イベント報告

2017/07/14

第8回 産業日本語研究会・シンポジウム報告
 



第8回 産業日本語研究会・シンポジウム報告
日時●2017年3月8日(水)13:00 ~ 18:00
開催場所●東京・丸ビルホール(丸の内ビルディング7階)
主催●高度言語情報融合フォーラム(ALAGIN)、日本特許情報機構(Japio)
報告者●目次 由美子(LOGOStar)
※ 本稿は、アジア太平洋機械翻訳協会が発行する『AAMTジャーナル』にも同時掲載いただいています。

 


 

今年で第8回目となる「産業日本語研究会・シンポジウム」が開催された。実に多方面から多くの登壇者を迎え、豊富な内容の充実した講演が展開された。本稿では、当日の様子を簡略して報告する。
なお、「産業日本語」とは、情報発信力や知的生産性の飛躍への貢献を通じ、日本の産業界全体の国際協力の強化に資する日本語と定義されており、このシンポジウムの浸透を図ることも本シンポジウムの開催目的として謳われている。

第一部 オープニング
(1)開会挨拶:

長尾 眞 (産業日本語研究会 世話人会 顧問/公益財団法人 国際高等研究所 所長/京都大学 名誉教授)

産業日本語研究会を発足させる機動力となった横井俊夫先生を偲びつつ、関係者に対する今後へ向けての奨励があった。横井先生が尽力された「日本人のための日本語マニュアル」の5つのテーマ(試みる日本語、表す日本語、伝える日本語、訳せる日本語、機械が訳せる日本語)も紹介された。

(2)基調講演:

「人工知能が拓く多言語ビジネスの世界」
井佐原 均 (産業日本語研究会 世話人会 代表/豊橋技術科学大学 情報メディア基盤センター長・教授)
田丸 健三郎 (日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 ナショナル テクノロジー オフィサー)


井佐原氏からは、機械翻訳ならびに多言語で情報を発信するための技術向上の必要性が指摘された。

田丸氏はテキストのみではなく音声翻訳にも言及され、翻訳におけるコスト・スピード・品質の需要を指摘された上で、パフォーマンスや拡張性を実現するためのコーパス蓄積やチューニングの重要性が紹介された

第二部 伝わる文書の作成に向けて
(3)招待講演:

「日本人(ビジネスマン)のための日本語(ビジネス文章)マニュアル(暫定第1版)」の紹介
佐野 洋
(東京外国語大学 教授)

横井先生が着手されたマニュアルの紹介、さらにその背景にある日本語の歴史や日本語マニュアルの必要性、さらに日本語というツールおよび目的について指摘があった。

(4) 招待講演:

「制限言語とオーサリング支援システム:機械翻訳を活用した文書の多言語展開に向けて」
宮田 玲
(東京大学大学院 教育学研究科/日本学術振興会 特別研究員)

読みやすく、機械翻訳しやすい日本語を実現するためのシステムが紹介された。ツールが検出するルール違反や実施すべき対応など具体的なデモも含め、今後の課題と展望も紹介された。

第三部 ポスターセッション
(5)ポスター概要紹介

「ライティング分科会活動報告」
猪野 真理枝
(東京外国語大学オープンアカデミー講師/翻訳家、語学教材制作家/産業日本語研究会 ライティング分科会 委員)

一般的なビジネス文書における日本語の書き方の検討とその結果の普及を目指す取り組みが紹介された。

「文書作成支援分科会活動報告」
橋田 浩一
(東京大学 教授/産業日本語研究会 文書作成支援分科会 主査)

AIでは進められない業務改革を克服するための文書の作成方法について指摘があった。

「特許文書分科会活動報告」
谷川 英和 
(IRD国際特許事務所 所長・弁理士/産業日本語研究会 特許文書分科会 主査)

特許文書の品質特性について紹介された。

「多言語高精度自動翻訳システムの実用化」
隅田 英一郎
(国立研究開発法人 情報通信研究機構 先進的音声翻訳研究開発推進センター副研究開発推進センター長/先進的翻訳技術研究室 室長)

「みんなの自動翻訳@Textra」の活用ポイントが紹介された。

「Japio世界特許情報全文検索サービスのご紹介」
髙橋 幸生
(一般財団法人 日本特許情報機構 営業推進部 部長)

日本語で整備された世界の特許公報データベースについて紹介された。串刺し検索も可能とのこと。

(6)ポスター発表

第三部のセッション内容は、同会場のホワイエにてポスター発表も実施され、いずれのデスクでも熱心な参加者が多く見られた。

第四部 文書データの効果的な利用に向けて
(7)招待講演:

「診療データの産業利用と課題 -千年カルテプロジェクト-」
吉原 博幸
(京都大学 医学研究科 EHR共同研究講座(ディレクター、京都大学名誉教授)/宮崎大学 医学部附属病院 EHR利用推進センター(特別教授、宮崎大学名誉教授))

電子カルテの閲覧方法や参照目的などが紹介された。データ出力の可否、データ構造など、電子カルテベンダーによる相違が指摘され、統一の重要性が指摘された。

(8)招待講演:

「文書管理システムとナレッジマネジメント」
小林 潔
(株式会社富士通総研 第一コンサルティング本部シニアマネジングコンサルタント)
山下 敦 (富士通株式会社 ビジネスソリューション本部 ソーシャルネットソリューション事業部 ドキュメントソリューション部 部長)


申請・承認・廃棄といったワークフローも含め、多言語ドキュメントを管理するためのシステムが紹介された。日本企業の運用に即した柔軟性の需要、検索操作の簡易性など細かな指摘もあり、運用ルールの重要性が強調された。

(9)招待講演:

「企業における文書管理と文書作成の課題」
國分 裕之
(全日本空輸株式会社 取締役執行役員 人財戦略室長/ANA人財大学長)

膨大な社内文書やサイトで溢れる情報を管理するための取り組みが紹介された。現地担当者へ確実に情報を到達させるための英語での情報発信、日本語のコミュニケーションの基礎となる文章力を養う重要性なども指摘された。


 

(10)パネル討論:

<パネリスト>
吉原 博幸 (京都大学 医学研究科EHR共同研究講座(ディレクター、京都大学名誉教授)/宮崎大学 医学部附属病院 EHR利用推進センター(特別教授、宮崎大学名誉教授))
小林 潔 (株式会社富士通総研 第一コンサルティング本部 シニアマネジングコンサルタント)
山下 敦 (富士通株式会社 ビジネスソリューション本部 ソーシャルネットソリューション事業部 ドキュメントソリューション部 部長)
國分 裕之 (全日本空輸株式会社 取締役執行役員 人財戦略室長/ANA人財大学長)


パネルディスカッションでは、文書管理という観点では情報収集・分析・整理に作業全体の約7割が費やされること、人工知能やその他ソリューションとの組み合わせの必要性などが指摘された。
制御言語も含めた自然言語処理の技術や、第三次AIへの期待も紹介された。
質疑応答においても、文章の意味を理解しないロボットは東大に受からないという最近の話題から、意味構造を意識することの重要性も述べられた。


 

(11)閉会挨拶:

井佐原 均 (産業日本語研究会 世話人会 代表/豊橋技術科学大学 情報メディア基盤センター長・教授)

産業日本語について、より実社会に語りかけるように丸の内に所在する会場にて第8回目のシンポジウムが開催されたことが紹介された。


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