2-1 新興国市場への製品・サービスのローカライズについて

2014/01/10

竹尾 晋

ライオンブリッジ ジャパン株式会社 ビジネス ユニット マネージャ

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藤原 正道

ライオンブリッジ ジャパン株式会社 ランゲージ リード
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今川 佳子

ライオンブリッジ ジャパン株式会社 ランゲージ グループ マネージャ

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報告者●新田順也(エヌ・アイ・ティー株式会社、特許翻訳者、翻訳支援ソフト開発者)

 



登壇者の3名は、翻訳会社のコーディネータというよりは、多国籍プロジェクトのプロジェクトリーダーのように思えた。新興国の個別の事情がある中で、数十の言語のローカライズを同時に進めるのである。プロジェクトにおけるリスク管理ノウハウが非常に興味深かった。
 
新興国(東南アジア諸国、インド、アフリカ諸国)の翻訳者と仕事をする場合、メジャーな言語での仕事と前提条件が大きく異なる。この「違い」によるリスクを最小限にするために取り組んでいる「クライアントにリスクを説明し協働してローカライズをすること」や「翻訳者を支援し育てること」の具体的な事例とノウハウが紹介された。
 
発表後、活発な質疑応答が終了時刻間際まで続いた。質問の回答においても、クライアントとともに翻訳を進める姿勢がうかがえた。さらに、業務のストレスに対する社内スタッフの心のケアも重視していることが紹介された。現場のストレスの大きさは相当なものだろう。最前線で働く3名の登壇者の生の声がふんだんに盛り込まれた、ヒントがつまったセッションであった。

新興国市場でのローカライズの現状

新興国市場でのローカライズの需要が急速に増えている。同時に希少言語(翻訳者が少ない言語)の翻訳需要が伸びている。新興国として定義した3つの地域の特徴は以下の通り。

  1. 東南アジア
    それぞれの国独自の言語を有しており、複数の国・地域を網羅できる言語が少ない。
    例:インドネシア語、ミャンマー語、マレー語、ビルマ語、タイ語など

  2. インド 
    国内で1000以上の言語があるといわれている。主要な言語はヒンディー語。

  3. アフリカ 
    使用されている言語は、2000とも3000ともいわれている。例えば、カメルーンには230の言語があるとされる。フランス語やアラビア語の場合、1つの言語でも複数の国・地域を網羅できる。

新興国でのローカライズの注意点

メジャーな言語でのローカライズ手法が使えないことが多い。想定外の問題に対して適切な処置を講じないと、製品・サービスの満足度が低下し、ブランドイメージも悪くなることがあり注意が必要。

  1.  現地翻訳者の作業環境の理解が必要

  • 政治情勢が不安定な地域では、翻訳者と連絡が取りづらくなることがある
  • 電力供給が不安定な地域では、パソコン利用に制限がある
  • パソコンを複数人で共有する場合、作業速度が遅くなる
  • インターネットスピードが一般に遅いため、大きなファイルの共有が困難になる
  1.  品質管理での困難な点

  • 品質要件が事前に定義されていない場合、翻訳者に責任を問うことができない
  • 言語によっては、QAツールやスペルチェックツールが使えない
  • 翻訳者の確保が困難な場合が多い
  • 標準仕様のパソコンでは表示できないフォントがある(翻訳者、クライアントともに)
  1.  コミュニケーションとスケジューリング

  • 英語でのコミュニケーションが前提となり、必要に応じてクライアントとともに翻訳者と連絡をとる必要がある。
  • レビュー方法も、国や分野に応じて設定する。医薬翻訳の場合、医療関連の法律の専門家を必要とすることもある。
  • 日本人とは違う商習慣(不可能な納期に対して「できます」と回答、納期遅れに対する「開き直り」など)を理解し、余裕をもったスケジューリングが必要

リスク管理方法 

  1. クライアント向け

翻訳者の確保や納期管理の難しさなど、様々なリスクを総合的に数値化したデータベースを社内で共有している。クライアントには、このデータベースを参照してリスクを伝え、翻訳の方針、優先度、日程などを協議する。新興国へのローカライズ経験のないクライアントには翻訳言語の翻訳市場動向やリスクなどを具体的にコンサルティングする場合もある。

  1. 翻訳者向け 
  • 翻訳環境(フォント、エンコーディングシステムなど)情報を提供して支援をする
  • 品質向上意識の啓蒙のため、プロジェクトのキックオフミーティングでの説明、日々のフィードバックを継続的に行ったり、インストラクションを提供するなどして個別に教育する
  • 翻訳者と密に連絡をとり、納期管理をする
  1. 翻訳市場の活性化
  • 現地の翻訳会社のオフィスを実際に訪問し、信頼できる会社かどうか見極める
  • 政府言語統制機関や大学と連携してIT新用語の統一について方針を定める

 
具体的な体験談が散りばめられた、非常に興味深いセッションであった。

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