1-F フリーランスだから考えたいお金のこと

2018/01/19

古川 智子 Furukawa Tomoko

日本FP協会認定AFP
大阪府立大学総合科学部を卒業後、会社員、派遣社員などを経て2003年よりフリーランス翻訳者(中国語の和訳専門)。取扱分野は観光情報から石油化学メーカーの新規事業計画書まで。訳書に『日本製造業のイノベーション経済学分析―技術革新と組織改革の進化』(科学出版社東京、2017年)など。2016年5月にファイナンシャル・プランニング技能検定2級、同8月に日本FP協会のAFP認定を取得。

 
報告者:岡部師才(フリーランス翻訳者)
 



 2016年の統計局調査によると、雇われてもいない、雇ってもいないフリーランス労働者は就業者全体の5%(正規雇用68%、非正規雇用25%)である。副業・兼業も含めると1016万人とされている(ランサーズ株式会社の調査)が、本日は専業のフリーランスの方々を対象に、前半は状況の整理、後半は使える制度について、それぞれお金の話をさせていただきたい。

フリーランスが置かれている状況の整理

フリーランスを取り巻くお金

 貯蓄から運用益という収入を得ようと考えているフリーランスの方々は少ないのではないだろうか。出ていくお金をすべて支出と考えるのではなく、貯蓄という項目を意識してみたい。
 支出面で抑えたいのはやはり税金である。貯蓄の選択肢として公的年金、個人年金、投資、保険を提案し、お金の守りを固めようというのが本セッションの趣旨である。

外部環境の整理

 フリーランスは報酬のみが収入であり給与はない。請求、回収、報告はすべて自己責任である。収入の把握は難解で、為替や与信がない(ローンの審査が通りにくい)リスクもある。福利厚生もすべて自己責任で設定する。
 強制的な支出として税金、国民保険、国民年金、介護保険がある。保険や税金の計算は所得額が基準となるため、申告する所得が低いほどこれらの支出を抑えられる。
 住居費、光熱費、通信費などの費用は節約で抑えることもできるが、経費に算入したほうが得な場合もある。
 一部の地銀、信金定期預金を除き、銀行預貯金はマイナス金利政策のため増えず、インフレ目標の設定により実質目減りする。仕入れがないフリーランスにとって、物価上昇により得られる利益はほぼない。報酬かさ上げの交渉材料とはなるが、成功することはまれである。
 少子高齢化という社会環境により、税負担も上昇傾向にある。大都市圏への人口集中により、確実な不動産投資先も選定が困難に見受けられる。
 消費税は売上が1000万円以下の事業者は免税ではあるが、今後10%に増税された際にはクライアントと交渉してほしい。中小企業庁の消費税転嫁対策室は取引先への覆面調査などを実施しており、よい相談先となる。

ライフステージ

 会社勤務であれば定年後自動的に年金生活となるが、フリーランスに定年や引退義務はない。ただし老後は開店休業となるリスクがあり、政府による保証はない。独立する場合は、生活費3年分くらいの貯蓄があることが望ましい。
 65~70歳になると老齢年金が支給される。現状年金は分離課税であるが、今後変更される可能性もある。年齢を重ねるにつれ健康リスクも増大するため、年金を当てにせず若い年齢で保険を始め、費用を抑えるのがよいかもしれない。
 フリーランスに「転業」はあっても「転職」はない。現状維持、副業や投資の検討、転業や事業拡大、会社勤めへの復帰など、タイミングに応じて判断が要求される。結婚、子供の学費(ローンは通りにくい)、老齢者の介護(親族からの依頼)など、家族状況に応じた予算立ても必要となる。
 自営業者の一部でもあるフリーランスと被雇用者とでは、適用される社会制度が大きく異なる。後半はフリーランスが自営業者として使える制度をご紹介していく。

使える制度

 まず、青色申告を強く推奨したい。所得額にかかわらず、最大65万円が所得税から控除され、白色申告でこの制度はない。被雇用者には使用できない制度である。
 青色申告は、3月15日までに税務署に承認申請書を提出する必要がある。手続きは確定申告書に青色決算報告書を添付すればよく、複式簿記の知識がなくてもよい。便利な会計ソフトやクラウドサービスもある。
 仕事の備品費用は消耗品費に計上できる。ただし、来年以降は10万円以下の品目に限られる見込みで、パソコンなど高価な物品は減価償却費として数年に分けて計上するのがよい。
 支払実績がよくないクライアントに関しては、帳簿価額の5.5%以下に限り、前倒しで貸倒引当金が計上できることも知っておきたい。

各種所得控除

 書けるだけ書くのがよい。配偶者(特別)控除(配偶者の所得103万円以下)、雑損控除(住居の損害等)、セルフメディケーション税制(対象薬年間8.8万円以下)を含む医療費控除(年間10万円以上)、社会保険料控除(国保、年金)、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄付金控除などがある。

生命保険料控除

 2011年から旧生命保険(最大枠5万円)が死亡保障と医療保険(同各4万円、計8万円)に分割されたため、それ以前の医療保険については枠の見直しを一考する価値がある。
 個人年金保険は生命保険料控除の枠で計上する。年金受給は雑所得で経費が差し引かれるため、マイナス金利環境では自分に個人年金保険を掛けるのもよい。

小規模企業共済

 (独)中小基盤整備機構運営の「経営者(個人のため)の退職金制度」で、個人事業主も対象になる。銀行か青色申告会で加入でき、掛金は全額が控除対象となる。月額1000~7万円の自由設定で、増額、減額、前納も可能である。機構によれば基金は毎年1%程度伸びており、固い投資先ではないだろうか。受取は一括なら退職所得、分割なら公的年金等雑所得(いずれも分離課税)となり控除額もある。

確定拠出年金

 元本のみ保証(手数料による元本割れの可能性あり)されている投資商品。投資先商品を3種類以上から選択する。受給開始は原則60歳からで、受取は一括なら退職所得、5年以上分割なら公的年金等の雑所得となる。掛金は毎月5,000~6.8万円(国民年金基金との合算)で、フリーランスの上限は会社員や主婦(2.3万円)の倍以上である。

NISAとうまくつきあおう

 株式などの配当・譲渡益等が非課税となる小額投資非課税制度であり、一般NISA、ジュニアNISA、つみたてNISAの3種類がある。非課税投資枠はそれぞれ120万円、80万円、40万円(/年)で、20歳以上の日本居住者(ジュニアNISAは同20歳未満)が対象となる。2023年まで(つみたてNISAは2016~37年)新規枠が開設できる。つみたてNISAの投資先は一部投資信託などに限られ、一般NISAとの併設はできない。ジュニアNISAでは、2親等以内の親族が運用を管理する。

質疑応答(Q&Aセッション)

Q/定期預金が地銀と信用組合でよい場合があるとのことだが、どういうことか?
A/個人向け融資が多く、高い利息の定期預金商品がある場合がある。

Q/住居費、光熱費、通信費について、節約と経費算入のどちらが得かの判断基準は?
A/家で仕事をしている場合、全体と作業部屋の割合によって、経費を案分計算できることを参考にされたい。

Q/国民年金基金と確定拠出年金の併用は可能か?
A/可能。自分で運用できる確定拠出年金にすべて切り替えることを推奨する。

Q/備品を費用として来年までは30万円まで計上できる特例があるが、それ以降継続とはならないのか?
A/継続されるというアナウンスがないため、打ち切られると考えている。

Q/PCをパーツごとに購入し、合計10万円を超過した場合はどうなるか?
A/その場合はパーツごとにバラバラに計上し、消耗品とできる。

Q/海外のクライアントからの収入は源泉徴収されるのか? 
A/自己の経験からの回答となるが、非居住証明を提出すれば報酬に課税されないはずである。もし二重課税の恐れとなる場合は問合せが必要となる。