4-C 激変時代を生き抜く経営者の心得

2018/01/19

飯塚 保人 Iizuka Yasundo

(株)未来塾 代表取締役、(一社)経営禅研究会 代表理事
経営コンサルタント、一般社団法人 経営禅研究会 代表理事。
学生時代に会社を設立し17年間で千代田・中央・港区で大手企業3,000社ユーザーを確保。経営者の育成を目的に会社を設立し「ISK経営塾」を主宰。以来、通算100期を超え経営トップの指導を行い、卒業生は5,000人を数える。禅的思考をベースに経営改善に実績を上げる。
東京青年会議所シニア会員・日本橋倶楽部会員、千代田区・紀尾井町ロータリークラブ会長、60歳から乗馬を始め、3年3ヶ月で1,000鞍騎乗達成。
65歳でCDデビューを果たす。
最近は「相馬野馬追祭り」に参戦、「株式会社未来塾」を設立、新曲リリース 神田祭りに愛馬アニーと出陣。
著書に『禅と経営』、『日めくり 禅と経営』など多数


報告者:安藤惣吉(株式会社ウィズウィグ)

 



 先生のご講演は「禅」と「経営」との関係を中心にお話が進められた。時には禅の法話を思わせるものもあった。先生の若いころの経験から現在経営指導しておられる時に感じておられる内容まで、多くの様々な業界での成功者のエピソードも交えて、お話は多岐に渡った。

講演開始前

 開始時刻までしばらくの沈黙があった。登壇されている飯塚先生は全体を見まわし、その眼差しは優しさで満ちていた。

講演開始

 突然、沈黙を破る、昏鍾にも似た司会者の声。講演開始を告げるものであった。司会者による登壇者の紹介の後、飯塚先生が挨拶される。
 非常に和やかな話し方である。

―「経営というのは「多答解」。いろいろな答えある。だから、1+1が2というのは「唯一解」でしょう。1つしかないね、答えが。経営というのはいろいろな答えあるからね。あまりこだわらなくて、思ったことをドンドンやればいいと思います。」

―「例えば、翻訳業界、今までの価値観をある程度抜かないと、新しい価値は入ってこないんですよ。人間オールクリアー、抜くのに時間かかるね……….そういう過去の価値観を抜いていかないと、新しい時代にはついていけないね。」

若いころの活動

―「23歳からOA機器の販売会社をまず17年間やりました…….会社をよくしようというテーマでね、会社を作ったんですけども、やっぱりOA機器の販売だけで会社は良くならない……ISK(飯塚商事株式会社の頭文字)を作りました………ものを売らないで知恵を売ろうということで現在に至っております。」

ヤマト運輸とトヨタ自動車のエピソード

―業界の中には、業界を壊す人、従う人、創る人の3タイプの人がいるが、ヤマト運輸の小倉社長は、業界を壊した人の代表。運送業界は、重くて大きいものを遠くに運ぶのが利益の源泉だった。小倉社長が、小さいものをこまめに運ぶことを事業にすることを考えた。それは、郵便局しか扱えなかったので、彼が国などと戦い、宅急便という近い距離を移動するマーケットを作った。ひとつの業界に革命が起これば、周囲の業界に良い影響が生まれる。
 トヨタは世界シェア25%という数字に胡坐をかいた途端に業績不振になった。そこで、章男社長は、打倒トヨタをスローガンに大胆な経営戦略を実行した。彼は、自動車業界に起きている100年に一遍の変革に対処するために、スバルと組んだり、いろんな自動車メーカーと連携したり、資本提携したり、技術提携したりして、アップテンポについていけるよう事業を改革した。


 さらに、翻訳業界にも触れられ、これから来る大きな変化、変動に対処するために、シェアするとか協力するとか新しい概念を取り入れて考える必要があると説かれた。

AIの話

―オックスフォード大学の論文による予測では、世界の仕事の47%がなくなること、日本の野村総研の予測では、日本の仕事の49%がなくなること。スーパーのレジがオートレジになり、健康管理がスマフォで行われること。技術革新の速さを説かれた。

 では、AI時代に、私たちがなすべきことは、感性に訴える職業に就くことであり、理性から感性への時代の変化の中で、感じる力を養い、右脳を磨き、独創性、独自性、創造性を豊かにする必要がある。

脚下に大光明を放つ、照顧脚下

 先生は語られた。長い目でみると、商売というのは、禅で言うと:

仏道をならうというは自己をならうなり
自己をならうというのは自己を忘るるなり
自己を忘るるというは万法に証せられるなり


 仏道というのは、経営力など何でも良い、そういうものを習うのは、自分自身を習うことであることを意味する。
今の教育は「忘れること」を教育してない。覚えろ、覚えろとしている。
忘れることによって、「万法に証せられる」

 この「万法に証せられる」とは、周りがバックアップしてくれるという意味である。経営者を例にとると、景気、商品、部下、銀行、これらすべてがバックアップしてくれることを意味する。バックアップがうまくいく仕組みを作るのが経営である。売り先は小さいが、地域に対してどれだけお役に立っていくか。マーケットというのはエリアにおけるプロフィットの追求である。経営とは、あるエリア、あるターゲットに対しての利益である。ターゲットを広げれば広げるほど独自性が無くなる。

両忘のエピソード

―「相対の世界から絶対の世界に経営をもっていくこと。および個人もそう。他人をもって代えられないんだから、そういうものをしっかり磨くことによってずいぶん場面が変わってくる。独自性をとにかく磨く。禅の言葉に「両忘(りょうぼう)」という言葉があるんですね、両国の「両」に忘れると書くんです。比べることを忘れるということが大事なのね。人間の悩むっていうのは比べるからです。」

覚明の言葉

 「脚下を照顧せよ」「顧みて良く考える」「看脚下。」「汝自身を知れ」
禅僧「孤峰覚明」の言葉である。
 意味は、足元に用心せよ。足元に気をつけて粗忽な振る舞いのないように。
覚明が中国元に渡ったとき、ある僧が問うた。
 「如何なるか是れ、祖師西来意」― 禅の真髄はどこにあるのか?
 そのとき覚明が答えた。
 「照顧脚下」― 足元を良く見よ。

 私たちは今、その場にいる自分の中にある真実の命、本来の力に気づかずに、自分以外のところに真実があると思っている。
 自分の人生、人の尺度に頼っていてはいけない。思いもかけない、逆境に成った時、人を恨んだり、自分の不幸を嘆いていても何もなりません。
 自分の足元、自分自身をしっかり見つめて、そこにある大光明=“自分にある力”を確認し、再起することが禅の真髄です。
 「修行者は外に求めず、内なる自己の本姓を照見せよ」「外求を戒める」
 意味は、自分の足元を見ずに、他人を批判する人が多い
 「自分を飾らず、ごまかさず、正直に生きる」
 禅の真髄は脚下にあります。

経営と禅

経営の原理原則

  • 経営とは顧客創造と価値創造です。
  • 複雑なことを単純に、単純なことを深く、深いことを楽しく。
  • 継続は力なり、更に継続は宝なり。
  • 営業とは、新規開拓・リピート・紹介です。

まとめ

照顧脚下から学ぶこと

 以下が仕事のポイントです。

  • いま・ここの仕事を創意工夫する。
  • 今日の仕事は今日中に済ます。
  • 机の上を片付ける。
  • 報告・確認・再確認を実践する。
  • いま出来る仕事をきちんとする。
  • 感即動で行動する。

結論

 いま・ここの仕事をきちんとする訓練をしましょう。
 これが照顧脚下の仕事です。

 先生のお話が難しかったのか、質問は次のひとつだけであった。先生のお考えが如実に示されているので、話された通りに記載する。

質問

 ご講演の中で経営とは超矛盾であると話されておりました。私は経営者ではありませんが、働く者として、日ごろ矛盾を感じていることがありまして、例えば、私の友人のある新聞社のキャッチコピーですけど、「読者にやさしい紙面作り」というような形、社訓で頑張っているのですけど、実際話を聞いてみると、人にやさしい紙面作りというのは、過酷な新聞記者の労働のもとに成り立っている、というような話を聞いたりすると、これも先生がお話しされた「超矛盾」のひとつと思ってしまったが、こういう矛盾を抱えているのが経営ですか?

先生の回答

 本当に理想と現実の差みたいな事実である。矛盾を克服するのは、マネージメントという。矛盾でなく、きちんとやるのをシステムという。経営には両方ある。システム対応とマネージメント対応。システムで日ごろからネタをもう少し集めておくとか、苦労しないでやるとか。それからマネージメントで解決する問題である。この二つでアプローチして、言っていることとやっていることをなるべく一致させる。。そうしないと、ばれてしまう。楽しい生活と言いながら、取材者がきつい生活していると何となく臭ってしまう。本当にばれてしまう。だから、言っていることとやっていることの整合性をとった方がよい。一遍にはいかないが、長い目でみるとそのようにするのが良い。働いている方も上も下も使うのがマネジメントです。下だけ見て使うのでなく、社長くらいうまく使わなければ駄目である。うまくとは語弊があるが、そのように幅のある、禅的な考え方が必要である。どちらが偉い訳でなく、立場が違うだけである。みな同じである。1対1でやるのが一番良い。

 すなわち、マネージメントとシステムを使って矛盾を小さくしていかないと、やがてそのような矛盾は大きくなり、いずれ駄目になってしまう。

 最後に余った時間に「習慣は第二の天性」の話をされて、終了となった。