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3-3 場外乱闘の翻訳支援ツール対決!~そこまで言っていいんですか? ここでしか聞けない業界裏話~

2017/01/20

パネリスト:

加藤 じゅんこ Kato Junko

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Memsource日本窓口。翻訳会社にて導入・サポートツール開発・業務フロー改善等、様々な角度から翻訳支援ツールに携わる。2015年8月よりメムソース公認トレーナー、2016年2月より現職。JTFジャーナルに翻訳支援ツール解説記事連載中。

関根 哲也 Sekine Tetsuya

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インフォパース株式会社 代表取締役社長。OASIS DITA/XLIFF/OAXAL TCメンバー。テンプル大学映画学科を経て帰国。翻訳会社に勤務後独立。現在の会社を設立し、国内外の企業にDITA/XMLプロフェッショナルサービス(「Mr. DITA Japan」)を提供。JDIGを立ち上げ、国内のDITA普及を推進。

マイアット カオリ Myatt Kaori

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Word Connection sarl, Managing Director。memoQ公認トレーナー。慶應大学を経て2016年9月よりポーツマス大学翻訳修士課程在籍。2015年1月に仏で日本語専門の翻訳会社Word Connection sarlを立ち上げる。翌年7月同社日本支社設立。

山本 ゆうじ Yamamoto Yuji

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秋桜舎代表。国際学校UWC英国校、筑波大学を経て、シカゴ大学で修士号を取得。翻訳技能、用語管理など企業向けコンサルティングを行う。AAMT機械翻訳課題調査委員会、UTXチームリーダー。ISO/TC37エキスパート。SDL Trados公認講師。産業日本語研究会委員。

モデレーター:

井口 耕二 Inokuchi Koji

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技術・実務翻訳者。会社勤めの後独立。『スティーブ・ジョブズ I・II』(講談社)などノンフィクション書籍の翻訳でも知られる。高い品質を損なわずに手間のみを削減する方法を模索している。翻訳フォーラム共同主宰。
 

報告者:渡辺 万葉
 



概要

翻訳支援ツール、SDL Trados、memoQ、Memsource、XTM、Swordfishその他を使いこなすパワーユーザー、DITA、用語管理、体系的翻訳の専門家たちが、ざっくばらんにユーザーの立場から翻訳支援ツールの長所と短所を掘り下げる。メーカー側とは異なるユーザーの視点で、今何が問題で、何が求められているのか、今後何が必要になるのかを検討する。ツールを使いこなす意義、多言語の処理に関する課題、用語管理の実際、翻訳品質の確保、体系的翻訳のあり方、機械翻訳との付き合い方、発注企業側でできることを取り上げる。会場からの質問を積極的に受け付け、活気あるセッションとする。

パネルディスカッションのポイント: 

  • CATツールの利点と課題
  • 協働作業とクラウド
  • 技能講習の課題
  • 用語管理と翻訳支援ツールの関係
  • 標準化と翻訳支援ツール
  • 翻訳品質評価と翻訳支援ツール

CATツールの利点と課題

加藤:翻訳支援ツールを使う一番の目的は翻訳メモリーを残すこと。利点というよりも、翻訳メモリーは使うことが当たり前になってきている。過去の翻訳を言語資産として残すか残さないかは大きな違い。他にはQAチェックを行いケアレスミスを減らすこともできる。また、一案件を複数で分担する時に整合性をとることができる。
山本:ツール(翻訳メモリー、用語ツール、機械翻訳)とメソッド(体系的翻訳、プロジェクト管理、品質管理)のバランスを取る必要がある。現在はツールそのものが強調されがちで、それらを正しく活用するメソッド(講習)が疎かにされている。各種ツールの講習をきちんとする必要がある。また日本よりも海外のほうがオンラインコミュニティーが豊富なので、英語である程度は情報収集・自習もできる。体系的翻訳とは、各種ファイル形式の基礎知識に基づき、複数の作業者が、用語集、スタイルガイド、翻訳メモリーを連携させて行う大規模な翻訳を指す。翻訳メモリーツールでは翻訳を共有・再利用でき、用語集もツールで確認・適用すれば、効率よく翻訳できる。
山本:翻訳支援ツール(翻訳メモリー)では、文単位の繰り返しがあれば効率は良いが、繰り返しがなくても十分に役立つ。繰り返しがないときに翻訳メモリーは役に立たないというのは完全な誤りである。例えば外国人の名前をカタカナ表記しなければならないとき、ウェブで発音を調べるには時間が掛かる。翻訳メモリーの中に以前の訳があれば、訳語検索(コンコーダンス検索)をして調べれば、ウェブで調べものを繰り返す必要がなく、不要な時間を掛けずに済む。

協働作業とクラウド

加藤:翻訳支援ツール(CATツール)は単独で進化しているわけではなく、世の中の技術と共に変化している。最初はPCの普及と共に、デスクトップ型のCATツールが普及した。つぎにインターネットが普及すると、社内サーバー版がでてきた。さらに通信速度の高速化・安定化とともに、クラウド型へと変化してきている。今後さらにこの流れが進むだろう。
関根:クラウド型は昔ダウンタイムの課題があった。
Myatt:手元にデータとして残らなければ、意味がない。
関根:クラウド翻訳管理システム(TMS)と連携して今は管理や共同作業におけるリアルタイムのメモリー資産の作業ファイルへの反映や作業者権限のガバナンスの機能追加でフレキシブルになっている。
山本:クラウドでは、編集や翻訳はリアルタイムで反映される利点があるが、編集や翻訳の間違いもリアルタイムで拡散する。

技能講習の課題

Myatt:翻訳ツールは必要である。ツールは翻訳作業環境を大きく改善する。フリーランス、翻訳会社いずれにとっても産業翻訳には翻訳ツール(メーカー・自作、デスクトップ・クラウドを問わず)は収益を出す上で必要不可欠である。一方、機械翻訳は必ずしも必要ではない。
Myatt:昔は原稿用紙を使用していたが、今はツールが発達した。ファイルの形式にせよ、ウェブコンテンツにせよ、ツールが多様化する中でどう管理するかが大事となってきた。翻訳は長いプロセスのひとつである。アプリ、機械を使うのは人によって得手、不得手がある。フリーランスの場合は技能講習を受けたほうが良い。個人ベースで身につけていくしかない。使いこなすか否かはその人次第である。
山本:電子文書の基本技能を使うことは翻訳ツールを学ぶ機会となる。例えば、電子文書の基本技能(Word、Excel、PowerPoint、XML、DTPなど各種ファイル形式の基礎知識)を土台に、スタイルガイド、用語集、翻訳メモリーなどを活用していくべきだ。
加藤:個人的な見解からいえば、ツールはむずかしいトレーニングを通じて習得していくものではなく、もっとわかりやすいものであるべき。昔と違いどんどん新しいものがでてきて世の中の変化は早い。習得にかけるような時間は少なくなっている。例えば携帯アプリなど、ダウンロードして少しさわって直感的に操作できなければ、ユーザーは使うことをあきらめてしまう。ビジネスのツールはそこまででなくとも、やはりツールを提供する側の人間は、より直感的に使いやすいものを提供していくべきではないかと思う。

用語管理と翻訳⽀援ツールの関係

山本:AAMT(アジア太平洋機械翻訳協会)は、構造化用語データであるUTX用語集形式を策定した。原語、訳語等を標準化した形式で作成し、用語を共有・再利用できる。このような構造化用語データの活用例としては用語チェックがある。
井口:Excel形式でデータを蓄積するのは時間も手間もかかる。その負担は大半を翻訳者が負うことになるが、無償で負担させるのはいかがなものか。
山本:UTXは、用語集を作成する最もシンプルな方法である。体系的翻訳とはチームプレイであり、共通形式に基づくUTX用語集を用いることで翻訳発注者、翻訳会社、翻訳者の間で用語集を共有して参照できる。
井口:そもそも用語には統一すべきものとそうでないものとがある。文脈によって訳語が異なるものを収録しないとすれば、収録できるものが限られてくる。逆に文脈によって訳語が異なるものも収録すると、どの訳語を選ぶのかという問題が出てしまう。これも解決しにくい問題である。

標準化と翻訳支援ツール

関根:IoT時代のコンテンツ管理と翻訳管理には標準化とグローバルな分散業務遂行力が求められている現状である。原文コンテンツ標準化の流れとしてはモデルの簡易化→XMLの文法に依存しない→クロスフォーマットのコンテンツ標準である。
特にコンテンツの標準化(DITAなど)は簡易化(DITAからLightweight DITAへ)、形式非依存(XMLオンリーからHTML5、Markdownも包括へ)、アーキテクチャ(マップとトピック単位)は維持するなどの手法がある。
関根:標 準化対応とコミュニケーション機能が高いCAT(TMS)が最近のコミュニケーション手法として有用であるが、TX(Translator Experience)対CX(Customer Experience)を比較するとTranslatorでの負荷が高くなっている。皆の作業がツールの使用により簡単に作業できるように翻訳対象のXLIFFによる標準化と品質や工程の標準化に意識せず対応できるスマートツールが必要である。
井口:TX(Translator Experience)対UX(User Experience)、CX(Customer Experience)となっているが、本来、TXとUXは同じ側のはず、つまり、翻訳者が翻訳に集中できてTXが高まれば、UXも高まるはずだ。UXを高めるためという口実で翻訳者にあれこれ負担させている現状はおかしいと思う。
関根:プロフェッショナルとしてTranslator Experienceを高めていくことが必要である。


質疑応答

1 ツールとして使い易いものとそうでないものがあるのでは?
井口:翻訳そのものの観点からすると、翻訳メモリー系のツールは、現状、文脈がみえにくくて全てNGだ。話の流れを見えにくくするツールは、翻訳の質を引き下げてしまう。
Myatt:確かにそうだが、翻訳メモリーツールにはプレビュー機能がある。
山本:ディスプレイは数万円で購入できるので、大画面のディスプレイ、または複数のディスプレイを使えば、前後の文脈をプレビューして確認するのになんの支障もない。
加藤:翻訳支援ツールを入れることで書式情報はタグとして管理でき、多様なファイル形式に対応できるのでメリットは多い。

2 現在、医学、化学関連の翻訳を行っているが、1つの用語の意味が20個ほどの意味をなす場合、どう用語を統一するのがよいか?
Myatt:memoQ他、ほとんどの翻訳メモリーツールにはレビュー機能やフィルター機能があり、活用する方法がある。