No.280 編集後記

2015/11/06

編集後記 


国際規格にどう取り組むか?
 

 
ISO 17100には、モデルとなった先行規格が存在します。欧州標準化委員会(CEN)が2006年に発行したEN 15038がそれです。
田嶌奈々さんの記事にも解説されているように、翻訳先進国の欧州では工業製品の品質管理規格であるISO 9001を翻訳業に適用されることに対する不満が早い時期からあり、翻訳品質に特化した規格の必要性が業界で共有されていたようです。議論を重ねた末にEN 15038が発行されると、英仏独をはじめとする欧州15ヶ国ではそのまま自国の国家規格に採用され、EUの入札仕様書のベンチマークにも採用されました。
佐藤晶子さん他の記事に紹介されているとおり、国際規格の策定は各国の利害もからむ駆け引きの要素があって発行にいたる道のりは平坦ではありません。国元から期待されている役割を担って、意見や利害が異なる他国の代表と議論して落とし所をさぐるタフな交渉を三年間にわたって継続するうえで、欧州各国の代表には欧州内での調整の困難を乗り越えてきているという優位があるように思います。甲子園大会にたとえれば、強豪ひしめく地区大会を勝ち抜いてきた学校とそうでない地区の代表校の違いにたとえられるでしょうか。
自分自身の反省も込めて書くと、英語で交渉することの負担感もあって、海外とのやりとりは「課題が具体化してからでいいや」と先送りにしがちな人も多いのではないでしょうか。でも、いくら先送りしても結局、世界からは逃げられません。鎖国を謳歌した江戸幕府がペリー来航から短期間で崩壊に追い込まれた歴史もあります。「世界」への対応にはできるだけ早めに着手した方がよいと思います。

 

Nov./Dec. #280
校正協力:
豊田 麻友美
久松 紀子
松浦 悦子
矢能 千秋

PDF版表紙撮影:
世良 武史

PDF版デザイン:
中村 ヒロユキ(Charlie's HOUSE)

 

 

次号予告


Jan./Feb. #281
2016年1月8日発行予定
特集「25周年記念JTF翻訳祭」
25周年となる今年のJTF翻訳祭は、映画字幕翻訳者の戸田奈津子さん、TV番組のコメンテーターとしても活躍中のロバート・アラン・フェルドマンさん、一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎さんなど著名人のスピーカーも参加します。次号のJTFジャーナルでは翻訳祭当日の様子をレポートします。ご期待ください。