「ちょうどいい」を大切に、マイペースで楽しむフリーランス翻訳ライフ●マーナー摩美子

2013/01/11

マーナー摩美子



日英・英日翻訳者。分野は一般ビジネスと心理学。カナダの大学に留学中、翻訳ボランティアに参加。卒業・帰国後、翻訳専門の派遣社員としてゲーム会社に勤務。ゲームソフトの取扱説明書翻訳を担当。半年後そのまま社員になり、取引先との契約交渉、マーケティング戦略の立案、ゲーム機の取扱説明書や保証書の翻訳などを担当。2000年、フリーランス翻訳者として独立。現在は1年前に始めたヨガにハマる日々。食いしん坊ツイート多めのTwitterアカウント: @ura_mami。
 

みなさん、こんにちは。前号の仙野陽子さんからバトンを受け取りました、マーナー摩美子です。どうぞよろしくおねがいします。
 
「フ リーランスの生活スタイルについて原稿を」とお声をかけていただいた瞬間、私はなぜか、独立して間もなかった頃の自分を思い出していました。4年半勤務し た会社を退職しフリーランス翻訳者として独立したのは12年前。通勤も会議も出張も来客もなく、気軽に声をかけられる同僚もいず、誰とも言葉を交わさない まま1日が過ぎていくような生活が始まりました。自分で望んだフリーランス生活ではありましたが、なんだかまるで、これまで経験したことのないとても静か な世界に1人放りこまれたような気分でした。
 
最初の数年間は、とにかく仕事を軌道に乗せなきゃという焦りと、仕事が途切れてしまうこと の恐怖心から、来る仕事をどんどん引き受け、ひたすらPCに向かっていました。いつ起きて、いつ食べて、いつ寝るかは、100%仕事次第。「気分転換」と いう言葉を思い出す余裕もなく、肩はガチガチに凝り、気持ちはいつもピリピリ。とにかく必死、とにかく仕事中心。そんな毎日を過ごしていました。
 
数 年経って少し肩の力が抜けてきた頃、「フリーランスでこれから長く仕事を続けるのなら、それなりの環境と生活スタイルが必要な気がする!」と急に気付き (わりと何でも急に気付くタイプです)、私なりの試行錯誤が始まりました。ノートPCをメインに使ってみたり、デスクトップをメインに使ってみたり。突然 思い立って朝型になってみたり、すぐにくじけて夜型になってみたり。デスクを窓の近くに置いてみたり、窓から遠ざけてみたり。DVDを観ながらエクササイ ズをしてみたり(万年ダイエッターです)、ウォーキングに出かけてみたりもしました。
 
試行錯誤は今でも続いているものの、自分にとって 「このくらいがちょうどいいかな」という生活スタイルが定着したのは、ここ1年ほど。今日は、私の「ちょうどいい」生活について、思いつくままに書いてみ たいと思います。書きたいことがたくさんある上に話が脱線しがちなタイプですので、長くなってしまいそうな予感がしますが、最後までお付き合いいただける と嬉しいです!
 
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私の1日はヨガでスタートします。

 

朝 7時半頃にヨガマットを床に広げ、手持ちのヨガDVDや、米国「Yoga Journal」誌がウェブサイト上で提供しているレッスン動画を再生しながら体を動かします。その日の気分や体調によって、リラックスするためのメ ニューを選んでみたり、筋力アップメニューを選んでみたり、柔軟性を高めるためのメニューを選んでみたり。時間は平均すると1日30分程度ですが、10分 ほど軽く体をほぐすだけの日もありますし、1時間近くしっかり汗をかく日もあります。とくに計画を立てたりすることはなく、毎朝マットを広げるタイミング で自分の体に耳を傾け、その時の体のニーズに応えていくという感じです。ヨガが終わると今度は、iPhoneの瞑想タイマーアプリ(今の世の中、ホント何 でもありますね)を使って15分から20分の瞑想タイムです。気持ちをここで一度リセットして落ち着かせ、その日の予定をこなしていくための心の準備を整 えます。
 

ヨ ガは、週に一度スタジオでもレッスンを受けています。私が通うスタジオでは、自分の心や体の状態を観察するところから、レッスンが始まります。床に座り足 を組み、両手は上に向けて膝の上。軽く目を閉じて自然な呼吸を保ったまま、今の自分を静かに見つめます。「今こんな気持ちだな」ということに気付いたら、 それをいったん意識的に手放します。知らない間に歯を食いしばっていたり、眉間にしわが寄っていたりするのに気づいたら、口から大きく一息吐いて、力を緩 めます。そして、ゆったりとした規則正しい鼻呼吸に意識を集中させていくと、今度は自分の心がだんだんと穏やかになっていくような気がします。レッスンで はこの後ポーズの練習が始まりますが、私はこの自分と向き合う時間が大好きで、毎朝のヨガの時間にも取り入れるようにしています。もとはと言えば万年ダイ エッターの私、「次はヨガにでも挑戦してみようかな~」と、本当に軽い気持ちで始めたのですが、今では毎日をできるだけ穏やかな気持ちで過ごすための、大 切な日課です(注:痩せませんでした)。
 
話がそれてしまいましたが、ヨガと瞑想の後はシャワーと家事。一通り終えたところで、珈琲を飲 みながらスケジュール帳を開いて、その日の予定を確認します。同時にTwitterやFacebookもチェックします。通訳・翻訳仲間のつぶやきと近況 に目を通し、自分も軽くつぶやいたりしながら、9時半から10時頃に仕事を開始します。そこから昼食まで一気に仕事をすることが多いのですが、昼食の時間 は特に決めていません。お腹が空いたら食べるようにしています。「規則正しい食生活を送らなければ!」と昼食の時間を決めていた時期もありましたが、どう やら、私の体にはあまり合わなかったようです。今は、正午前でも夕方近くでも、しっかりと空腹を感じるまで待ってから昼食をとります。規則性ゼロの食生活 ではありますが、これが私にはちょうどいいようです。

 

 
 
昼食後はまた仕事です。
こ れまでの経験から、午後~夕方までは集中力が上がりにくく、夕方から夕食までの比較的短い時間に突然エンジンがかかります(不思議)。午後の前半戦は、こ まめに休憩を入れながら、無理のないペースで作業をします。作業時間より休憩時間が長くなることもありますが、あまり気にしていません。とにかくその時に できる作業を、おやつを食べながら(ここ大事)、ジワジワと続けていくことにしています。ちなみにおやつは手が汚れないように、ポテチトングを使って食べ ています。午後の後半戦は、勢いにのって一気に仕事を進めます。周りもあまり見えていないので、「気づいたら外真っ暗!!」と毎日同じようにビックリして います。

 
 
訳 出作業はデスクトップのみで行うこともありますが、デスクトップのモニタに資料を表示させてノートPCで仕事することが多いです。たまに目を通すくらいの 参考資料の場合は、iPadに表示させておくこともあります。過去に一度モニタを左右に並べたことがあったのですが、目や頭を左右に大きく動かすのが自分 の体に合っていなかったことから、このような配置に落ち着いています。目を上下にチラチラと動かしながら作業を進める方が、どうやら私の体には負担が軽い ようです。
 
仕事に区切りをつけたら夕食です。私はラーメンやハンバーガーや生クリームたっぷりのパンケーキを食べに行くのが大好きなの で、自宅では野菜中心のメニューを心掛けています。夕食後にも作業が必要な場合には、少し多め休憩時間を取ってから、9時~9時半頃に仕事を再開。納期と 進捗によっては深夜まで作業が続くこともありますが、日付が変わる前に仕事を終えるのが理想です(あくまでも理想は高く)。仕事を終えたら翌日のスケ ジュールを確認して(必要なら修正・変更を加えて)、夜の部は終了です。
 
スケジュール帳は「アクションプランナー」を使っています。1 週間見開きバーチカルタイプで割と大判です。土日も平日と同じだけの書き込みスペースがあり、週末に作業をして月曜日の朝に納品することが多い今の生活で は、これが非常に役立っています。アクションプランナーを初めて購入したのは2011年の年末でした。ちょうど同時期にプランナー考案者の佐々木かをり氏 による「時間管理術講座」が開催されると聞いて、せっかくなので受講して、プランナーの使い方を学んできました。その後1年間使ってみて自分に合っている と感じたので、2013年も続けてお世話になろうと思っています。
 
最後に、今日を1日無事に過ごせたことに感謝して、私の1日は終了です。
 
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仕 事中の気分転換には、読書をしたり、iTunes Uを視聴したり、お気に入りの雑貨屋さんサイトを巡回したりしています。長い時間同じ姿勢でいた後には、散歩にでかけたり、ジョギングをしたり、軽くスト レッチをしたりして、体をほぐすのもいいですよね。ストレッチは体側を伸ばすのが最近のお気に入りです。うーんと伸ばすと気持ち良く、リラックス効果があ るほか、新陳代謝を促進し、体幹を強化する効果があるのだそうです(と、All Aboutに書いてありました)。読書は小説から実用書までその時に気になった物を読みますが、全体的には心理学関係を選ぶことが多いです。心理学には 色々な種類があって私の好みも時間とともに変わりつつありますが、大学で学んだ異常心理学や司法心理学は今でも大好きです。
 
ところで、 私が心理学を好きになったきっかけは、「羊たちの沈黙」という映画でした(懐かしい)。それまで特に将来の夢などなかった私でしたが、映画を観終えた瞬間 に「私もクラリス(ジョディ・フォスターが演じたFBI訓練生)になる!」と決心。大急ぎでクラリスの髪型を真似して、FBI捜査官になる準備を整え始め ました(形から入りすぎるタイプ)。ところが、当時付き合っていた男性のお姉さんがたまたまFBIの人でして(そんなことってあるんですね)相談に乗って もらいましたところ、米国国籍でないなら捜査官にはなれない、さらに、二重国籍は認められない、という事実が判明。もちろん、大人になった今冷静に考えれ ば当然の事なのですが、その時はショックでした…。クラリス…。
 
ショックは受けたものの、クラリスが体験した世界への好奇心は強まるば かり。そんな時、サイコパスを専門に研究している教授がカナダの大学にいると知り、私はその大学に行ってその教授の授業を受けると決意(決意してから親に 話しました、ごめんなさい)。辞書を引き引き大学に手紙を書いて申請書類を取り寄せ、TOEFLを受験し、出身高校からも書類やら推薦状やらを取り寄せ て、まとめて送って待つこと数か月。無事にお目当ての大学への入学が許可され、3年生の時にその教授の授業を受けることができました。想像していた通り興 味深い授業の連続で、あっという間の1年でした!
 
心理学を専攻したことがきっかけで、大学卒業後間もなくから、心理学論文翻訳の仕事が 入ってくるようになりました。大学で専攻した心理学とは異なる「社会心理学」という分野の翻訳がなぜか多いのですが、それでも心理学と関われることに変わ りはありません。それぞれの論文に楽しく取り組んでいます。仮にもし仕事で心理学に関わっていなかったとしても、きっと趣味として、気分転換に心理学関係 の本を読んだり動画を視聴したりしていただろうと思います。
 
またまた大きく脱線してしまいましたが(すみません)、美味しい物を食べな がら友達とおしゃべりするのも、私にとっては大切な気分転換の時間です。最近は、Twitterを通じて出会った同業者仲間と、楽しく美味しいひと時を過 ごす機会がぐんと増えました。男女問わず皆さん美味しい物が大好きで、さらにノリもフットワークも抜群!何かのきっかけがあればすぐに人数が集まり、ワイ ワイと楽しい時間を過ごすことができるのは、本当にありがたいし、素晴らしいなと思っています。そして、色んなジャンルで活躍される翻訳者さんや通訳者さ んとの会話はいつも刺激に満ちていて、毎回大爆笑したりしながらも多くのことを学び吸収させてもらっています。いつもありがとうございます。そして、これ からもどうぞよろしくお願いします!
 
予想通り長くなってしまいましたが、お付き合いいただきましてありがとうございました!これからも 自分にとっての「ちょうどいい」を大切にしながら、マイペースでじっくりと、フリーランス翻訳生活を楽しんでいきたいと思います。そしてもちろん、たくさ んの方と美味しい物をご一緒できる機会も楽しみにしています。
 
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さて、次回の「フリースタイル、翻訳ラ イフ」は、松丸さとみさんにバトンタッチです。出版翻訳者、通訳者、英語コーチと、多彩な才能で活躍中の松丸さとみさんは、私に良い刺激をくれる美味しい 物仲間の1人でもあります。2012年の夏には訳書『マインドフルネスを始めたいあなたへ  毎日の生活でできる瞑想』が発売。私自身も、瞑想の練習にこの本を使わせてもらっています。もしかすると、この本に関わるエピソードや翻訳裏話が聞ける かもしれませんね。楽しみにしていたいと思います!


 

コラムオーナー

高橋 聡
(たかはし あきら)

 
CG 以前の特撮と帽子をこよなく愛する実務翻訳者。翻訳学校講師。学習塾講師と雑多翻訳の二足のわらじ生活を約10年、ローカライズ系翻訳会社の社内翻訳者生 活を約 8年経たのち、2007年にフリーランスに。現在はIT・テクニカル文書全般の翻訳を手がけつつ、翻訳学校や各種SNSの翻訳者コミュニティに出没。

■ブログ「禿頭帽子屋の独語妄言」
http://baldhatter.txt-nifty.com/trados/


 

MISSION STATEMENT

「意外と知られていないフリーランス翻訳者の素顔をさぐる」ために始まったこのシリーズ。そもそもは、私自身がいろいろな翻訳者さんの様子を伺ってみたいと思ったことがきっかけでした。思ったとおり、今に至るまでの人生も、生活スタイルも仕事のしかたも千差万別です。これからも、登場していただきたい方はたくさんいますが、執筆してみたい方がいらっしゃれば、ぜひ帽子屋までご連絡ください!