中小企業が実現できるCSR

2015/11/06


大里 真理子 株式会社アークコミュニケーションズ 代表取締役
1986年東京大学文学部卒。1992年Kellogg School of Management卒業(MBA)。IBM、
ユニデンを経て(株)アイディーエス設立に参画。2005年アークコミュニケーションズを設立。2013年早稲田大学スポーツ科学研究科修士課程修了。
http://www.arc-c.jp/translation/

 

アークコミュニケーションズでは英語で学べる日本の大学を紹介するポータルサイトのUNIV. IN JAPAN(http://univinjapan.com)を無料で運営したり、実業団のスキーチームを設立し、マイナー競技のトップアスリートが世界で活躍できるよう応援したりしている。
(http://arc-c.jp/ski/about.html)
このような利益を目的としない慈善事業のことをCSR (Corporate Social Responsibility)と誤解して言われることが多いが、CSRの本来の意味は異なる。
CSR―「企業の社会的責任」と訳すのが一般的だ。私たちは人類が今までに経験したことのない様々な問題に直面しており、次世代にこの地球を、この豊かな人間社会を残せるのか、持続可能性(Sustainability)に対する危機感が高まっている。この「持続可能な循環型社会」を実現するために、自社の利益だけでなく、社会全体に与える影響や企業が行うべき社会貢献にも配慮した企業活動を行うという企業のあり方を意味する言葉がCSRだ。様々な社会のニーズや課題を、価値や市場創造に結び付け、企業と市場の相乗的発展を図るものである。(「実用日本語表現辞典、知恵蔵2015」から引用)
CSRに対する意識が近年高くなり、大企業を中心に様々な取り組みが行われている。しかし、日本の99%以上を占める中小企業においては、大企業ほど取り組みが進んでいないのが実情だ。社員30人強ほどのアークコミュニケーションズの取り組みが参考になればと思い、今まで考えてきたこと、実践してきたことをこの機に紹介したい。
 
アークコミュニケーションズCSRの4つの方針
1. 事業を通して社会に貢献すること
Communicate Locally, Market Globally.
アークコミュニケーションズのミッションステートメントだ。
アークコミュニケーションズは、翻訳・通訳やWEBサイト・グラフィックの企画制作などのコミュニケーションサービスを提供している。本質を伝えるコミュニケーションサービスを提供することで、お客様が地球規模でビジネスを行うことを推進する。あらゆる人が、地球上から最適な情報・ソリューションを享受できる社会への一助となるはずだ。地球が抱える問題を地球上の英知を結集して解決するために、私たち翻訳業界が果たす役割は大きい。
お客さまのサービスにおいてはもちろんのこと、自社のサービスにおいてもCommunicate Locally, Market Globallyを実践している。そして自らが健全な成長を続けることで、雇用機会を創出し、税金を払い、社会に貢献するつもりだ。
お客様に付加価値を提供して対価(お金)をいただくこと、つまり本業を推進していくこと。これが一番の社会貢献だ。
 
2. フェアに企業活動を行うこと
事業を推進するうえで、法令や社会ルールを守ることは言うまでもない。また、国籍・性別・個人の信条によって社員やお客様を差別することもしない。世の中に規範が存在し、その規範においてフェアであることは、社会が持続可能であることの大事な条件だ。
アークコミュニケーションズでは創業以来、社外取締役制度を設けている。理由のひとつに、オーナー社長は必ず暴走するので(笑)そのお目付け役が欲しかったことがある。暴走は社外取締役が止めてくれると思うが、万が一フェアでない行為をしたとしても、“非常勤”の社外取締役がそれに気がつくのは容易でない。大事なことは、経営者がこの人は騙せない、騙したくないと思う人を、社外取締役に選ぶことであって(経営者の自制)、社外取締役に正してもらうことではない。
強化すべきは内部の目だろう。そのためには、できるだけ経営をガラス張りにして、社員全員に経営者目線をもってもらうことだと思う。アークコミュニケーションズが月次決算を行い、社員に情報を公開しているのは、そういう気持ちがあるからだ。
しかしながら、多様な価値観が進む現代社会において、何がフェアなのか一口で言うことは難しい。「そもそも何がフェアであることなのか」、から自ら問いかけることが重要だ。そして社会に対する説明責任を果たすことで、自分たちが考えるフェアネスが社会に受け入れられるものかどうかもわかる。
 
3. 社会が抱える課題を私たちが持つノウハウや経験を活用しながら取り組むこと
社会問題の解決はビジネス界だけではできない。様々な組織が関わっていくことが重要だ。アークコミュニケーションズでは、非営利団体の活動を活性化させるために、その事務局機能のお手伝いをしている。
小さな非営利団体はほとんどがボランティアで成り立っている。そのボランティアの力を最大限に活用するために、バックヤード(事務局機能)を強化することに意義があると感じている。本業を通して得られるノウハウは色々あるが、コーディネートすることは強みのひとつ。寄付金集め、同窓会運営、スポーツ団体運営など、できることを協力している。仕事上ではお付き合いすることのない方々との交流が、アークコミュニケーションズのビジネスを考える上で、刺激となっている。
 
4. グローバルに活躍したい人材を発掘・支援すること
Market Globallyを目指しているのは、ビジネスパーソンだけではない。アスリートや学生も、地球規模で自分の可能性を考え、自らの道を切り開こうとしている。そんな彼らに2つの支援を行っている。
1つ目は、マイナー競技のトップアスリートが資金難で競技生活を断念することを食い止めること。スキーチームを作り、新たな支援の担い手として、中小企業・地域社会や個人などと共同で永続的に発展できるモデル作りを目指している。そんな試行錯誤の中、ソチオリンピックで恩田祐一選手が日本代表となった。次に続くのは誰か楽しみだ。
2つ目は、日本と世界の懸け橋となる若者を日本の大学へ呼び込むこと。外国人留学生が増えれば、国内で学ぶ日本人学生も、グローバル化や多様性を享受できることとなる。留学生30万人計画の元、日本には英語で学位が取れるプログラムが増えたが、その存在もあまり知られていない。UNIV. IN JAPANを通して情報発信をすることで、1人でも多くの学生に、日本で学ぶことが選択肢となるよう願っている。
 
 さて、このアークコミュニケーションズCSRの4つの方針を読んで皆さまはどうお感じであろうか?
「なんだ、たかがそれくらいのことか」と思っていただけたら、嬉しい。2,000~3,000社あるといわれる翻訳業界も、会社の規模が小さいところが多いだろう。しかし、世界の国々をつなぐビジネスに関わる翻訳業界が、一致団結してCSRに取り組めば、地球規模の課題解決にも大いに貢献すると信じている。
 早いもので、設立してアークコミュニケーションズも10周年を迎えた。まだサバイヴしていると消息を知らせるために作ったような社外報funNOTEも同じく10周年となった。http://arc-c.jp/funnote/10th/
これからもよろしくお願いします。