真のコミュニケーションで世界を幸せにする

2015/05/08


松元 洋一 株式会社インターブックス 代表取締役
1965年東京生まれ。早稲田大学卒業後の1991年に大学の仲間とともに会社を設立。大学と地域に開かれたグループを目指して、早稲田大学マックユーザーズグループ(WMUG)を立ち上げる。設立当初からマッキントッシュを使って、英語、韓国語、モンゴル語、タイ語、中国語、ポルトガル語、アラビア語などのマルチリンガルに対応したネットワーク環境を作る。幼少に剣道を覚え、学生時代から坐禅(30年)を、40歳から合気道(6年)を続けている。
http://www.interbooks.co.jp/

 
 

 
今年度が会社設立から25年目にあたり、ちょうど四半世紀を迎えることになりました。今回名誉なことに日本翻訳連盟様から執筆のご依頼があり、会社の振り返りにもちょうどいい機会であるので快くお引き受けした次第です。初めに会社の紹介およびビジョンを語らせていただき、次に会社のこれまでの変遷、最後に翻訳業界を目指す方にとってのアドバイスという構成でまとめてみたいと思います。
 
◆情報の送り手と受け手をつなぐ×良質なメディアの創造
まず初めにインターブックスという社名についてですが、『送り手と受け手をつなぐ』という意味のINTERと、『質の高いメディア』の創造を志す気持ちをこめたBOOKSを合成させた造語です。私たちの強みは創立当初から翻訳に加えて、編集「つくる」、出版「情報を発信する」という3つの柱を持っています。雑誌の編集から書籍の編集・出版までライター、校正、校閲、デザイナーなどのプロフェッショナルなスタッフやパートナーを抱えており、それぞれの専門家が、最適なコストパフォーマンスでクオリティの高い作品を創り出します。原稿作成、編集、翻訳、DTP、印刷までワンストップの作業が可能で、そこには創立当初からのマッキントッシュを使った多言語DTP作業と多言語の編集・出版業のノウハウというインターブックスの遺伝子が脈々と引き継がれています。
会社のビジョンは「言葉の壁をなくし、真のコミュニケーションで世界を幸せにする」です。現在、インターネットやソーシャルネットワークが普及して、世界中の人々が身近な存在になりつつありますが、言語が障壁になり自由にコミュニケーションが取れているとは程遠い状況です。「真のコミュニケーション」とは何かと考えてみると、単純に、他の国の言語をほかの国の言語に置き換えるのではなく、相手の国の文化や歴史、環境などさまざまな要素を理解して相手に伝えるということではないかと考えます。私たちは、翻訳・編集・出版という仕事を通して、グローバル時代のビジネスや文化のコミュニケーションのお手伝いをします。さらに、外国語を日本語に翻訳するだけでなく、日本の文化、技術、思想、情報などを海外に発信し、日本と諸外国との架け橋となる存在でありたいと思っています。
 
◆幅広い分野、言語で信頼を得る
 翻訳分野は年々分野が広がっていき、知財特許から金融、法務、国際関係、学術、観光、コミックまで幅広く取り組んでいます。分野が多岐にわたるので品質管理が大変になりますが、パートナー翻訳者も1500名、85ヶ国を超え、さまざまな分野の翻訳に取り組んでもらっています。最近特にご依頼の多いのがインバウンド・観光分野で、やはり2020年のオリンピックに向けて日本全体が訪日外国人の受け入れ態勢に力を入れている気がします。2014年には訪日外国人数も1300万人を超え、免税法が改正され、百貨店やドラッグストア、コンビニエンスストアおよび飲食業界などさまざまな業界で訪日外国人に向けての多言語対応に力を入れています。そんな中、弊社でも多言語の需要に対応するため外国人スタッフの増強や外国人インターン生を積極的に受け入れています。また、新しい取り組みとしてNICT(情報通信研究機構)様、凸版印刷株式会社様への翻訳支援システムのコンサルティングを行い、大規模な翻訳にも対応できる体制も整えました。今後クラウド時代の世界規模の翻訳にどう対応していくか実力が試されています。
 
◆ニッポンの技術のすばらしさを世界に
 一昨年には、これまでの翻訳事業に加え、日本企業の海外特許出願のお手伝いをするべく外国人弁理士による海外特許出願の会社を立ち上げました(バンゼン合同会社:http://www.vanzen.jp)。日本語対応可能な外国人弁理士と外国実務に強い日本人弁理士による協同の翻訳リバイズ作業により、単なる翻訳では伝えきれない、特許審査官にとってわかりやすくかつ特許内容を包括した強い外国語の特許明細書を作成することを目指しています。国内の特許出願はここ数年減少に転じていますが、外国への出願の比率は上がっており、今後はさらに外国出願の重要性は増していくと思われます。企業にとって国際的な知財戦略の強化は失敗できない取り組みですから、特許翻訳を提供する者には、技術知識・法制度理解・言語センス・スピードがより厳しく求められます。以前から特許関係の翻訳案件をお受けすることはよくあったのですが、特に最近は国内の企業が中国など英語以外の国の知財戦略にますます力を入れてきているため、多言語の特許出願にまつわる翻訳案件数も伸びてきています。今や知的財産分野においては世界規模の攻防が始まっており、日本の企業も決して無縁ではありません。グローバル企業は攻防一体の戦略がますます必要となってきます。「特許を武器に、知財戦略に“万全”の備えを――」。これが社名の由来です。ここでも高品質な翻訳が活躍しており、日本企業のグローバル化のお手伝いをしております。
 
◆翻訳業界を目指す方に
 以上述べてきたように、これから翻訳コーディネーターや、翻訳者を目指す方にとって、翻訳業界は今後将来性があり、魅力ある業界であると思います。
 翻訳コーディネーターを目指す方はたいてい語学が好きで翻訳業界を目指してきますが、語学だけでなくコミュニケーション能力がとても要求されます。翻訳者、品質チェッカー、クライアントの間に入って、限られた納期の中で、翻訳者の力量を最大限に引き出し、かつクライアントの要望を的確に反映した納品物に仕上げなければなりません。非常にプレッシャーもかかりますが、大きなプロジェクト等をチームでやり通した時は、世の中の役に立っているという実感が湧いてきて嬉しいものです。特にインターブックスでは、翻訳工程のほかに編集やデザインレイアウトなど、翻訳以外の工程がありますので、出来上がったサイトや印刷物を手にした時の喜びはひとしお です。
 また日本に長い間滞在もしくは永住されている外国人翻訳者によく見受けられるのですが、今現在発信されている現地の外国語ではなく、ご本人が来日してきた当時の外国語を使うという浦島太郎化してしまう現象が見受けられます。新鮮な現地の生の外国語を使いこなすには、日々現地で発信される新しい情報やニュースに対して「この単語やフレーズはどのように訳されるのだろうか」など自分のアンテナを張って常に言葉に対して強い好奇心を持っていることが大切だと思います。また、翻訳者全体に言えることですが、翻訳の品質がいいのは当然ですが、それ以前に「こまめに連絡をいただける」「翻訳にあたっていろいろ資料を探してコメントをわかりやすくつけていただける」「あらかじめ自分の予定を教えてくれる」など、やはりコーディネーターとのコミュニケーションがうまく取れることが翻訳会社と長くお付き合いできるコツだと思います。
最後になりますが、翻訳や翻訳に関連するお仕事というのは、外国語と外国語を結ぶいわゆる異文化コミュニケーションを取り持つお仕事ですから、他の国に対するリスペクトや文化理解が欠かせません。これから翻訳業界を目指す方にとってこれらのアドバイスがお役に立てば幸いです。