No.274 特集「日本の通翻訳者養成」編集後記

2014/11/07

No.274 特集「日本の通翻訳者養成」編集後記
 

株式会社翻訳センター
河野弘毅(かわのひろき)


 今回の特集を企画するにあたって、ISO規格で通翻訳者の資格要件が定められようとしていることを身の回りの業界関係者に話す機会が何度かありました。私は「これって僕たちにとって大変なことじゃない!?」というテンションで話題を切り出すのですが、意外にも?多くの業界関係者からは「ふーん…で、具体的には何が変わるの?」「先の話じゃないの?」「いま仕事できっちりお客さんを掴んでいる我々には関係ない話でしょ」という“冷めた”反応が返ってくることが多くて、同じ業界にいても考えていることは人それぞれだということを認識しました。
 
  特集記事にもあるとおり、たしかに現役のプロ翻訳者プロ通訳者はISOの要件をクリアしている人たちであり、むしろ今後この業界に新規参入してくる将来の競争相手に課せられる「参入障壁」があがることは歓迎すべきという考え方があるかもしれません。もしこの業界が国際競争から隔離された保護産業なのであればその論も一理あるかもしれませんが、言うまでもなく通訳翻訳業界は世界に対して開かれており、(しばしば海外に本社機能がある)私たちの顧客企業は、通訳でも翻訳でも世界中の個人や業者から自らの需要にもっとも適したプロバイダを選ぶことができます。国内の通翻訳者の基盤が先細りになったとき、国内の翻訳会社の未来も先細りになるのは自明でしょう。
 
  私たちの業界は人材育成、技術開発、基準策定など多くの面で、世界のトップに追いつくどころか、うっかりするとはるか後方に引き離されて挽回できなくなるという危機感を私は持っています。日本における通翻訳者養成の教育機関(大学・大学院)を充実することは、この分野における日本の競争力強化のための必須要素のひとつです。今回の特集記事が、日本における通翻訳者養成への関心を高める一助となることを願っています。


November/December #274
PDF版表紙撮影:
世良 武史

PDF版デザイン:
中村 ヒロユキ(Charlie's HOUSE)

 

次号予告

January/February #275
2015年1月16日発行予定
特集「第24回JTF翻訳祭」

11月26日(水)、JTF翻訳祭がアルカディア市ヶ谷にて開催されます。JAT(日本翻訳者協会)、AAMT(アジア太平洋機械翻訳協会)、JAITS(日本通訳翻訳学会)、JTCA(テクニカルコミュニケーター協会)の各団体にもご協力いただき、翻訳者・翻訳会社・クライアントのいずれの立場の方にとっても役立つ企画がそろいました。最新の翻訳支援ツールがならぶ製品説明コーナーも見逃せません。次号ではJTF翻訳祭を特集でお届けします。ご期待ください。