中国における翻訳通訳教育●仲伟合

2014/11/07

中国における翻訳通訳教育

 

仲伟合(Zhong Weihe

Professor ZHONG Weihe is President of Guangdong University of Foreign Studies, China. In 1992 he graduated from Nanjng Normal University with BA and MA degree in English Language and Literature. He then obtained another MA degree in Interpreting and Translation Studies from the University of Westminster, a PhD in Translation Studies from Shanghai International Studies University and Honorary Doctorate from the University of Central Lancashire and the University of Westminster, the UK. He is an Honorary Fellow of the University of Warwick, and Honorary Professor of La Universidad Católica de Santa María,Peru. He is Chairman of the National Supervisory Committee for Interpreting and Translation Programme and Chairman of the Advisory Board of ELT under the Ministry of Education of China. He is also Vice Chairman of the National Committee for MTI (Master of Translation and Interpreting) Education in China and Vice President of Translators’ Association of China.He has published extensively in interpreting and translation studies.

仲伟合: 中国広東外語外貿大学教授・学長。1992年、南京師範大学卒業、英語学・英文学学士及び修士。その後、ウェストミンスター大学で通訳翻訳学修士、上海外国語大学で翻訳学博士号を取得。セントラル・ランカシャー大学及びウェストミンスター大学名誉博士。ウォリック大学フェロー、カトリカ・デ・サンタ・マリア大学(ペルー)名誉教授。現在、中国文部省の通訳翻訳プログラム国家評議委員会委員長及びELT諮問委員会委員長を務めるほか、中国翻訳通訳修士教育国家委員会副委員長、中国翻訳者協会副委員長を務める。通訳翻訳学分野で多くの業績をあげている。

 

 中国の通訳翻訳教育は、1970年代の改革と開放の流れの中で始まり、21世紀に入って急激な発展を見ています。
 中国本土の通訳翻訳教育が大学レベルで実現したのは、1997年、広東外語外貿大学に通訳翻訳学部が設立されたのが最初でした。次いで2004年に上海外国語大学で通訳翻訳研究の修士課程と博士課程が、2007年に広東外語外貿大学、2009年に北京外国語大学で通訳翻訳研究の修士課程と博士課程が設置されたことで、大学における通訳翻訳教育が確立したといえます。2012年、中華人民共和国国務院学位委員会が公開した『博士号・修士号分野一覧』において、外国語・外国文学関係の13研究分野の一つに翻訳学が挙げられたことで公的にも大学における通訳翻訳研究の位置づけが確認されました。
 通訳翻訳研究というこの新たな分野に対する関心と熱意の高まりは衰えるところを知らず、英語学や文学、言語学といった領域から、通訳翻訳研究に研究者が参入しました。その後、中国本土の通訳翻訳教育は、徐々に、ジル(Gile, 2010:12)が言うところの「学問的支柱」から「専門職上の支柱」へと重点を移してきました。上海外国語大学通訳翻訳大学院の創設、広東外語外貿大学及び北京外国語大学における通訳翻訳学部の創設、そしてこれら3大学のCIUTI(Conference internationale permanente d'instituts universitaires de traducteurs et interpretes; 世界通訳翻訳大学(院)協会)への加盟と国連との連携は、中国が通訳翻訳教育の「専門職上の支柱」を大学・大学院で展開しようと力を入れていることを示しています。
 中国における通訳翻訳教育の展開は、中国の大学が教育研究の世界的なコミュニティでますます積極的な役割を果たすようになってきたことと同期しています。教育が展開する中で、翻訳通訳の独立した学位の創設から、指導要領と指導方法の標準化、カリキュラムデザイン、市場ニーズへの対応や国際組織との連携等、様々な分野で通訳翻訳教育は変化しています。
 中国本土の通訳翻訳教育において、教育部と国務院学位委員会が、2006年に翻訳通訳学士(Bachelor of Translation and Interpreting; BTI)、2007年には翻訳通訳修士(Master of Translation and Interpreting; MTI)の学位プログラムを設置したことは大きなステップでした。現在、国家が認証したBTIのプログラムは152大学に設置されており、1万4693人の学生が学んでいます。
 国務院学位委員会が2007年にMTIを認可して以来、翻訳学の分野は外国語・外国文学分野を展開するものとして急速に展開してきました。MTIプログラムを有している大学は現在206あり、2万257名の学生が学んでいます。これらの数字は、中国における翻訳教育がかつてないほど注目されていることを示しています。なお、この数字には、香港、澳門、台湾における専門職学位プログラムを持つ一ダースほどの大学は入っていません。
 BTIとMTIにおける通訳翻訳の独立した学位を制度化したこと、そして伝統的な外国語・外国文学のプログラムと通訳翻訳を区別したことは、中国が、専門的な通訳翻訳養成において積極的に西洋の方式を採用したことを示しています。言語学や外国語・外国文学と並列に翻訳通訳の学問領域を制度化したことで、言語教育と翻訳通訳教育との混乱を避けることができます。BTIとMTIのプログラムを終了した学生が卒業していく中、状況を理解する雇い主が、これらの専門職学位を有する卒業生を優先的に採用することで、通訳翻訳市場にも大幅な変化が起きることが予想されます。

参考文献
Gile, D. 2010. “Chinese BTIs and MTIs – A Golden Opportunity”. In Zhong, W. et al. (eds.) Interpreting in China: New Trends and Challenges – Proceedings of the 7th National Conference and International Forum on Interpreting. Beijing: Foreign Language Teaching and Research Press. pp. 10-20.