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5-2 映像翻訳会社ワイズ・インフィニティのブルーオーシャン戦略~新しい分野で仕事獲得のチャンス広がる~

2014/01/10

山下 奈々子 

株式会社ワイズ・インフィニティ 代表取締役

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報告者●池山和子(個人翻訳者)

 



山下 奈々子氏は、高校卒業と同時にバージニア州の大学へ留学し、帰国後の英会話講師、字幕翻訳者・放送翻訳者を経て、2000年に映像翻訳会社を設立した。試験・面接を経た400名以上の登録翻訳者を誇る「小さな会社」の経営者は、一貫した企業理念(愛ある経営、知恵 無限大)を胸に、その沿革、危機意識に根差した戦略と目標を熱く語った。

映像翻訳会社ワイズ・インフィニティの特徴

スクール事業、クローズドキャプション(聴覚障がい者向け字幕)、ドラマ、ドキュメンタリー、ニュース、インタビュー等の放送翻訳、ロケの映像、新聞記事、番組用のフリップ、電話インタビュー(テレピック)、海外の取材予約、写真の使用申請、海外向けのCMのナレーターの調達・録音等多岐に亘る。映画の字幕翻訳は、本編よりもDVDの特典映像などを中心に手掛ける。バラエティ系は台本の翻訳、発音指導の依頼も受ける。
対応言語は約40言語以上。ニュース系は緊急性があり、放送局等に出向けるよう、登録の母語者は主に関東近辺に在住する。全社員が理念を理解し、同じ方向性や協調性を保てるよう、毎週及び隔月の勉強会を持つ。内容は、顧客対応や翻訳者との連携が中心である。

講師のフリーランス時代を振り返って

子育てとの両立は一時期のことなので乗り切ってほしいと語った。子どもが入院しても枕元で仕事をして納期を守った経験にも触れ、「ワーク・ライフ・バランス」は大切かもしれないが、「この仕事を断ったら次が無い」という位の覚悟で仕事をすること、シリーズ物で休んだりして迷惑をかけるべきではないとプロ意識の大切さを強調した。

「ブルーオーシャン」とは

まだ生まれていない市場を開拓し、競争相手が少ない分野で、サービスに付加価値をつけ、差別化を図って、順風の波に乗れる状況である。逆に、小さなパイを奪い合い、価格競争に巻き込まれてしまう状況は、血の海、「レッドオーシャン」である。日本国内向けのエンタテインメント系映像翻訳の市場は縮小し続けている。かつて、ビデオデッキの普及に伴い、海外映画のビデオ版が販売され出した80年代の映像翻訳を知る氏は、手書きの原稿で直接顧客とやり取りをしたと言う。スカパーの開始により、翻訳者不足の時期もあったが、現在、洋画は激減し邦画に抜かれている。動画配信の翻訳は増えているが、3分~20分の短いものが多い。テレビ局も放送事業の営業益は減っており、海外制作費がかさむ長尺のインタビューやドキュメンタリー等も少なくなっている。生き残り戦略の例として、TBSの大きな収益源になっているのはライブハウスや劇場を含む「赤坂サカス」であり、フジテレビも「お台場合衆国」など放送事業以外で収益を上げている。

ブルーオーシャンを求めて

  • 伸びている分野に気づくこと。日本アニメのソフト化は好調である。
  • 2013年から、経済産業省が「クールジャパン戦略」の一環として、映像コンテンツを海外向けにローカライズして販売することを促すため、翻訳料の半分を助成する。その基金である「ジャパン・コンテンツローカライズ&プロモーション支援 助成金」(J-LOP)が申請を募集しており、155億円の助成金申請にまだ余裕がある。申請書類も当初より簡略化した。日本の紹介を見て訪れる観光客が増えれば、翻訳の需要も拡大するチャンスがある。日本では小規模な翻訳会社が多数を占め、映像翻訳事業は60億円規模で、韓国の約3分の1と遅れを取っている。
  • 2013年2月、シンガポールに日本専門チャンネル「Hello Japan」が開設された。日本キー局等の共同設立で、徐々に本放送を開始しつつある。日本文化、料理、食べ物、観光、ドラマなどを早朝から深夜まで、現在は再放送を繰返し放映している。2014年1月からは、インドネシアでフジテレビとスカパーが日本専門チャンネルを開設する。
  • オリンピックに伴う需要も見込める。

「経営資源分析」で活路を見出す

マネジメント力、技術・商品・サービス力、営業力、組織・人事力、財務・資金力等の観点で、SWOT(strength, weakness, opportunity, threat)分析をする際は、実際に書き出してみることで方向性が明確になる。以下はそのような過程があってこそ生れた。

  • SSTというスポッティング(字幕の出し入れのタイミングを取る作業)用のソフトウエアによって、高額機器を利用したスタジオでの作業がデスクトップで可能になる。山下氏の会社は、専門の技術者を採用し、SSTのマニュアルも制作、翻訳者にスポッティング技術を教える講座を開設した。通信講座も展開している。

  • 韓国語、中国語も映像つきでチェックできる通信講座は、海外・遠方在住者にもチャンスを提供できる。

  • 2012年「ワイズクラブ」を発足する。映像翻訳に関するセミナーや情報交換等、月2回の活動を動画共有サービスのUstream(無料)を使って生中継し、会場に足を運ばなくても参加できる仕組みも採用している。

「出会った人すべてをファンにする」を目標に

愛ある経営、途上国支援、人づくり・・・価格や品質での大きな差別化が難しいが、顧客に限らず、人々のニーズに関心を持って、人の役に立つにはどうしたらよいかを常に考えるという、山下氏の情熱に打たれ、会場の参加者は大きな拍手を送った。

質疑応答

プロの映像翻訳者はどんなペースで仕事をしているか?
→45分くらいのドラマを1週間程度で仕上げてもらう。平均10分あたり100個程のセリフが入っている。10分のスポッティングを取るのに半日くらい掛かる。
ドイツ語翻訳は?
→音楽、オペラなど芸術関係、映画祭関係の仕事もあるようだ。
顧客ニーズのシフトにどう対処するか?
→翻訳者の適性を見る。社内チェックで品質の統一を図っている。
翻訳料は?
→1分単位で価格設定する。かつて「好きでやっているので安くてもいい」と言った大御所の影響が残り、適正価格とは言えない相場ができてしまっている。
ヒンディー語、タイ語等は、一度英語に翻訳してから対応することが増えている。

「第8回 映像翻訳フォーラム」についてのよいコメントがあった。フォーラム創設の目的は、字幕翻訳者やその志願者を含め、業界の活性化や映像制作会社の連携を目指したとのことである。第9回は2014年3月30日に開催する。

映像翻訳会社ワイズ・インフィニティ http://www.wiseinfinity.com/index.html

「ジャパン・コンテンツローカライズ&プロモーション支援 助成金」(略称:J-LOP)
http://j-lop.jp/about/

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