極めよう、それぞれの道~つなげよう、言葉の世界

2018/01/19

第27回JTF翻訳祭企画実行委員長
高橋 聡 Takahashi Akira

 


 翻訳祭が現在のようなマルチトラック形式になり、会場を今のアルカディア市ヶ谷に移したのは2010年、第20回という大きい節目を迎えたときのことでした。それ以来、参加者数は順調に増え続け、前回はついに1,000人の大台に乗りました。特に前回は、委員長を除く全員が個人翻訳者という異例の実行委員会を編成し、翻訳者向けのコンテンツを多くした結果、個人の参加者が倍増。ここに至って、翻訳祭はひとつのピークを迎えたと言ってもいいでしょう。
 そのピークに続く今回は、不肖・私が委員長を拝命し、前回のメンバーをほぼ引き継ぐという、これも異例の展開となりました。運営方針は、前回の反省から自ずと決まりました。コンテンツは、前回並みかそれ以上に充実させたい。翻訳者向けは大切だが、業界全体のこともしっかり考えられる場にしよう。その目標に向かうためのキーワードは何だろう……。その答えはやはり、「言葉」でした。翻訳者が読み取り、書き綴るのは言葉。発注者と翻訳会社と翻訳者のコミュニケーションをつかさどるのも言葉。機械翻訳が処理するものも言葉。そもそも、機械翻訳のプログラムを作り出しているのもある種の言葉。言葉を使うそれぞれの道をきわめていきながら、ひとつにつなげていける業界であってほしい――そんな思いを今回のテーマには込めました。
 一方、会場の混雑を少しでも改善する、ひとりでも多くの方に登壇の場を提供する、前回までの実績に安住することなく新しさを打ち出す……といったことも考えたつもりです。ご参加くださった方々の声は少しずつ届いていますが、第27回翻訳祭、いかがだったでしょうか。
 ピークは同時に、ひとつの限界でもありました。この2年間で痛感したのは、「マルチトラックでコンテンツを充実させるほど、参加者を悩ませてしまう」というジレンマです。トラック数の見直し、セッションの事前予約制、後日の動画配信など、満足度を上げる方法はいくらでもあるでしょう。なにより、今の会場で今の形式を続けるのはなかなか厳しい。その意味もあって、今回の翻訳祭を企画し始めた早い段階で、次回はいったん関西で開催することを決定しました(2018年10月25~26日、京都で開催)。8年間続いた形式の翻訳祭は、ひとまず2017年で終わり、今後は新たなステージに進むことになります。
 これからの翻訳祭、一緒に作ってみませんか。



高橋 聡 Takahashi Akira


第27回JTF翻訳祭企画実行委員長
IT・技術翻訳者、JTF専務理事

CG以前の特撮と帽子をこよなく愛する実務翻訳者。翻訳学校講師。学習塾講師と雑多翻訳の二足のわらじ生活と、ローカライズ系翻訳会社の社内翻訳者生活を経たのち、2007年にフリーランスに。現在はIT・テクニカル文書(特にニュース、ブログ)の翻訳を手がけつつ、翻訳学校や各種SNSの翻訳者コミュニティに出没。2016年よりJTF理事。最近は、翻訳者が使う辞書環境の研究が個人的なテーマになっている。共著『翻訳のレッスン』(講談社)。

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