6-2 英日・日英特許翻訳者の入口とその一歩先

2016/01/15

芥川 伸一  Akutagawa Shin-ichi

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株式会社サン・フレアの翻訳検定試験(TQE)合格後、プロ翻訳者養成を目的とした同社研修システムでの特許翻訳の専門的なトレーニングを経て、特許翻訳者として主に電機分野の特許明細書の英日翻訳を開始。2005年株式会社サン・フレアに入社。社内の品質管理担当として、約10年にわたり主に電機分野の特許翻訳チェックに従事。

報告者:山口 政隆(化学情報協会)

 



主に特許翻訳者を目指す人々向けに、特許明細書等の特許関連文書の翻訳(主に英日・日英)における実務的ノウハウや心構えが具体的に解説された。トライアル対策、翻訳会社との望ましい関わり方も、翻訳会社社員の声を交え丁寧に紹介された。特許翻訳者を目指す人々、現役の特許翻訳者、特許以外の翻訳者の参加があり、関心の高さが伺えた。

特許翻訳は安定した需要

米国特許商標庁(USPTO)への日本人による特許出願、日本の特許庁(JPO)への外国人による特許出願について、出願数はともにここ数年安定している。特許翻訳ニーズも引き続き高い需要が続くと言える。技術分野別では、国内出願の場合、特に電気電子、音響映像技術、光学機器分野の出願件数が多く、海外への出願もそれに比例している。

特許明細書でよく使われる表現

  • 請求項:英文請求項では、「said」は the と同じ意味で使われることが多い。和訳する場合は、英文との語順の違いに注意して翻訳する。
  • 「may」「can」は何らかの意味や意図を持つことが多いので、訳出した方がよい。
  • 「illustrate」は多くの場合単に「show」の意味で使われる。
  • 和訳:複合名詞についた形容詞をうまく訳すとよい翻訳となる。「effective pressure plate thickness」は ○「圧力板の有効厚さ」△「有効な圧力板の厚さ」
  • 英訳:文脈に応じた「課題」の訳し方。「..を本発明の課題とする」の場合は「problem」でなく「objective」や「object」が望ましい。 

対訳の自作手順

対訳作成は、翻訳学習、特に特許明細書の定型表現を覚えるのに有用である。同じ公開番号を用いてJ-PlatPatとEspacenetで検索し、同じ公報の日本語と英語を取得、Wordの表に貼り付けて対訳集を自作する手順が紹介された。以下の注意点も合わせて示された。

  • 日本語で作成される特許明細書の表現は、必ずしも和訳で推奨される表現とは限らない。

  • 非英語(独語、仏語など)から英語に翻訳された特許明細書の表現には、元言語の影響を受けたものが含まれている場合がある。

翻訳トライアル対策

実務上のニーズはさまざまで、多角的な視点を養う必要がある。自習の方法として、翻訳の過去問、標準解答が無料で閲覧可能である「知財翻訳検定」を利用するのは有効である。

翻訳会社社員の声「翻訳者に求めるもの」

訳抜け等のない高品質な翻訳が重視されるが、翻訳依頼する実案件の中には、単語の訳し分けや訳文のスタイル等についてさまざまな翻訳指示が含まれることもある。依頼内容に応じた柔軟な対応が可能な翻訳者が望ましい。

質疑応答(抜粋)

Q「CATツール、機械翻訳は使えるか、使えないか」
A「翻訳者により“使える/使えない”の声は異なる。使用する人に依存するというのが正直なところ」
Q「特許翻訳者を目指すには、どんなキャリアがあると良いか」
A「文系/理系はあまり関係ない。校正経験は実案件に触れるメリットがあり有利と思われる」