変わり行く業界で活躍し続ける翻訳のプロフェッショナル

2016/05/13

請川 博子 株式会社ロゼッタ 取締役

大手語学教育企業での勤務を経て、1996年株式会社グローヴァへ入社。2004年同社HRカンパニー執行社長に就任。2006年に親会社の株式会社ロゼッタへ参画して以降はマーケティング室室長、法人営業部営業企画室室長を歴任し、中長期的なビジョンで翻訳事業に携わる。2016年現在も取締役GLOZE事業部長として多数の案件制作に関わり、これまでに発注した翻訳者は千人規模にのぼる。
https://www.rozetta.jp/​
 


2004年に設立し、人間翻訳と機械翻訳双方で翻訳事業を手がけてきた弊社にとって、昨年度は大きな節目を迎える年となりました。
2015年11月には、国内の翻訳会社として史上2社目となる株式上場を達成。
さらに、2016年2月には専門分野の翻訳をサポートするサイト「産業翻訳だよ!全員集合」をオープンいたしました。
これは、2000以上の専門分野別に最適化できる「究極の辞書」、翻訳メモリとスコア表示機能で翻訳を効率化させる「究極Z」などの翻訳ツールを共有するためのサイトです。
今後は、上記のツールに加え翻訳者の方々専用のSNSとして機能を充実させていくことを予定しています。
 
さて、近年グローバル化社会なる言葉が死語になりつつあるほど、海外との関わりは密接で当たり前のものとなりました。当然、海外と関わりを持つ上で障害となるのが言語の壁であり、翻訳の需要は日々拡大しています。
そして、近年機械翻訳の成長には目覚しいものがあり、その精度は人間の手による翻訳に迫りつつあります。機械翻訳の台頭により、将来の翻訳業界がどういった環境になるか不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今後さらなる転換期を迎える翻訳業界において、真に活躍する翻訳のプロフェッショナルとはどういった存在か、様々な翻訳者の方と触れ合ってきた私の視点から考察します。
 
専門分野翻訳の現状
2008年のリーマンショックを契機に、翻訳業界は一つの変遷を迎えました。クライアントは短納期で成果物を求めるようになり、クオリティについては妥協する傾向が強まったのです。他方で翻訳の需要は高まり、翻訳会社もどんどん増え、価格競争は激化し、結果として「安くて早い」翻訳が主流になりました。
クライアントが「もっと安く発注したい」と言えば、多くの場合翻訳者への報酬を下げざるを得ず、実際に収入が低下した翻訳者も当時は少なくなかったと思います。
そうした状況を問題視した弊社では、機械翻訳や翻訳ツールによる業務の効率化を進め、企業側のニーズを満たしつつ翻訳者の負担を軽減できるよう取り組むことで事業の拡大に成功しました。
現在では医薬系を中心に技術や環境分野のメーカー、また東京五輪に期待する観光分野の企業から多くの案件を頂いています。
 
弊社に依頼される案件はほとんどが英語翻訳で、うち日英が約65%、英日が35%の割合です。また、中国語翻訳への需要も着実に伸びており、日中、中日だけでなく英語から中国語への翻訳依頼も増加傾向にあります。
 
ロゼッタで活躍する「日本人」日英翻訳者
さて、成長が続く翻訳業界ですが、翻訳者のリソースは間に合っていません。多くの翻訳会社が優秀な翻訳者の獲得に苦戦しているのが実情です。弊社も例外ではなく、現在もたくさんの翻訳者の方々に支えていただいておりますが、新しい翻訳者は常に募集しています。
ただし、弊社で求めているのは翻訳のプロフェッショナルであり、発注のプロセスへ至るまでには厳格な審査と基準を設けています。
 
大前提として、翻訳を行うのに十分な語学力を持っているか。英語を始めとした諸外国の言語に対しての理解はもちろん、弊社では日本語の能力も重視しています。
事実、ロゼッタに登録している英語翻訳者の9割が日本人で、日英翻訳であっても大半の場合日本人翻訳者を起用します。
なぜなら、弊社のメインクライアントである医療系や技術系メーカーから依頼される文書は非常に専門性が高く、翻訳者には難解な日本語を正確に読み解く能力が求められるからです。その他の場合でも、発注する翻訳者がターゲット言語のネイティブであるかどうかはほとんど考慮していません。文書のインプット、アウトプットに十分な語学力を有しているか否かで判断しています。
 
加えて、医療や技術、環境などの専門分野に対して深い造詣を持っている方は大変貴重です。
たとえば、医療とビジネスなど異なる分野では使われる単語が同じでも意味がまったく異なるケースが頻出します。「power」という単語一つとっても、あらゆる訳が存在するのです。
さらに、分野や業界によってあらゆる専門用語が使われます。その業界では広く知られている言葉かもしれませんし、最新の固有名詞が登場することも珍しくありません。
それらを正確に訳せるかどうかは、語学力に加えて業界への知識をどれほど持ち合わせているかで決まります。
メーカーでの勤務経験がある方や、学生時代に対象の分野を専攻していた経験をお持ちの方は、弊社のような専門分野翻訳では即戦力として活躍できるかもしれません。
経験がなくとも、あらゆる業界・分野に対して常にアンテナを張り、知識に対して貪欲でいる翻訳者は仕事の幅も大きく広がることでしょう。
 
翻訳のプロフェッショナルであるためのシンプルな条件
翻訳のプロフェッショナルであるためには、上記の資質だけではまだ足りません。
語学力や知識などのスキルとはまた異なる能力を求められます。
 
まず、コミュニケーションをきちんと取れるかどうかは弊社が重要視している要素です。
案件の依頼から納品まで、全てweb上やメール、電話のやり取りで完結します。顔を合わすことがない以上、密にコミュニケーションを取れるか、こちらからの問合せに対してすぐにレスポンスがあるかといった点は、イコールその翻訳者への信頼に繋がるのです。
また、クライアントやこちらの意図を正確に読み取れる、エラーが発生した際に迅速な報告・相談ができる翻訳者は非常に重宝します。
 
そして、自身の仕事に最後まで責任を持てるか。これは、多くの翻訳者に意識していただきたいポイントです。
まれにわからない文章をそのままにしたり、複数の訳文を納品したりされる方がいます。翻訳のプロフェッショナルへ依頼しているのですから、どの訳文が適しているかどうか最後まで責任を持って判断していただくのが理想です。
もちろん、わからないことがあれば事前にご相談いただければ社内で対応できる場合もあります。
 
そうした点も踏まえ、最善の形で納品まで至れるよう全力を尽くすことで、はじめて翻訳のプロフェッショナルと呼べるでしょう。
 
変化する業界でも変わらず活躍するプロフェッショナル
弊社で開発している自動翻訳ツール「熟考」は、人間翻訳と比べ6割~7割程度の翻訳精度にとどまっています。しかし、2025年には95%まで精度を高める計画を立てており、目標実現のためにロゼッタ全体で注力している段階です。
 
精度95%の翻訳ツールが実現すれば、数百字程度の文書や社内向けのテキストなら機械翻訳とポストエディットだけで事足りるでしょう。このまま行くと、翻訳者への1件あたりの報酬は今より下がることが予想されます。
一方、外部に発信するパンフレットや広告は、100%の翻訳プラス読み手のことを考えたわかりやすく適切な翻訳が必要です。どれだけ機械が優秀になっても、人間による翻訳の需要がなくなることはありません。
報酬面においても、進化した翻訳ツールを使いこなすことで翻訳者の仕事はより効率的なものに変わります。業務をスリム化させ、より多くの案件を引き受けられるようになれば全体的な翻訳者の報酬は変わらないと思います。
 
時代は変わり、翻訳業界の在り方も変化しますが、翻訳のプロフェッショナルである条件は時代を問わず普遍的なものです。
向上心を持ってスキルを高め、翻訳会社と信頼関係を築き、変わり行く環境に適応できる。そんな翻訳のプロフェッショナルを、ロゼッタはいつでも歓迎いたします。