マインドフル、フルマラソン、充実フリーランス●松丸さとみ

2013/03/08

松丸さとみ(まつまるさとみ)


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英日・日英翻訳者。一部上場企業で就業後、フリーランスにてナレーション、司会業、ミュージックストアDJなどを約4年間経験。その後語学留学生としてロンドン在住時に、日本のレコード会社勤務の友人にアルバムの対訳を依頼されたのが、初の翻訳のお仕事。帰国後、編集社員として就職した会社でロンドン駐在となり、そこでの編集/翻訳の仕事を経て帰国、フリーランスの道へ。広報・マーケティング的な素材を主に扱うが、最近は書籍に軸足を置くべく奮闘中。
Twitterアカウントは、@sugarbeat_jp。

 

こんにちは!美味しいもの仲間のマーナー摩美子さんからバトンを頂きました松丸さとみです。よろしくお願いいたします。
 
私 は2002年頃からフリーランスで翻訳・通訳をしていたのですが、その頃はツイッターやFacebookなどのSNSもなく、同業者の知り合いもあまりで きずに一人孤独に翻訳をする毎日。一人暮らしの在宅翻訳作業では誰とも話す機会もないため、気づくと「あれ、今日も誰ともしゃべらなかった…」ということ が多々ありました。そんな孤独感に苛まれていた頃、翻訳や通訳でお世話になっていたエージェントさんから、社内翻訳体制を整えているところなのでインハウ スでやらないか、とお誘いいただき、週3日~5日、インハウスで作業をさせていただくようになりました。その会社の翻訳案件が多いときは社内で仕事をこな し、そこでのお仕事があまりないときは帰宅させていただき、他のエージェントさんからお受けしているお仕事をこなす、という日々でした。そこでは様々な分 野の英和、和英翻訳を担当したので、とてもいい経験をさせていただいたと思っています。
 
その後、その企業で結局は正社員となり、新規事 業の立ち上げなど翻訳以外のお仕事を任せていただくようになりました。転職の際には正社員としての「安定」が非常に魅力に思えてしまい、フリーに戻ること は考えずに、別の会社で広報・IRとして就職。外資系だったために翻訳コーディネーター的な役割も経験させていただきつつ、2009年に再びフリーランス 翻訳・通訳へと舞い戻りました。
 
ですので、私の中では2002年から正社員となる前の2005年までがフリーランス翻訳第1期、そして2009年以降がフリーランス翻訳第2期と位置付けています。
 
フ リーランス翻訳第2期を決意した際、第1期が続かなかったことを教訓として自分の中で目標としたことがいくつかありました。その1つが、生きた人間との関 わりを増やすこと!今はSNSがあるので、そこから非常に多くの同業者の方々と知り合いになれました。またネット上だけでなく、JTF翻訳祭でボランティ アにて司会をやらせていただいたように、業界を知ることができたりネットワークを構築できる場に積極的に足を運ぶよう努力しています。そのようにして出 会った仲間たちはいわば「同僚」のような関係で、ある時は相談に乗ってもらえ、またある時は同じ翻訳でも知らない分野の世界を教えてもらえ、仕事以外にも 美味しいものを食べに行ったり、イベントをしたり…本当に楽しく心強く頼りになる存在であり、その輪は私にとって宝となっています。また、後述する訳書を 出させていただいた際にも、本を買ってくれたり、祝福してくれたり、感想を聞かせてくれたりして、同業者の方々を始め周りの人たちが私にとっていかに大切 な存在であるかを実感しました。
 
生きた人間との関わりを増やすという意味で、そういった同業者の集いに足を運ぶ以外にしていることに、 ジム通いがあります。ツイッターで「体育会系フリーランス翻訳・通訳者」と自己紹介しております通り、お仕事をしているとき以外の時間はたいていジムで過 ごしています。昔は、「ジムって暇な人が行くところ」と思っていたのですが、今は睡眠時間を削ってでも通ってしまいます。ただ、こう言うと私は「アスリー ト」であるという間違ったイメージを与えてしまうことが多々あるのですが、実はどちらかというとちょっと運動音痴です。
 
通勤のない在宅 勤務は、酷いと1日の最大移動距離はベッドからパソコンまでの数メートル。ですからジムは当然ながら運動不足解消にもなるし、一言もしゃべらないような悲 しき独り暮らし在宅翻訳者にとって素晴らしい社交の場と言えます。ジムへ行くとたいてい知っている顔がいるので、そこで汗を流しながら楽しくおしゃべりし て、仕事のストレスもあっという間に吹っ飛んでしまいます。そうそう、肩こりがある人は、プールで泳ぐことをお勧めします。泳がなくても、浮力に身体を任 せるだけでもかなりストレス解消になると思います。ちなみに私のジム人生(!)は2009年秋に始まりました。それまでカナヅチかつ水恐怖症だったのです が、訪れた石垣島の海があまりにもキレイで、泳げなくてパニクっている自分の人生ってなんてもったいないんだろう!と思い、石垣から帰ってすぐに近所のジ ムのスイミングスクールに申し込みました。それが体育会系翻訳者の始まりです(笑)。
 
そんなジム通いが高じて、マラソンを走るようにな りました。と言っても、前述の通り基本運動音痴な私は、もともと走るのが大嫌いでした。高校の時バレーボール部だったのですが、校内マラソン大会 (5km)で、「上位50位に入れなかった部員はクビ」と顧問の先生に宣告されたにも関わらず、5kmを走りきれずに堂々と途中で歩いたくらいです(当 然、後ろから数えた方が早い順位でした。部活をクビにはなりませんでしたが!)。2010年にジムのランニングプログラムに出るようになったのですが、そ の時まで、人生で5km以上の距離を走ったこともないような状態でした。そんな私が2010年にホノルルで初のフルマラソンに挑戦し、2012年には何を 血迷ったのかフルマラソンを2つも走りました。なので、走るのは好きだけどフルはムリ!って思っている方も、こんな私でもできますので、ぜひ安心してチャ レンジしてみてください♪

 
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翻 訳者さんを含め、私の周りにはランニングを趣味にしている方はとても多いのですが、ほぼ全員が、ランニング中は何かしらの音楽を聴いているらしいです。皆 さんもそうでしょうか!?どんな音楽聞くのってよく質問されますが、私の場合、音楽は聞かずに、自分の心の声を聴きながら走っています(笑)。半分冗談、 半分本当です。ランニングって、瞑想に近い効果を得られると思うことが多々あります。最初は色んな考えがグルグル浮かんでは消えていくのですが、そのうち 自分の呼吸に集中して、走り終わる頃には頭がとってもスッキリします。哲学的な考えが浮かんでくることもあります(!)。Facebookやブログのネタ もたくさん湧いてきます。また、ランニングって地球と遊んでもらうスポーツだ!と私は思っているのですが、美しい景色に出会ったらそれをカメラに収めるの も楽しいものです。そんな時間を音楽で無駄にしてしまうのは非常にもったいないと思います。マインドフルネスな時間を過ごすためには、大好きな音楽も時に は邪魔者です(笑)。
 
 
ところで、バトンをいただいた摩美子さんからご紹介いただいたように、去年夏に出版された『マインドフ ルネスを始めたいあなたへ 毎日の生活でできる瞑想』という本を訳させていただきました。マインドフルネスという考え方は、現在心理療法の世界で非常に注 目を浴びていますが、もともとは禅仏教の考えです。目の前で起こっていること以外に心を煩わせてしまっていては、二度と訪れることのないこの瞬間を無駄に 過ごしてしまいます。ですから、その瞬間に意識を集中して、一瞬一瞬大切に生きる、という考え方です。

 
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私 自身、マインドフルネスという概念とは、それと気づかないうちに長い付き合いがありました。四年制大学付属の短期大学に通っていたのですが、当時その大学 の体育会合気道部に入っていました(ヘタレな私は大学の体育会でバレーボールをやる勇気はありませんでした!)。夏と春の合宿では毎晩座禅を組まされまし た。さらにその大学は禅宗だったので、宗教学の時間に座禅を組まされたこともあります。また、1991年くらいからシャーリー・マクレーンやブライアン・ ワイス博士のような精神世界(今風にいうと「スピリチュアル系」)の本をたくさん読んでいたので、私自身は無宗教ですが、西洋の視点から解釈された仏教の 考えには慣れ親しんでいました。そして『マインドフルネスを始めたいあなたへ』は、そういった西洋で科学や医学の最先端にいる人が仏教という哲学を取り入 れて活用しているという点でこれまで私が慣れ親しんできた分野と非常に近いものがあり、この本を訳すお話をいただいたときは、心から宇宙に感謝しました (笑)。
 
ところでこの「マインドフルネス」という考えは私にとってマラソンにもとても役立っています。42.195kmという途方もな い距離を、ヘタレランナーの私はものすごい時間をかけて走ります。まだ10kmしか走っていないや、とか、あと3時間も走り続けなきゃ、などと考えると気 が遠くなって瞬時に嫌になってしまいます。その代わりに、今走っている景色を楽しんだり、走ることができる健康な自分の身体に感謝したりしながらマインド フルに過ごすことで、より充実した42.195kmになると同時に、ゴールまでの道のりをより楽しいものにすることができます。とくに、去年12月に走っ たホノルルマラソンでは、ヘタレランナーなりに自己ベストを更新することができたのですが、何時間何分でゴールするというのは、ゴールしたい未来の時間に 焦点(マインド)を合わせて戦略的に走ることも重要かもしれませんが(あと何キロあるから抑えて走ろう、あと何キロだからスパートをかけよう、等々)、で も「今」という瞬間にベストを尽くして走れば、その結果としてベストなタイムが得られるんだということに気づくことができました。タイムとは、「今」の瞬 間をどれだけ頑張ったかの積み重ねの結果でしかない、と。まさにこれが、「マインドフルネス」ですよね!

 
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さ て運動の話ばかりになってしまい、一体こいつは仕事をしているのか、と思われた方もいらっしゃるかもしれないので(笑)、1日の過ごし方についてお話しし ます。理想的には朝型の生活を目指していますが、今のところまだ達成はできていません(苦笑)。起きてから寝ぼけた状態の頭でまずはメールや Facebook、ツイッターのチェックをします。前述の通り、人との関わりは私にとって財産なのですが、一方でとても面倒くさがり屋なのであまりこまめ に友人とメールでやりとりしないため、Facebookは世界中のどこにいる友達でも、こちらから連絡をしなくても近況が分かるのでとてもありがたいツー ルだと思っています。その後、翻訳スタートです。ここ数カ月はありがたいことにお仕事がひっきりなしに入って来て時間がないため、そのまま夜ジムに行く時 間まで仕事を続け、ジムから返ってきたら就寝時間まで再び作業開始、という状態です。食事は空いた時間でテキトーに(笑)。私は完全な夜型人間なので、ジ ムから帰って来て寝るまでの、周囲が暗くてシーンと静まり返ったこの時間が、一番作業がはかどる時間です。また、欧米のエージェントさんとやりとりを多く しているため、この時間にメールが入ることが多く、私の就寝時間はますます遅くなるのが悩みどころです。
 
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静 まり返った時間が一番作業がはかどる、と書きましたが、翻訳者さんで音が気になって仕方ない、という方は多いと思いますが、実は私は雑音や音楽が鳴ってい てもわりと翻訳をできてしまうタイプです。さすがに翻訳中はしませんが、翻訳以外の作業のとき(例えば請求書作成やトラドスのファイルを作っているときな ど)は、PCで音楽をかけて大声で歌いながら作業をしています。夏は窓を開け放していることを忘れて、しゃべれもしない「なんちゃってスペイン語」で高ら かに歌い上げてしまうこともあるので非常に危険です(笑)。でもこれもストレス発散にかなり役立っていると思います。
 
さて非常に長く なってしまいましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました!今後も仕事と運動のバランスを保ちつつ、人とのコミュニケーションを楽しみなが らフリーランス翻訳者としてバリバリお仕事をこなしていきたいと思います。ただし、今年の目標は「人間並みの潤いのある生活をすること」なので、少しペー スを考えながら、ゆっくりした時間を過ごせるよう時間を作る努力もするつもりです。仏教用語でいうところの「中道」を目指します!
 
 
次 回の「フリースタイル、翻訳ライフ」は、京都在住の渡部優一さんにバトンタッチさせていただきます。通訳者・翻訳者のみんなで高尾山に登るイベント以来、 主にFacebookやツイッターでお世話になっています。私が訳したマインドネスフル本を真っ先に「買ったよ」ってFacebookで報告してくれた有 り難いお友達でもあります。
京都でのはんなりとした翻訳ライフをたくさん聞けるのではないかと、楽しみにしています。



 

コラムオーナー

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高橋 聡
(たかはし あきら)

 
CG 以前の特撮と帽子をこよなく愛する実務翻訳者。翻訳学校講師。学習塾講師と雑多翻訳の二足のわらじ生活を約10年、ローカライズ系翻訳会社の社内翻訳者生 活を約 8年経たのち、2007年にフリーランスに。現在はIT・テクニカル文書全般の翻訳を手がけつつ、翻訳学校や各種SNSの翻訳者コミュニティに出没。

■ブログ「禿頭帽子屋の独語妄言」
http://baldhatter.txt-nifty.com/trados/


 

MISSION STATEMENT

「意外と知られていないフリーランス翻訳者の素顔をさぐる」ために始まったこのシリーズ。そもそもは、私自身がいろいろな翻訳者さんの様子を伺ってみたいと思ったことがきっかけでした。思ったとおり、今に至るまでの人生も、生活スタイルも仕事のしかたも千差万別です。これからも、登場していただきたい方はたくさんいますが、執筆してみたい方がいらっしゃれば、ぜひ帽子屋までご連絡ください!