステルダムを拠点とするTranslation Automation User Society(TAUS)のExecutive Forumが本年も東京で開催された。Executive Forumという耳慣れない言葉から、どのような会合となるのか想像が難しかった。会場はスクール形式にレイアウトされた広い会議室であり、多数の講演者が入れ替わり立ち替わりして、翻訳に関する最新のテクノロジーや取り組みについての講演が繰り広げられた。TAUS創始者でありDirectorであるJaap van der Meer氏自身が司会・進行を務めたこの国際会議には、海外からの講演者や参加者も含め50名以上が参加した。2日間で20を越える講演はいずれも魅力に溢れた内容であったが、いくつかの講演についてのみ簡易に報告させていただく。

TAUSはDQF(Dynamic Quality Framework)ツールを提供している。翻訳品質を計測するためのこのツールは、翻訳支援ツールなどと連携して使用する。TAUS Representativeである西野竜太郎氏によりSDL社のTrados Studioでの利用方法と、筆者自身によるXTMでの利用方法がそれぞれ紹介された。各ベンダーのツールでTAUS DQFツールを利用して翻訳品質の評価を実施すると、その評価データがTAUSのQuality Dashboardに送られ、結果が棒グラフなどに図示される。表示される結果は、対象翻訳者の生産性も確認できるだけではなく、業界標準との比較も実行される。また、提示される結果は、最適な機械翻訳エンジンを選択するのに役立てることもできる。

Microsoft社のChris Wendt氏によりMicrosoft Translatorでの音声翻訳も実演された。大画面モニターにはPowerPointのスライドが映し出され、その下部にはWendt氏が英語で語る内容が随時日本語に翻訳されて表示された。持参のモバイル機器に専用アプリをインストールし、手元の画面で音声翻訳を確認する人もあった。Wendt氏は音声翻訳はまだ初期段階にあるとも指摘されていたが、その処理の迅速性に驚く参加者もあった。

Executive Forumの2日目は機械翻訳のトピックが多く取り上げられた。SYSTRAN社のSatoshi Enoue氏はAIとの対話を実演された。50年にわたって機械翻訳に取り組んできた同社の最新状況も紹介された。NMT(Neural Machin Translation、ニューラル機械翻訳)には高速に演算を処理するGPU(Graphics Processing Unit、グラフィックス プロセッシング ユニット)が必須と言われているが、CPU(Central Processing Unit、中央処理ユニット)で充分と言われたのが印象的だった。

Google社のMacduff Hughes氏も昨年末に公開されたNMTをトピックとし、フレーズベースの機械翻訳との比較や、今後の課題も紹介された。コーパス(対訳データ)については分量の多さよりも優良な品質の重要性を示唆されていた。翻訳品質については「流暢さ」と「正確さ」という大きな指標についても言及があった。

デル社の森山崇範氏の講演では、人手翻訳やポストエディットと比較して具体的な数値も含め、機械翻訳への取り組みが紹介された。テクニカルサポートという分野において、特定の言語については翻訳品質の是非よりも、情報を公開すること自体が求められると言われたのが印象的だった。「Best MT」であろうともMTには変わりなく、取り組むべき課題があるとも指摘された。

PIJIN社の高岡謙二氏は「QR Translator」を、八楽社の坂西優氏は「YarakuZen」を、過去のExecutive Forumでも紹介された各社システムにおけるテクノロジーの進化が紹介された。
最新のテクノロジーや取り組みが紹介されたいずれの講演においても、今後の課題が言及され、さらなる発展を期待させられるイベントであった。翻訳業界における飽くなき探究心が表れていたといっても過言ではない。