3-1 翻訳会社が語るISO 17100認証取得の体験談

2016/01/15

パネリスト:

田嶌 奈々 Tajima Nana

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JTF/ISO規格検討会 翻訳プロジェクトリーダー
株式会社翻訳センターにおいて、2012年から社内作業の標準化や仕組み作りを手がける。ISOの規格策定には、日本の翻訳業界を代表して2012年のマドリッド総会から参加してきた。TC37 SC5国内委員。

藤井 宏子 Fujii Hiroko

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株式会社アビリティ・インタービジネス・ソリューションズの東京支店にて、営業を担当。昨年末からは業務効率化や品質向上をテーマとした社内ワーキンググループの活動にも従事している。ISO規格検討会へは2014年7月から参加。

山下 隆宣 Yamashita Takanobu

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一般財団法人日本規格協会にて、マネジメントシステム審査業務に従事している。品質マネジメントシステム(ISO9001)、環境マネジメントシステム(ISO14001)、情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC27001)では主任審査員の職責を遂行。
 
モデレーター:

森口 功造 Moriguchi Kozo

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株式会社川村インターナショナルにて、品質管理および制作業務を経験した後、業務全般の統括として社内管理に携わっている。ISOの規格策定には、JTFのISO検討会発足時から参加し、当検討会では副議長を務める。TC37 SC5国内委員。
 
報告者:久松 紀子(フリーランス翻訳者)
 



 2015年5月1日、国際標準化機構(ISO)から、翻訳サービス提供者に対する要求事項を定めた国際規格「ISO 17100: 2015 Translation services ― Requirements for translation services」が発行された。日本国内でも同日、国際規格の邦訳版が日本規格協会より発行され、9月からは本規格に基づく認証審査の提供が開始された。本セッションでは、認証審査を受審した3企業が、パネルディスカッション形式で審査に関わる情報を語った。

ISO 17100認証サービスの紹介(山下氏)

認証の範囲

言語:英日および日英
分類:A. 金融・経済・法務、B. 医学・医薬、C. 工業・科学技術、D. 特許・知財、E. その他(計5分野。必ずしも全分野を取得する必要はなく、この中から分野ごとに選べる。)
単位:対象となる部署、チーム、案件など、単位ごとの認証でも可。

申し込みから認証取得までの流れ

 申し込みから審査まで約5カ月、実際の審査から認証取得までは2-3カ月。スタートの段階から、登録証が手元に届くまで8-9カ月と思っていただきたい。 

認証取得にかかる費用

 ひとりの審査員で何日くらい審査が必要かを基準とし、翻訳の分野数、従業員数、外部の委託者数(外注翻訳者数)の人数の要素を付加して、審査の工数を計算している。

認証取得後の維持

 認証の有効期間は3年間で、毎年サーベイランスという維持審査が必要となる。有効期間前に更新審査を受審後、認証証を更新する。

パネルディスカッション(田嶌・藤井・山下・森口各氏)

認証取得の目的は?

藤井:官公庁などが、翻訳の見積提出条件として今後ISOの取得を挙げてくる可能性があると思うので、チャンスを逃したくない。
 
田嶌:社内で品質に関わる仕組みの運用を徹底したいという思いもあって、認証取得に踏み切った。
 
森口:ISO 17100は翻訳会社に特化しており、リーズナブルだから取る価値はある。社内の意識が変わるのも大きい。

認証の準備に要した期間は?

田嶌:トライアル審査*の2カ月前に、規格のことを熟知している2名で準備をスタートさせた。1カ月間で従業員への説明会を十回以上開催し、残りの1カ月で急ピッチで準備した。
 
森口:トライアル認証までは2カ月。5名くらいの事務局で、週1回ミーティングを開いた。

(受審のために)変更した運用プロセスは?

森口:セルフチェックの項目について、フローを変えて明確化した。検品+引き渡しというプロセスについても、検品作業をきちんと定義した。
 
藤井:苦情対応について、明確にドキュメント化された仕組みを作成した。

受審の感想は?

藤井:翻訳者の経験年数について、大学の卒業証明書が必要なケースもあるが、発注件数の多い方には説明会を開いて対応をお願いした。
 
田嶌:翻訳者について、稼働している人数の4分の1くらいしか認証に適合していない。この数字をどれだけ上げていくかが今後の課題。
 
 セッションが終了しても活発な質疑応答が交わされ、ISO 17100に対する業界の関心の高さがうかがえた。
 

社名

(株)アビリティ・インタービジネス・ソリューションズ

(株)川村インターナショナル

(株)翻訳センター

従業員

約80名

約38名

約420名

認証取得状況

2015年11月18日
認証取得

2015年9月
トライアル審査終了

2015年11月18日
認証取得

認証分野・言語

全分野(英日・日英)

AからCの3分野(英日・日英)

全分野(英日・日英)

認証範囲

全社(本社+3拠点)

全社(本社+1拠点)

全社(本社+4拠点)

 
*トライアル審査:審査要領を固めるため、翻訳会社の協力を得て行った「お試し審査」。