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3-3 スモール&クイック翻訳への取り組み~人力翻訳と機械翻訳でのアプローチについて~

2015/01/16

古河 師武 Furukawa Osamu

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YAMAGATA INTECH
1996年に渡米し、Second BAを取得した後、6年間現地の会社に勤務。2005年にCalifornia State University, Long BeachでMBAを取得し2008年に帰国。外資系翻訳会社を経て2013年4月より現職。従来の取説翻訳だけでなく、マーケティング資料、カタログ、SNS・ブログ、ウェブコンテンツ、UIなど幅広い分野の翻訳に対してMTやスモール翻訳含めた様々なソリューションの提案を推進している。

報告者:鎌田奈緒美

 



マニュアルの制作・翻訳・印刷を手掛けるYAMAGATAグループの制作部隊として1983年に設立されたのがYAMAGATA INTECHである。世界各地10か国にあるYAMAGATAグループの拠点は、それぞれ多言語のハブとしてはもちろん、独自ツール開発や印刷工場としての機能を持っている。

「JTFの翻訳祭でスピーカーとして登壇する」と顧客に話したら、「実際に悩みを乗り越えていった経験談を聞きたい人が多いのでは」とのことだった。そこで、今回のセミナーでは、独自ツールの開発経緯と成果を中心に紹介する。

まずはIchigoである。名称は果物のイチゴと「一語」をかけている。翻訳現場の悩みとして、「翻訳中の元原稿が突然改版・追記される」「急ぎの多言語展開に無駄な間接作業が発生する」があった。1~2センテンスくらい数時間でできてほしいという顧客からの期待に応えるため、Ichigoではテクニカルライターから直接翻訳者のプールに依頼する特別なワークフローを確立した。発注者は作業経過を3画面構成でリアルタイムに把握でき、翻訳者は指示をテキストや画像で簡潔に受けることで即座に作業に着手でき、お互いにとって効率の良いシステムとなっている。なお、稀に翻訳者プールに仕事を依頼しても誰も引き受けてくれない場合は、コーディネーターから直接確認している。結果として、時差の関係もあるが、24時間以内(平均3時間)での納品を実現できている。

次にY-MTSである。MTエンジンのタイプには主に2種類あり、RBMTでは用語を抜き出して登録していく。たとえば主語、SVOやSVCのような文型は入っているが、細かい言い回しである「車」「車両」などは対応しづらい。それに対して、SMTではバイリンガルファイルから対訳を入れていく。その際、顧客の企業秘密が登録されてしまわないよう入力時には1語ずつ確認し、一般的な業界用語のみ登録している。Y-MTSではRBMTのエンジンを使用している。Google翻訳と似たインターフェースで馴染みやすいが、自動車用語、技術用語、社内用語など、カスタマイズされたエンジンを選べるようになっているのが特色である。たとえば、「2色ペラの社内資料の見積もり、最終承認を得た。五月雨で納品いたします。」がGoogle翻訳で“two colors Pella”、“early summer rain”と妙な訳を返してくるのに対して、Y-MTSのカスタマイズされた社内用語エンジンなら“2 color fliers” “The one by one we deliver”と意に沿った訳を返せる。

RBMTとSMTにはそれぞれ長所と短所がある。14言語しか対応できないがアウトプットをコントロールしやすいのがRBMTである。対訳データをのべつまくなしに登録するのではなく、自社ノウハウでコントロールしている。それ以外の言語にも対応できるが毎回アウトプットが異なるのがSMTである。対訳データを増やしていけば精度は向上するが、動作が見えない。言語の組み合わせや翻訳条件に応じて方式を選択している。

新規・膨大な翻訳量に対して即時性が求められるときこそ、機械翻訳が強みを発揮すると考えている。顧客が自らスモール翻訳を手掛けるようになるかもしれないと期待が高まっている。