イベント報告

2014/01/10

2013年度第3回JTF 関西セミナー報告
即戦力がつくグローバル・ライティング~企業が求める高品質の英文とは~


日向 清人氏
慶応義塾大学ビジネス英語担当講師兼外国語教育研究センター所員


 



2013年度第3回JTF 関西セミナー
2013年9月27日 14:00~17:00
開催場所●大阪大学中之島センター
テーマ●「即戦力がつくグローバル・ライティング~企業が求める高品質の英文とは~」
講師●日向 清人氏 慶応義塾大学ビジネス英語担当講師兼外国語教育研究センター所員
司会●礒西 和子 個人翻訳者
報告者●樋口 勝規 個人翻訳者

 


第一部

日向氏は3歳のときロンドンの幼稚園に通い始め、その後も基本的に英語圏のアメリカンスクールに中学まで通っていたため、普通に英語が話せる環境で育った。しかし、大学4年生のときケンブリッジ英検を受けて不合格となり、その中でもライティングの成績が悪かったことから、英語で書く流儀があることに気づく。本講演ではコミュニケーションとは何か、ディスコース能力の必要性について説明。

ディスコース

1980年代、ディスコースという考え方に注目が集まる。ディスコースについては後で詳しく話すとしながら、ディスコースはとても大事で、ディスコースができるということは英語ができるということだと強調。

「ライティングにおけるディスコースについて(単語力と文法知識だけでは英語を書けない)」、「コミュニケーションとは何か」について説明。

コミュニケーションとは

・”Knowing how, when, and why, to say what to whom”---National Standards for Foreign Language Learning in the 21st Century
であるという定義を紹介。

繋がっていて(cohesive)、纏まりがある(coherent)文章はどう書くのか
言葉を繋げ、思考の流れを繋げてコミュニケーションの目的を果たすスキルの演習に入っていく。扱ったすべての例を挙げるわけにはいかないが、いくつかを示すことにする。

1.駄目テキストのサンプル
We held the first Tokyo Olympic Games as a developing country in 1964. I want make sophysticated events [sic] as a leading country next time. → At the time we hosted the 1964 Olympic Games, we were still a developing country. Now, we are one of the developed countries, meaning we may be able to offer something more sophisticated.
最初の2文は、つながりがなく、2文目は make sophisticated eventsと3語の中に誤りが3つもある。To の欠如とsophisticatedの綴りの間違いと、make eventsのコロケーションの誤りである。これを書き直したのが、At the timeとNowを使って比較を利用して理解しやすくした文で、英語らしくなっている。

2.繋がっているけれど、纏まりのないテキスト
A week has seven days. Every day I go to work. Work is boring.
この文はweekやdayのような実質面でのつながりはあるが、3つの文が筋道だって並んでいない。

3.形式的なつながりはないけれど纏まりのあるテキスト
A: That’s the telephone.
B: I’m in the bath.
A: OK.
これは、言語学者のWiddowsonの用いた例であるが、センテンスの前後関係は示されていないが、センテンス外のコンテクスト(入浴中に裸のまま電話には出ないという常識)のおかげで筋が通っている。

4.複数センテンスの繋ぎ方
複数センテンスを構成する個々のセンテンス自体、「テーマを挙げて、コメントする」形式で書く、つまり、テーマの位置に旧情報を、コメントの位置には新情報を入れるようにするとあとあと楽である。
×Nara is my hometown.   ◯My hometown is Nara.
この場合、my hometownが旧情報で、Naraが新情報である。

センテンスを繋げる方法として、次の項目を挙げ、演習を交えて説明
A 言及して繋ぐ:(a)代名詞で先行部分を受ける。(b)後方部分を指す。(c)文章外の事実に言及。(d)指示代名詞。(e)比較。
B 省略や置き換えで繋ぐ:(a)省略。(b)置き換え。
C 言い換えで繋ぐ:(a)同じ言葉をそのまま繰り返す。(b)同義語を使う。(c)反対語を使う。(d)分類上の上位・下位に当たる別の言葉を使う。(e)構成上の部分と全体を示す言葉を使う(エンジンと部品の例など)。(f)コロケーションを使う。
D 接続表現で繋ぐ

第二部

第一部の後半で一繋がりの文章を書く方法をおさらいしたのに続いて、コミュニケーション能力とは何か、ディスコースとは何かについて本格的に説明。

コミュニケーション能力とは

コミュニケーションには、一説によると122もの定義があり、一口にコミュニケーションと言っても、意味するところはさまざまである。
ここでは、コミュニケーション能力とは、
・言語知識(単語・文法・発音)
・社会言語能力(妥当性-会話の中で失礼な言葉遣いをしないか等)
・言語運用能力(ディスコース運用能力)
が備わっているかどうかと捉えている。

Pragmatism(語用論)が大切である

言葉を離れて人間関係まで視野に入れた場合、
Open the window, please.(窓を開けろよ。お願い。)
となり、実際に、相手によってはひどくぶしつけに聞こえる。
問題は助動詞で、Mustは禁じ手であり、need to, have toなどの使用にはネイティブでも気を遣っている。また、ぼかした言い方を好む。Something like…など。
つまり、相手があるということでコンテクストが問題になる。何が妥当なのか、通用しているのか社会言語能力が必要である。

ディスコースとは

文章というのは目的別にスタイルが違うのでそれに合わせたものを使わなくてはならない。
言語運用能力というのは、ディスコース、つまりコミュニケーションの当事者が双方向で行うやりとりをまとめて一体感のあるものとしてつくりあげる。

Celce-Murcia & Olshtainは、「It is in discourse(i.e. the language produced interactively for communication) and through discourse that all of the other competence realized.: ディスコース以外のすべての能力の実現は、ディスコース(コミュニケーションのために双方向で使われる言葉など)そのものにあり、かつディスコースによって達成される」と語っている。

つまり、ディスコース能力は、社会言語能力(Socio-cultural Competence:相手を見て言葉遣いを考える力等)と言語運用能力(Actional Competence:質問する等)と言語知識(Linguistic Competence:文法、単語、発音)の中心にあり、双方向に影響し合い、それぞれに補正する能力(Strategic Competence: Please say it again 等)が伴っていると考えられる。

Larsen-Freemanは、文法教育の目的として、
・Teaching grammar means enabling language students to use linguistic forms accurately, meaningfully, and appropriately.
と語っている。ここでaccuratelyとは文法的に正確であり、meaningfully とはディスコース能力が備わっていることで、appropriately とは失礼なことを言わない社会言語能力があることを意味する。

文章とは目的別にスタイルが違うので、それに合った単語を使う必要がある

ディスコースとは
テキストとコンテクストにより「繋がり」と「纏まり」を見いだせる言葉で、
・テキストとは「コミュニケーションに供される複数のセンテンス」
・コンテクストとは、「前後関係、当事者が認識している状況、ジャンル(文章ごとの目的:説明、描写、お話、説得)」である。
コンテクストを踏まえながら、複数のセンテンスを用いて『まとまり』を創りだしたものがディスコースである。

ジャンルごとに構成が決まっていて、動詞まで違ってくる

プレゼンとは、予告して、次に本題に入り、最後に話したことをもう一度まとめるというように、パターンがある。説明文で普遍的な事柄は現在形で、be動詞が多い。報道文は現在完了ではじまり、過去形になる。現物を見てどういう癖があるか、確認して利用するとそれらしくなる。よく見るとパターンが決まっている。ライティングはジャンルに応じた合目的行為であり、ジャンルごとに決まっている段階/構成に従い、かつ、その段階で定型的に頻出する言い回しまたは頻出動詞に注意する必要がある。

ちゃんとして英語らしく映る、英語として認めてもらえる文章を書くにはどうしたら良いか。まともな英文として認識してもらうためには、cohesiveでありcoherenceである必要がある。Coherence であるためには抽象的コンテクストと具体的コンテクストが重要である。抽象的コンテクストとはジャンルのことで、報告する文章、説明する文章、出来事を伝える文章等があり、それにはパターンがある。中には混ざっている場合があるが、プロトタイプというものがあり、それを認識しておかないと、どのジャンルであるかをわかってもらえないことになる。

 


感想

ディスコースについてはよく知らなかったので、今回の講演で詳しく説明していただき、英文ライティングにおいて英語らいし文章を書くために極めて重要だと言うことがわかり、良かった。本講演は「即戦力がつく英文ライティング」という筆者の著書に基づいているのでお勧めしたい。