MultiLingual誌の記事の紹介を始めます

2014/06/09

MultiLingual誌の記事の紹介

 


翻訳センター 三宅理恵
 

 MultiLingualという、世界の翻訳の最先端を取り上げている雑誌があります。このMultiLingualの編集長のKatie Botkinさんが、JTFジャーナルにMultiLingualの紹介記事を掲載することを快く認めてくださいました。特別に、記事の試読ができるコードも、Katieさんのご厚意により、スタッフの方からご提供いただきました。この機会にぜひ、MultiLingualを読んでみてください。MultiLingualのウェブページはこちらになります:
http://www.multilingual.com/

 
 試読の方法:
 www.multilingual.com/subscribe
 にアクセスし、ページ中央のSubscribe linkをクリックしていただきます。
 “digital”を選択し、コードDHON14を入力して下さい。
 Nextボタンで進み、氏名や電話番号等の情報を登録すれば完了です。(電話等でのコンタクト等はなく、メールで案内が来るだけなのでご安心ください)
 
準備に時間がかかったため、最新号ではなく、2014年3月号からのスタートとなります。

 
       
 
 2014年3月号の特集は、Region Focus: Western Europe、つまり西部ヨーロッパ地域の特集です。
 冒頭に、編集長のKatie Botkinさんの編集後記があり、彼女自身の、アメリカ育ちながらヨーロッパに興味を持ち影響を受けてきた生い立ちが綴られ、併せて、各執筆者のことが敬意をこめて書かれています。編集長としての、特集内容に対する強い関心と、執筆担当者への敬意が表れ、個人的には、この部分ですでに感銘を受けました。
 本号では、ヨーロッパの翻訳に様々な立場(人材、翻訳者、教育関係、ローカライゼーション等)で関わってきた人たちが、それぞれの立場から多彩な記事を展開しています。特集記事ではありませんが、Googleのlanguage specialistの方の記事も非常に示唆に富んだものです。
 全ての記事が素晴らしいのですが、今回ご紹介するものとして、ヨーロッパの言語政策を、少数言語への取り組みを含めて説明している、最も内容の幅広い記事を選ばせていただきました。
 
MultiLingual3月号
<今月のピックアップ>
西部ヨーロッパの新しい翻訳共同体
(Western Europe’s new translation community
- Karen Netto and Nelia Fahloun
(原文20~25ページ)
 
 冒頭の言葉:
『西ヨーロッパにおける翻訳産業は、再開発されていて、2014年には、プロの翻訳者と通訳者の間にかつてなく、もっと大きな共同体意識(community feel)がある。』
 
 EU憲章の翻訳については、翻訳されたすべての言語が法的に等しい価値を有する。
 欧州委員会では、裁判の手続きで通訳と翻訳を受ける権利(自分たちの言葉で裁判を受けることができる権利)が保障され、司法通訳が重要なものである。
 具体的に、英国、アイルランド、フランス、ドイツの四か国を取り上げて、EUの状況・施策と関連させながら、西部ヨーロッパの翻訳環境を見せてくれる。
 「少数言語に関するヨーロッパ憲章」が設けられているが、少数言語に対する取り組みも忘れてはならない。
 さらに、ISOについても言及している。ヨーロッパでは、翻訳・通訳に関するISOの策定準備作業が開始されるずいぶん前から、ヨーロッパではEN15038という規格が存在する。ISOのTC37に参加している英国の委員会は、ISOが採用された際に対応する心構えを示すなど、フリーランス翻訳者に気を遣っている。
 この記事の素晴らしさは、西部ヨーロッパの翻訳への取り組みについて、EUによる支援制度などのポジティブな側面、少数言語というEUに典型的な課題、さらにISOという新しい流れにどのように対応するかという新しい課題という、信じられないような膨大な内容を、読者に分かりやすく示してくれているところにあると思う。翻訳という切り口で、「EUの理想」「EUの良心」を、(執筆者の方たちも無意識のうちに)伝える内容になっている。少なくとも、自分にはそのように読み取れた。
 この記事を読めば、EUへの理解が深まるし、翻訳の教育や政策が発達しているとは言い難い日本にとって、学べることはきっと沢山あるはずである。