多言語情報発信シンポジウムの報告

2015/07/03

多言語情報発信シンポジウムの報告

Symposium on Multilingual Information Sharing and Launch of TKUN




 
株式会社翻訳センター 三宅理恵
Rie Miyake, Honyaku Center Inc.
 
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2015年4月7日(火)10:00 ~ 17:00
会場:一橋講堂
 
個人的にこのような開催のお手伝い等をしたことがなく、最初はどうなることかという不安もありましたが、いざ当日を迎えると、非常に熱気あふれるシンポジウムとなりました。
豊橋技術科学大学の学長のご挨拶にはじまり、同大学の副学長のスピーチで終了しました。大学をあげて取り組まれているということが感じられ、熱意に心を打たれるとともに、これだけの期待を持ってなさっていることに対して我々に何ができるのかという責任も感じました。
ご後援いただいている経済産業省の方からのスピーチも、非常に誠意に溢れたもので、日本の今後のために機械翻訳を活用したサービス向上に期待しているとのお話には気持ちが締まりました。
 
機械翻訳のための協力ということは、一民間企業が取り組むには難しいテーマで、豊橋技術科学大学の井佐原教授が構想をし、ユーザ企業と翻訳会社に呼びかけるべく第一歩を踏み出してくださったことは、非常に有難く意義深いことです。
 
全体として印象的だったのは、様々な立場の方々が思い思いのスピーチをしていたことです。目標や問題の意識は、置かれている立場により異なってきます。異なる立場の人や組織がどのような段階にあり、何を考えているのかを知ることがとても大切だと感じました。機械翻訳についての認識・理解を企業の方が伝えてくださった内容は、翻訳会社の者にとって、非常に興味を持てるものであるとともに、それに応えるためにどうしたらよいかという課題をつきつけられるものでもありました。また、こうした課題は、ひとつの翻訳会社がソリューションを提供できる領域を超えていると思います。大学や研究機関との協力はもちろん、既に機械翻訳の実用化や機械翻訳をめぐる協力について成功を収めている、欧米の例に学ぶこともきっと必要です。そのために、TAUS代表のJaap van der Meerさん、Microsoft ResearchのChris Wendtさんをお呼びしたのだと理解しています。お二人は、翻訳の歴史にもふれつつ、皆を分かりやすく機械翻訳がどのように始まったか、どのように活用されているかを理解できるよう導くような内容のスピーチをなさっていました。Chris Wendtさんのスピーチは、データの共有ということに違和感や拒否感があると思われる日本の人々に呼びかけるとても熱意溢れるものでした。
 翻訳者の皆様にとっては、機械翻訳はお仕事にとって脅威であるように思われるかもしれません。人が一生懸命にしてきた翻訳の仕事を機械がするようになるのではないか。Chris Wendtさんからのメッセージを(レポートと同じ内容ですが)ここに引用させていただきたいと思います:
「機械翻訳の目的は、費用を節約することではないし、人間の翻訳者の仕事を取り上げることでもない。」
「機械翻訳は、今翻訳されていないあらゆるものをカバーできる可能性がある。よって、機械翻訳の競争する相手は、翻訳ではない(つまり人の翻訳者ではない)。」
 こういう新しい考え方、流れがあること、欧米でとても進んでいること。そして日本でもこのような動きを作ろうとしている人たちがいること。それを認識することはマイナスにはなりません。
 翻訳者としてのお仕事のあり方をすぐに変更される必要はないと思うのです。積み重ねてきたことは、決して無駄にはなりませんし、学習と経験の積み重ねでどんどん向上していくことができるのが翻訳者のお仕事の素晴らしいところです(筆者ももと翻訳者ですのでその難しさと魅力は想像できます)。一方で、翻訳業界の動きのひとつとして、ご参考までに、今回のシンポジウムのご報告を頭の片隅に置いていただけたらよいのではないかと思います。一部の方たちは、今までどおりの翻訳のお仕事を続けていかれるでしょうし、逆に、新しい傾向のお仕事をこれからなさる方々もいらっしゃるでしょう。比較することも、どちらが優れているということもありません。決して翻訳者の方に何かを押し付けるものではないですし、あってはならないと思います。(翻訳への思い入れのため、少し書きすぎてしまったことお許しください。)
 シンポジウムには、メーカ等のユーザ企業、MTベンダー、ローカライゼーション企業、翻訳関係の企業、大学や研究機関の方等、様々なバックグラウンドの方々がバランスよく参加されていました。
 
 今回の報告記事の作成にあたり、大部分のスピーチ(TAUSのJaapさん、Microsoft ResearchのChrisさん、および川村インターナショナルの森口さんによるスピーチ以外)に関しては、立教大学の大学院で武田珂代子教授のリサーチアシスタントをされている山田安仁花さんにレポートをご担当いただきました。私たちのレポートの内容のうち、井佐原先生・秋葉先生・川村インターナショナルの森口さんのご講演につきましては、講演者自ら、丁寧にご校閲くださいました。お忙しいところジャーナルのためにご協力いただき、大変感謝しております。また、井佐原先生、秋葉先生、Jaapさん、Chrisさんには、スライド資料の一部添付を許可していただきましたことをここに申し添えます。
 
 最後になりますが、シンポジウムの当日は、山田さんとともに、立教大学の武田先生のゼミの四年生の方々が受付や会場の係としてお手伝いくださり、豊橋技術科学大学の大学院の方もカメラマン等でご協力くださいました。翻訳センターの元スタッフでフリーランス翻訳者のレイチェル・デパルマさんは、一日中、TAUSのJaapさん、MicrosoftのChrisさんのお二人のために、日本語の講演をウィスパリング通訳で英語に直してくれました。大変な労力だっただろうと思います。
 井佐原先生のビジョンのもと、お手伝いの一人としてシンポジウムの開催に関われたことは大変光栄なことです。準備・運営その他、様々な場面で多くの方々に支えていただき、心から感謝致します。
 
See below for English:
 
Date of the Symposium: April 7, 2015, 10 AM to 5 PM
Venue: Hitotsubashi Hall
 
Honestly, it was my first time to help preparation and arrangement of such an event. I was afraid and at a loss at first, having no image of the symposium. Can the speakers really come and speak? Will many people attend? Such fears gradually went away, and the symposium became a quite enthusiastic one. It was a real pleasure for me to feel the passion from all of the speakers and see the audience listing to them with interest.
The speech delivered by the guest speaker from Ministry of Economy, Trade and Industry was so enthusiastic. He told us how the ministry wishes to enhance services utilizing machine translation, which encouraged us indeed.
 
Cooperation for machine translation cannot be easily conducted with an initiative of only one private firm. For this reason, it was an appreciating and meaningful thing that Professor Isahara of Toyohashi University of Technology (TUT) gave a shape to his idea and took his first step to call for user clients and language service providers.
 
What was impressive throughout the symposium is that people from many backgrounds delivered their speeches freely, from their own perspectives. What they think important and what they feel as problems and difficulties are quite different from one another. It is, therefore, important to know what they think and what they are looking for at the present.
Their recognition, understanding about machine translation told by people from user clients were really interesting and impressive for people from language service providers. Their speech, however, also made us deeply think about what they can do for them to solve their problems and meet their needs. Their needs may not be fully met by one private firm. Not only cooperation with academics such as universities and research institutions, but also learning from techniques and successful examples of Europe and the United States. This must be the reason why Mr. Jaap van der Meer from TAUS and Mr. Chris Wendt from Microsoft Research joined us. Both Mr. van der Meer and Mr. Wendt delivered a speech including the perspective of history of translation or that of machine translation, in which they introduced the audience to understand how machine translation was initiated and how it is actually utilized.
 
We had a variety of participants: those from user clients including manufacturers, localizers, language service providers, MT vendors, and from academics (universities and research institutions).
 
Please note that, in this article, most of the reports of presentations (except for the presentations made in English and that given by Mr. Moriguchi from Kawamura International Co., Ltd.) were drafted with contribution of Ms. Anika Yamada, the research assistant of Professor Kayoko Takeda at graduation school of Rikkyo University. Professor Isahara, Associate Professor Akiba, and Mr. Moriguchi kindly revised their reports. Please also note that Mr. van der Meer, Mr. Wendt, Prof. Isahara and Associate Prof. Akiba allowed us to use some parts of their slides in the articles reporting their presentations. We really appreciate their cooperation even after the symposium.
In addition, two students of Rikkyo University helped the symposium as receptionist, etc., together with Ms. Yamada. All of them had a good notice about everything and helped us with their hospitality to the audience and the speakers. A graduate student from Toyohashi University of Technology helped arranging the room from early in the morning, and recording of the symposium and the networking event as a photographer. He took very nice photos for us. Last but not least, Ms. Rachel DePalma, a former staff member in Honyaku Center and is now a freelance translator, helped Mr. van der Meer and Mr. Wendt by providing whispering interpretation. She did a great work.
 
As described above, I cannot say how thankful I am to all people who devoted themselves to the symposium. It is our honor if you could feel the atmosphere of the symposium from this writing, though the reports of the presentations are written in Japanese. I am sorry that I was not allowed to spare as much time to write English articles, though I really wish if I could.
 
 

1. 基調講演:長尾真元京都大学総長

2. TKUNの紹介:井佐原均(豊橋技術科学大学)

3. 機械翻訳における言語資源の役割について:秋葉友良(豊橋技術科学大学)

4. TAUSの紹介:Jaap van der Meer (TAUS)

5. TAUS user success stories:Chris Wendt (Microsoft Research)

6. 多言語情報発信への期待:ユーザ企業様より

6-1 制作現場の一例と機械翻訳“深化”への期待:大西浩司氏(パナソニック株式会社)

6-2 YAMAHAからの多言語情報発信への期待:遠藤幸夫氏(ヤマハ株式会社)

6-3 多言語情報発信への期待~ビジネスの強化にPlus Oneの連携を!:岩崎英丈氏(バンドー化学株式会社)

7. データを使った翻訳を成功させる方法:河野弘毅(株式会社翻訳センター)

8. 機械翻訳を取り巻く国際標準化の動き:森口功造(株式会社川村インターナショナル)