JTFスタイルガイドとCCライセンスの素敵な関係

2014/05/09

JTFスタイルガイドとCCライセンスの

素敵な関係


 

標準スタイルガイド検討委員会
委員長 田中千鶴香
 

2014年2月、JTF標準スタイルガイド検討委員会は『JTF日本語標準スタイルガイド』(以下JTFスタイルガイド)にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を設定しました。これにより利用者は、同ライセンスの条件に従う限り、JTFスタイルガイドを自由に共有、配布、改変できるようになりました。
本記事では、著作権に対する考え方として比較的新しいアプローチであるCCライセンスがどのようなものであるかを解説します。また、CCライセンスが設定されたJTFスタイルガイドの利用方法を具体的に説明します。

 
201405011745_6-526x175.png
 
 
 

Creative Commonsとは

クリエイティブ・コモンズとは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を提唱する国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称です。インターネット時代にふさわしい著作権のあり方を考え、提案することを活動の目的としています。
クリエイティブ・コモンズが提唱するCCライセンスは、著作物を共有するための有効な手段として世界中で広く活用されています。日本でも採用の動きが徐々に広まっており、実はあの初音ミクにもCCライセンスが設定されています。
クリエイティブ・コモンズの活動はどのように始まったのでしょうか。また、従来の著作権法に基づく考え方とどう違うのでしょうか。
 201405011745_3-200x0.jpg
Hatsune Miku
Crypton Future Media inc.

 

commonsはもともと「共有地、共有財産」

クリエイティブ・コモンズは2001年、当時スタンフォード大学教授のローレンス・レッシグ氏を中心とする専門家のグループによって立ち上げられました。クリエイティブ・コモンズは米国発の構想ですが、commonsの起源は産業革命以前の英国に遡ります。
かつての英国には牧草地の共有管理を提唱する活動があり、その際に共有地とされた牧草地がcommons(共有地)と呼ばれました。これに似た制度は日本の「入会(いりあい)」など、世界各地で古くから行われています。
こうした資源共有の試みは、いざ実践してみると様々な問題を生じました。関係者間の利害をうまく調整できず、結果として資源の乱獲や枯渇を招くこともありました。生態学者ギャレット・ハーディン(1915~2003年)はこの状況を「コモンズの悲劇」(1968年)と呼び、現在では経済学の原則のひとつとなっています。
 

 

著作物を扱うためのアプローチとしてのcommons

ところが近年このcommonsの考え方に再び注目が集まるようになります。著作物を取り扱うための新しいアプローチに「コモンズ」の考え方が取り入れられたからです。
基本理念は、知的財産権に基づき著作物に対して行使できる権利を作者自らが部分的に制限し、制限の対象としない部分を「知的共有地=コモンズ」に置くというものです。そうすれば、利用者は作品にアクセスしやすくなり、社会全体においてクリエイティブな活動がいっそう盛んになることが期待されます。
「クリエイティブな活動を促進するコモンズ」を普及させるために発足したのがクリエイティブ・コモンズであり、その理念を具体化するために考案されたのがCCライセンスです。

 
 

PublicもしくはPrivate

著作権法に基づく環境では、通常、作者が自身の作品の流通方法を決定するとき、private(フル・コピーライト=すべての権利を保持する)かpublic(パブリック・ドメイン=権利を保持しない)のどちらか一方しか選択できません。
 
201405011745_7-600x0.png
 
パブリック・ドメインを選べば、流通がスムーズになり作品は広く利用されますが、作者は作品に対する著作権の行使を放棄することになります。フル・コピーライトを選べば、著作権の行使を放棄せずにすみますが、作品がスムーズに流通しなくなる可能性があります。
こうした二元的な状況は、実は、作者にとっても作品の利用者にとっても非常に不自由です。またインターネットの普及によって、著作物の共有手段が急速に発達しました。「手間をかけずに作品を利用したい」という利用者と「利用者に今すぐ作品を提供したい」という作者の両方の要望を満たす有効な手段が模索され、その結果考案されたのがCCライセンスなのです。
 

 

CCライセンスはコピーライトとパブリックの中間

CCライセンスが設定された作品は、作者の知的財産権が部分的に制限され、制限の対象とならない部分が「知的共有地=コモンズ」に置かれた状態になります。
 
201405011745_8-600x0.png
 

CCライセンスが設定された著作物は、著作権でガチガチに保護されて他者が利用しにくい状態ではありませんし、作者が一切の権利を放棄しているという状態でもありません。フル・コピーライトとパブリック・ドメインの「中間」にあたる、”Some rights reserved.”と言われる状態になります。
 
 

CCライセンスの種類

CCライセンスには、全部で6種類のライセンスがあります。作者は「どのような条件で自分の作品を流通させたいか」を考え、希望する条件に合わせてライセンスの種類を決定します。利用者は、設定されているCCライセンスの条件を満たす方法であれば、その作品を自由に利用できます。
 

6種類のCCライセンス

  • 表示
  • 表示—継承
  • 表示—改変禁止
  • 表示—非営利
  • 表示—非営利—継承
  • 表示—非営利—改変禁止
     
201405011745_5.gif 表示
201405011745_6.gif 非営利
201405011745_7.gif 改変禁止
201405011745_8.gif 継承

http://creativecommons.jp/licenses/


このうち最上段の「表示」がパブリックドメインに最も近いライセンスで、最下段の「表示—非営利—改変禁止」がコピーライトに最も近いライセンスです。
JTFスタイルガイドに設定されたライセンスは、上から2番目の「表示-継承」です。それぞれのCCライセンスについては、以下のページをご覧ください。
クリエイティブ・コモンズのサイト
http://creativecommons.jp/licenses/
 

 

CCライセンスのメリットと活用

CCライセンスが設定されていると、利用者にとっては、著作権の範囲が明確になり、「許容されていること」と「許容されていないこと」がはっきりします。たとえば、ネットで見つけた画像をプレゼンテーションで使いたいときに、画像をそのままコピーしてもよいか、画像の色を変えてもよいか、営利目的で使ってもよいか、などがすぐにわかるようになります。著作者にとっては、「このような方法で自分の作品を使ってほしい」という意思をわかりやすく伝えられるようになります。
CCライセンスの活用事例は多岐にわたります。アート作品、書籍、音楽、電子データなどに採用され、教育機関や企業での導入も進んでいます。具体的な事例については以下のページをご覧ください。
クリエイティブ・コモンズの活用事例のページ
http://creativecommons.jp/features/
国立国会図書館カレントアウェアネス・ポータル
http://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/172
 

 

 

JTFスタイルガイドとCCライセンス

 

JTFスタイルガイドにCCライセンス「表示-継承」を設定

JTFスタイルガイドに設定したCCライセンスは「表示-継承」です。このライセンスは、後述する2つの条件に従うかぎり、利用者がJTFスタイルガイドを自由に共有し、翻案できることを約束します。
CCライセンス「表示-継承」については、コモンズ証とリーガルコードをご覧ください。
「表示-継承」コモンズ証:http://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/deed.ja
「表示-継承」リーガルコード:http://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/legalcode


 
クリエイティブ・コモンズ
ライセンス
「表示 - 継承4.0 国際」
201405011745_9-223x77.png

 
利用者がJTFスタイルガイドを使ってできることをまとめると、次のようになります。

利用方法
  • JTFスタイルガイドの全部または一部の自由な使用、複製、改変、再配布
  • JTFスタイルガイドの全部または一部を利用した二次的著作物の作成、配布

このとき従わなければならない条件は次の2つです。

条件
  • JTFスタイルガイドが日本翻訳連盟に帰属することを二次著作物に表示する
  • JTFスタイルガイドと同じCCライセンスを二次著作物に設定する
     
201405011745_10-673x394.png


この条件を満たす方法であれば、利用者はJTFから許諾を得ることなくJTFスタイルガイドを自由に利用できます。たとえば、JTFスタイルガイドをベースにした社内用スタイルガイドを作成するなど、必要に応じて、JTFスタイルガイドを加工した二次著作物を作ることも可能です。このとき、利用の目的が営利目的であってもかまいません。
 

 

CCライセンスに基づく利用

CCライセンスのに基づいてJTFスタイルガイドを利用し、二次著作物を作る場合は、CCライセンス「表示-継承」の条件に従って以下を行ってください。
 
  • 帰属の表示
「帰属情報」(いわゆるクレジット)を表示してください。具体的な表示方法については、JTFスタイルガイド(3ページ)に表示例を載せています。基本的には利用者自身が、採用するメディア(電子媒体、Webサイト、印刷物など)に適した表示方法を決定できます。
 
  • 同一ライセンスの設定
CCライセンス「表示-継承」を設定してください。CCライセンスを設定するのは簡単です。ライセンスのアイコン、URL、リンクなどを作品に表示するだけです。どこかに登録したり、署名したりする必要はありません。クリエイティブ・コモンズがCCライセンスのついた作品を追跡して記録することもありません。詳しくは以下をご覧ください。
クリエイティブ・コモンズ・ジャパンFAQページhttp://creativecommons.jp/faq/

 
 

CCライセンスに基づかない利用も可能

CCライセンスが付いているからといって、JTFスタイルガイドのあらゆる場面での利用形態が「CCライセンスに基づく利用」に限定されるわけではありません。CCライセンスの条件は、作品の利用目的を制限するものにすぎません。つまり、CCライセンスが許可しない方法でも、JTFスタイルガイドを利用できます。
CCライセンスの条件を満たさない方法での利用をご希望の場合は、日本翻訳連盟にご連絡ください。例えば、帰属を表示しないでの利用や同一のCCライセンスを設定しない利用も、場合によっては可能です。個別にご相談に応じますので気軽にご相談ください。
問い合わせ先:info@jtf.jp(標準スタイルガイド検討委員会)
 
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
 
日本翻訳連盟では、自由に利用できる日本語スタイルガイドとして「JTF日本語標準スタイルガイド」を作成し、CCライセンスを設定して公開しています。また、CCライセンスは設定していませんが、非日本語ネイティブ向けの英語版のJTFスタイルガイド「JTF Style Guide for Translators Working into Japanese」とJTFスタイルガイドに準拠したチェックツールも公開しています。
これらのスタイルガイドやツールを多くの場面で利用していただきたいと願っています。利用にあたって不明な点がありましたら、ぜひお問い合わせください。


 【参考ページ】
 
 

バックナンバー

201605061523_1.png
#283  2016年5/6月号

201605061449_1.png
#282  2016年3/4月号

201603030932_1.png
#281  2016年1/2月号

201601140830_1.png
#280  2015年11/12月号

201511051316_2.png
#279  2015年9/10月号

201507021847_1.jpg
#278  2015年7/8月号

201507020747_1.png
#277  2015年5/6月号

201503120958_1.jpg
#276  2015年3/4月号

WS000062.JPG
#275  2015年1/2月号

WS000530.JPG
#274  2014年11/12月号
 
201409120836_1.jpg
#273  2014年9/10月号

201409120843_1.jpg
#272  2014年7/8月号

271-cover.JPG
#271  2014年5/6月号
 
WS000208.JPG
#270  2014年3/4月号

201312271110_1_200x282.jpg
#269  2014年1/2月号

201401100915_1.jpg
#268  2013年11/12月号

201311081003_1.png
#267  2013年9/10月号

201308070724_1-250x355-300x426.png
#266  2013年7/8月号

201308070742_1.png
#265  2013年5/6月号

201308070742_2.png
#264  2013年3/4月号

201308070742_3.png
#263  2013年1/2月号

201308070742_4.png
#262  2012年11/12月号

201308070742_5.png
#261  2012年9/10月号

201308070742_6.png
#260  2012年7/8月号

201308080355_1.png
#259  2012年5/6月号