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6-3 需要急増:上場企業の開示情報英訳の実態と今後の動向~チャンスかリスクか? 翻訳者と翻訳会社が今、やるべきこと~

2015/01/16

松本 智子 Matsumoto Satoko

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日本財務翻訳株式会社 代表取締役社長
大学卒業後、半導体メーカー、食品商社、流通業界を経て、1992年よりIR/ディスクロージャー業界へ。2006年12月の日本財務翻訳株式会社(財翻)設立時から参画し、2013年4月より現職。
上場企業に対して英文開示の進め方、文書作成についてのソリューションを提供しつつ、正しい英文開示文書の効率的な作成方法の確立に努めている。財翻は英文開示文書の作成では国内でNo.1のシェアを獲得。現在、IR・開示分野における翻訳についてセミナーを開催するなど、企業と翻訳者・翻訳会社に対して啓蒙活動を展開中。

報告者:二木 夢子(英日・日英翻訳者)

 



企業の開示文書の英訳は大きなニーズがあり、今後も需要拡大が見込まれるが、きちんと対応できる翻訳者、翻訳会社はきわめて少なく、専門業者として危機感がある。ぜひこの機会に、日本企業の英文での開示情報発信を支える基盤強化に加わってもらいたい。
講演のアジェンダと内容の概略は以下のとおり。

1. 開示情報とは―具体的な文書とその翻訳サンプル

日本語で提出が義務づけられている主な制度開示書類には、決算短信、株主総会招集通知、有価証券報告書がある。それぞれベースとなる法律や対象期間が異なるため、異なったノウハウが必要となる。講演では各形式の英訳サンプルが示された。

2. 大手企業には必ずニーズあり―英文開示の実態

2013年度のデータによれば、東証1部上場企業1,747社中、英文招集通知を開示している企業は399社、英文決算短信を開示している企業は821社にのぼる。また外国人持株比率は現在28%で、英語での情報開示を求める圧力が強まっている。

3. 開示情報の翻訳はルールだらけ―知らないと土俵に上がれない

開示情報の翻訳では、会計基準の頻繁な変更に対応し、日本基準、米国基準、IFRS(国際財務報告基準国際会計基準)の用語を使い分け、企業独自の用語も踏襲する必要がある。一次翻訳を納品して終わりというケースは稀なので、顧客とのコミュニケーションが重要となる。

4. 必ず絡むインサイダー情報―セキュリティ対策が必須

開示情報はインサイダー情報(企業の株価に影響を与える情報)に該当するため、取り扱いには高い倫理観が求められる。財翻では社外委託先を含め、すべての情報入手者を記録している。また定期的にインサイダー研修を実施している。セキュリティ対策は手間がかかるが、顧客の信頼につながる。

5. 需要急増の背景―好景気とIFRS

需要急増が見込まれる2つの要素には、好景気とIFRS導入がある。英訳開示の潜在的な需要はあるが、実際に増えるのは業績のよい時のみである。IFRSの導入は手間、人手、予算がかかるため35社にとどまっているが、他社の動きに合わせて今後数年以内に急拡大するものと考えられる。

6. 翻訳者/翻訳会社に今、求められていることは?

財務・会計分野の翻訳者に求められる資質は、知識力、対応力、調査力。翻訳者とは、フィードバックや社内での作業を通じて信頼関係を築いていくことが多い。優秀な人を探して囲えば済む分野ではなく、翻訳会社には翻訳者、チェッカー、コーディネーターを育てなければならないことを認識してもらいたい。

7. 業界地図はどう変わるか―チャンスでもあり、リスクにもなる

IFRSの導入により、従来の英文財務諸表作成が有価証券報告書の英訳に切り替わり、会計士や監査法人の仕事から翻訳者の仕事になることが予想される。需要の急増はチャンスだが、一方で大半の企業は3月決算なので業務が5~6月に集中するリスクが大きい。