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1-1 医療・医学研究での翻訳の役割と可能性~アカデミアが必要とするプロのサービス~

2015/01/16

パネリスト:

後藤 励 Goto Rei

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京都大学医学部卒業、京都大学経済学研究科博士課程修了、甲南大学経済学部講師・准教授を経て、2012 年より京都大学白眉センター・経済学研究科特定准教授。医療と経済に関する鋭い評価には定評がある。

田村 寛 Tamura Hiroshi

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京都大学医学部卒業、京都大学大学院医学研究科外科系専攻、ハーバード大学公衆衛生学博士、MBA取得。眼科医でありながら、医療社会学、病院管理、国際医療政策などの分野でも活躍中。

モデレーター:
早川 威士 Hayakawa Takeshi
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京都大学文学部卒業、2006 年株式会社アスカコーポレーションに入社。医療機関、大学関係の翻訳、英文校正などに関する業務のプロジェクトマネージャーとして日夜奔走。

報告者:藤村希早

 


医療・医学研究での翻訳の役割と可能性

日本の臨床分野の研究論文数は世界で25位と停滞している。研究者が最新の統計テクニックの習得や研究そのものに十分な時間を使えないこと、研究デザインの稚拙さ、GCP(Good Clinical Practice)への準拠が要求されること、研究者の英語力不足などが原因と考えられる。投稿後のやりとりを最後までフォローするなど、翻訳の包括的なサポートは論文のアクセプトにつながる。翻訳は、臨床分野の国際競争力向上を支援する役割を担っているのではないか。

翻訳者には、統計学、最新の研究デザイン、GCPなどについて理解を深めることを期待したい。翻訳における機械的要素をITで自動化し、上記分野の学習時間を確保して欲しい。
これからの医療翻訳の可能性として、インターネット上の集合知を活用した「協業」を目指すべきではないか。

医療経済学の事例 ~医学研究での翻訳の役割と可能性~

医療経済学は、患者、一般人、支払者(保険会社や政府)、医療機関の考えや行動を、ミクロ・マクロ的な視点、産業組織論の視点などから研究する学問である。

今後、医療の財源確保が厳しくなると、医療の効果が費用に見合っているか(費用効果研究)を考えるだけでなく、社会として誰の健康改善を優先するべきかを実証的に議論する必要が生じる。後藤氏は、実際の日本人の価値観を調査し、「他人の視線」の有無で価値判断に変化があるかどうかの研究を行った。

医療経済学の研究は、医療に対するイデオロギーに基づいている。研究論文は、医学系と経済系の雑誌に論文を投稿されるが、専門用語を始め様々な違いがある。翻訳者はこうした背景を理解する必要がある。

日本でも今後、公的医療制度の適用決定時に薬や治療の費用効果分析が必須になる可能性があり、医療経済学は成長が期待される分野である。

医療翻訳に求める品質・コスト・ニーズ

論文がアクセプトされることが最も重要であり、「伝わる」英語が求められている。ノンネイティブの査読者も増えているため、ネイティブらしい英語にこだわる必要はない。

翻訳というサービスを買っているという意識であり、コスト削減よりは、アクセプト確約サービス、Certificate of Proofreadingの発行、大学や研究費ごとの経費申請ルールに精通するなど、研究者の論文投稿を総合的にサポートするサービスを求めている。