2-3 翻訳事業のグローバル化 ~中国の大学で翻訳人材を育成する

2015/01/16

パネリスト:

阿部淳一 Abe Junichi

201501141553_1-130x0.jpg
株式会社エイブス 代表取締役
雅訳諮詢(大連)有限公司 副董事長

李東偉 Ri Toi

201501141553_2-130x0.jpg
東日テック株式会社 代表取締役
雅訳諮詢(大連)有限公司 董事兼総経理

冨田修一 Tomita Shuichi

201501141553_3-130x0.jpg
株式会社知財コーポレーション 専務取締役
雅訳諮詢(大連)有限公司 董事長

モデレーター:

浜口宗武 Hamaguchi Munetake

201501141553_4.jpg
株式会社知財コーポレーション 代表取締役
雅訳諮詢(大連)有限公司 監事

報告者:岸本寛大

 



2012年、四つの企業の共同出資によって雅訳諮詢という会社が生まれた。大連を拠点とする雅訳諮詢は、グローバル化が進む翻訳産業の中で日本の企業としてどのように向き合っていくべきか、その模索の末に設立された会社である。日本翻訳産業の新たな可能性を切り開こうと日々奮闘する雅訳諮詢、このセッションではその取り組みについて紹介した。

第一部:浜口氏によるプレゼンテーション

日本・中国翻訳産業におけるそれぞれの歴史と現状を紹介した上で、今後の将来について次のような結論が出された。

中国は世界の翻訳産業の中心になる

その理由は以下の通りである。
・産業経済が伸びる所に翻訳需要は集まる
・中国の産業形態の移行

 -ものを安くつくる段階から科学技術を独自発展させていく、サービス産業を起こしていく段階へ

・英語に次ぐ国際言語としての中国語のプレゼンスの高まり
・中国における国際人材の育成

- MTI制度 (Master of Translation & Interpretation)
-大学における理系文系の相互教育


この結論のもとに、知財コーポレーションをはじめとする四社は雅訳諮詢を設立したのである。

第二部:登壇者によるパネルディスカッション

大連における雅訳諮詢の取り組みを様々な切り口から考察した。

翻訳マーケットとしての中国

近年中国では翻訳会社が急激に増加している。また多くの日系・欧米系のメーカーが中国をターゲットにしていることも見てとることができる。中国では賃金や物価の上昇に伴いものづくりの拠点としてはメリットが薄くなっているが、その反面消費マーケットは拡大している。そのため今後は世界のサービス業の進出が活発化するであろう。現状では中国企業からの受注は単価の面で難しいものの、中国は翻訳マーケットとして非常に魅力的であると言えよう。

翻訳を提供するリソースとしての中国

中国では毎年約700万人の若者が大学を卒業し、社会へと輩出される。彼らは皆小学3年生から外国語を学んでいるため、即戦力とはならないものの将来翻訳者になることのできる素質を十分に備えている。一方でリソースとして、翻訳をすでに現業としているフリーランスに依頼をすることはリスクが高い。翻訳産業において初期段階の中国から、日本人が考える翻訳品質、つまり世界に通用するレベルの翻訳を得ることが非常に難しいためである。

現地での人材育成

中国の翻訳リソースとして既存の翻訳者に期待することは難しい。そこで雅訳諮詢が着想したのが、現地大学との協力による人材育成である。雅訳諮詢は現在、大連外国語大学・延辺大学の二校と人材開発・獲得のためのコラボレーションを行っている。大連外国語大学では修士課程の選択科目に特許翻訳の講座を開設。また延辺大学ではインターンを実施し、実際に3名の学生を新入社員として雅訳諮詢に迎え入れることとなった。人材教育をすぐにビジネスに結びつけることは難しいが、この「人材」こそが中国での事業を成功させるための重要なカギとなるだろう。