3-2 アジャイル開発により変化するローカリゼーション現場

2015/01/16

パネリスト:

竹尾 晋 Takeo Shin

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2000年 ライオンブリッジジャパン株式会社入社。
プロジェクトマネージャとしてIT製品ローカリゼーションを中心に管理。
2011年よりビジネスユニットマネージャとして、多岐にわたるお客様のローカリゼーションプロジェクトをサポート。

松本 有香 Matsumoto Yuka

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2009年 ライオンブリッジジャパン株式会社入社。ランゲージリード(言語品質管理者)として、各種ソフトウェアのマニュアルやUIプロジェクトの和訳ならびに多言語品質管理を担当。

梅田 智弘 Umeda Tomohiro

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2006年(株)テクノ・プロ・ジャパン入社。途中、フリーランスの期間を挟みつつ、ITを中心とする翻訳、レビュー、プロジェクト管理、人材育成などに従事。
現在はフリーランス時代の経験も活かし、発注側、受注側双方が作業しやすい環境を構築しつつ、各種プロジェクトをサポート。

モデレーター:

今川 佳子 Imagawa Keiko

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外資系翻訳会社の勤務を経て1998年ライオンブリッジジャパン株式会社入社。プロジェクトマネージメント、オペレーションマネージメント職を経験。2006年より言語品質管理を担うランゲージグループを統括。

報告者:鎌田奈緒美

 



ローカリゼーション現場の昨今の少量・短納期の激化は、ソフトウェアメーカー側の開発形態の変化が一因である。最近ではソフトウェアのボックスリリースがほとんどオンラインでのリリースに取って代わられている。リリースサイクルも大幅に短くなり、ひと仕事終わってもすぐ次のリリースの準備と息つく間もない。製品のリリースがずれることによる機会損失は計り知れないからである。また、SNSやアプリのアジャイル翻訳も増えている。

アジャイル開発による現場への影響は3つ考えられる。

まず、少量案件の増加が挙げられる。ハンドオフ1回当たりの翻訳ボリュームは、ここ数年で明らかに減少傾向にある。翻訳ワード数が減っても管理業務の負荷は変わらないため、収益の確保が難しくなっている。翻訳にあてる時間をできるだけ多く確保するため、翻訳の前後処理の効率化と指示書・参照資料類の最適化が不可欠になってきている。

次に、コーディネーター業務におけるマルチタスク化、世界各地に散らばる顧客やチームとの協業による長時間化が挙げられる。アジャイルの特色ともいえる突発的な依頼への対応や、早朝や深夜の欧米企業との電話会議対応も珍しいことではない。海外の案件にアジャイルで対応するプロジェクトマネージャーの疲弊を防ぐため、翻訳会社では勤務時間シフト制を導入するなど各社工夫をしている。

3つ目に、対お客様・翻訳会社内・対翻訳者間のコミュニケーションの効率化が挙げられる。日本国内でのコミュニケーションにおいては日本特有のつながりを重視する文化のすべてを排除することはできないが、自動化の進む欧米企業に見習うべき部分は多い。

ガラパゴスになりがちな日本が世界に足並みを揃えていくには、経営や開発手法といった根本から変えていく必要がある。翻訳ファイル形式一つを取っても、欧米企業では管理、改訂のしやすいXML形式が主流であるのに対して、日本企業では複数シートから成るExcelファイルや、特定環境でないと動かないマクロ、日本語の指示と社内コメントに埋もれた翻訳ファイルがまだまだ主流だ。翻訳箇所を特定するだけでひと仕事という状況をまずはお客様側も認識しなければならない。

他にも、欧米は自動化・機械化ありきで、QCDのどれを優先するか決断したらハードランディングで何とかする傾向がある。対する日本は苦しみ抜いた結果、人事異動などで反省点による改善要求が活かされない。計画通りにやることには長けているので、ツールを取り入れて可視化していけばよいのではないか。
最後に、翻訳者の皆さんには、柔軟性とチャレンジ精神を持ち、最新動向をウォッチしてほしい。今や業務の依頼はスマートフォンのタスクプッシュ通知も一般的となっているため、少なくともスマートフォンは持っているべきではないか。翻訳作業を超えて、プロジェクトを共に運営していくという意識を持ち、スペシャリストでありジェネラリストであることを期待する。