4-3 医薬品特許無効審判・侵害訴訟に伴う翻訳業務

2015/01/16

丸岡英明 Hideaki Maruoka

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翻訳・通訳者。M&Wランゲージ・ソリューションズ代表取締役。英⇔日、中→日、中→英翻訳、英⇔日、中⇔日通訳。豪NAATI、米ATA認定資格保有。専門は特許と医薬。慶應義塾大学法学部卒。2007年まで10年間台湾に滞在。液晶部品メーカーに勤務した後、翻訳者・通訳者として独立。その後、豪クイーンズランド大学にて日本語通訳・翻訳修士(MAJIT)を取得。2013年2月にM&Wランゲージ・ソリューションズ設立。豪クイーンズランド州ブリズベン市在住。日本翻訳者教会(JAT)、豪州通訳者翻訳者協会(AUSIT)会員。

報告者:藤村希早

 



医薬品特許無効審判・侵害訴訟は、後発品企業と先発品企業の間で起きるケースが多く、関連書類の翻訳ニーズが増加している。このような翻訳業務では特許・法務・医薬の高度な知識と経験が必要である。
本セッションでは、実際の判決文を用いた練習問題を交えながら、知的財産、新薬開発、国際出願、クレームの特徴、特許要件についての基礎知識が解説された。

特許とは、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励」し、「産業の発達に寄与する」ことを目的としている。発明の利用を図るため、特許を出願した発明は必ず開示される。その見返りとして、一定の期間、独占排他権が認められる。
発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」であり、化学物質や微生物は発明として認められるが、自然法則自体そのものは発明として認められない。2013年、米国最高裁は、遺伝子配列は発明ではなく、遺伝子自体に対する特許は無効であるという判決を下した。

新薬開発には、10数年の時間と数百億円のコストが必要であるが、成功確率はわずか数千分の1である。医薬品に対する特許期間は20年~25年であるため、製薬会社は開発段階が進むごとに少しずつ内容を変えて、物質特許、製剤特許、製法特許などを出願し、可能な限り独占排他権の有効期間を延ばそうとする。

国際出願には、パリ条約に基づくパリルートと、特許協力条約に基づくPCTルートがある。多くの国に出願したい場合、PCTルートが利用されることが多い。国際出願には、要約書と図面のほか、明細書と、重要な権利書である特許請求の範囲が必要である。特許請求の範囲には、明細書に記載のない内容を入れてはいけない。

特許請求の範囲は、前提部分、移行部分、本体部分に分けられる。移行部分のcomprisingは、「これ以外のものを含む可能性がある」と解釈する国(米国)と、「これ以外のものはない」と解釈する国(豪州)があり、注意が必要である。

特許要件には、新規性、進歩性、産業上利用可能性などがある。産業上利用可能性の「産業」には、農業、漁業なども含まれるが、日本や欧州では「人間(欧州は動物も)を手術、治療又は診断する方法(医療行為)」は「産業上利用することができる発明」に該当しない。米国では医療行為にも特許が認められるが、他の病院・医者などに権利が侵害されても訴訟を起こせない。