1級合格者が語る知財翻訳検定合格のコツ

2019/01/18

10/26 Track4 13:00-14:30

パネリスト:

加納 淳子 Kano Junko

株式会社MK翻訳事務所 特許翻訳者・オフィスマネージャー。化学メーカー勤務等を経て2006年MK翻訳事務所入社。知的財産翻訳検定1級:電気・電子工学(日英)

永原 健嗣 Nagahara Kenji

株式会社MK翻訳事務所 シニアトランスレータ。大学技術職員、フリーランス翻訳者等を経て、2013年MK翻訳事務所入所。弁理士試験合格。知的財産翻訳検定1級:化学、機械工学、電気・電子工学(英日)

湯浅 豊裕 Yuasa Toyohiro

WIS知財コンシェル株式会社 翻訳事業部。University of Wales, Aberystwyth卒(BSc Mathematics)、知的財産翻訳検定1級:機械工学(日英、英日)

清原 典子 Kiyohara Noriko

WIS知財コンシェル株式会社 翻訳事業部。大阪外国語大学外国語学部地域文化学科卒(英語専攻)、知的財産翻訳検定1級:機械工学(日英、英日)


モデレーター:

梶木 正紀 Kajiki Masanori

株式会社MK翻訳事務所 代表取締役・創業者。言語処理学会第24回年次大会(2018年岡山)、MT Summit Workshop(2017年名古屋)等セミナー講師多数。社員の知財翻訳検定1級取得に力を入れている。
 
報告者:鈴木 のぶみ(個人翻訳者)
 



 翻訳祭ではあまり取り上げていない、知財翻訳検定試験。1級合格者をパネリストとして、検定の説明、合格のコツ、勉強方法、合格のメリット、企業での取り組みを聞いた。聴衆は特許翻訳者が8割、1級合格者も何人か。実務の大切さが何度も語られた。特許翻訳者のブランディングとして取り組む価値があると感じた。

梶木:事務所では社員に1級取得を努力目標としている。受験料を負担、受験時間は勤務扱い。受験を通じてスタッフの成長が分かる。
加納:平成28年に電気・電子工学(日英)1級に合格。前職は化学メーカーの広告関係で英語も得意ではなかった。入社後、レビューを担当。入社約10年後、ようやく翻訳を任され、その年に1級に合格できた。
永原:入社以来英⇄日翻訳を担当。専門は地球惑星科学、大学技術職員としてものづくりの世界に入り、その後弁理士試験に合格。翻訳スクールに通い、フリーランスから入社。検定はこの3年で3科目合格(化学、機械工学、電気・電子工学)。今後は日英に挑戦したい。
梶木:3科目合格している人は、永原さんしかいない。
湯浅:2011年に翻訳を開始、2016年に機械工学(日英、英日)に合格。社内の昇級条件に各種検定があり、管理職として率先して受験。合格して安心した。受験対策は特にしていない。普段は、読みやすくわかりやすい訳文となるよう、「子どもにも理解できる」ことを意識して翻訳。Plain English、テクニカルコミュニケーション等も参考になる。
梶木:WISでは昇給の基準とのことだが弊社では合格者に一時金を出す。受験日が日曜日にあたるためモチベーションを高めるため。
清原:翻訳7、8年目で受験。機械工学(日英、英日)合格。上司の湯浅さんが合格したので、受験しなければと感じた。試験中意識したのは、「仕事より少しだけ自由な気持ちで書く」。時間がないので原稿の誤記等を疑わず「正確で分かりやすく」を重視。自由すぎてミスしないように、クレームは丁寧に訳した。
梶木:知的財産翻訳検定の紹介をする。春秋の年2回、メールで問題送付、訳して返信。1級は知財法務実務、電気・電子工学、機械工学、化学、バイオテクノロジーの5分野。分野別なので、専門性が高い。他に、中文、独文の和訳もある。午前の科目と午後の科目であれば併願可能。受験料1万5千円。1級合格者には2次面接試験がある。認定証は日本語と英語がある。合格者はウェブサイトに答案がアップされ、プロフィールを公開できる。弊社では合格者リストを見て問い合わせがあった。製薬分野がないのが少し残念。
 MK翻訳事務所のこの秋の知財翻訳検定一級受験者の感想だが、化学は有機、無機、材料、ポリマ等の広い知識が必要。独文和訳は自動車、先端技術が出題され、新しい言葉を作り出す力が必要。バイオは難解な表現が多く、技術、文法とも知識が必要。電気・電子は今回難しく、センテンスが長かったそうだ。合格通知には講評が記載されているか。
湯浅:点数はなく、ミスの指摘があった。
清原:不合格の場合は、A、B、Cのランクが記載される。
加納:抜けや間違いが指摘されていた。

ここから、質疑応答形式。
Q(梶木、以下同):捨て問題はあるか?
加納:請求項、背景技術、実施形態の3問。70%で合格と仮定すると捨てる問題はない。
梶木:図面の説明と要約は出題されていない。化学は実施例を含む4問。
永原:比重が分からず問題数も少ないので、どれも捨てられない。
Q:3時間という試験時間は?
清原:よく計算された時間。全体で15分しか見直しに使えず、不明点に絞った。
湯浅:専従翻訳者がギリギリできるレベル。1問50分で解き10分見直しで丁度。
Q:時間配分や時計等の工夫は?
清原:腕時計使用、1時間で1問解くようにした。
加納:2時間で3問解いて、1時間でチェック。チェックを重視した。
湯浅:1時間1問でその時間内に見直し。
永原:先に全部解き、余った20分でチェック。翻訳と時間をあけたかったのでラストにチェックした。
Q:タイポ、誤記の処理は?
湯浅:実務ではコメントするが、誤記はなかったのでしなかった。
清原:誤記かどうか考えると迷うがその時間はない。多分なかったと思う。
梶木:過去の問題では見られなかった。要項にも指示がない。
Q:苦手なものが出題されたときの対処は?
加納:たいてい知らないものが出るので、ネットで検索して用語を拾ってから解く。
Q:試験時間でネットを検索しても構わないのか?
湯浅:通常の作業と同じようにネットを使える。
Q:その場で検索した内容でも役に立つか?
加納:ないよりは助かる。
Q:Wordのまま上書きで解答するか?CATツールや機械翻訳の使用は?
湯浅:当時はツールがなく、Wordで解答。今ならツールを使うし、APIによりMTを使うことも考える。
清原:原文をプリントアウトしてWordに訳した。
永原:Wordで上書き。
加納:Memsourceを使い、用語を統一。
Q:セルフチェックの方法は?
湯浅:上書き翻訳→印刷→目視で指差しながらチェック。
清原:目視。不安な個所のみ。
永原:画面を指さして目視でチェック。
加納:普段と同じように、原文と訳文を出力し、マーカーを使用してチェック。その後、訳文だけ読んで確認。CATツールのQA機能で数字をチェック。
Q:過去問の活用方法は?
加納:使っていない。直訳が好まれるか等参考になるので、次の受験では使う。
永原:感覚がつかめるので解く方がよい。出題形式を見ておくとよい。
清原:2日前にざっと見た。
湯浅:パッと見て出題形式を確認。模範解答と突き合わせて確認するとよい。
Q:複数科目合格の秘訣は?
永原:普段の仕事を丁寧にする。分かりやすさを重視する。
Q:異なる言語方向で合格する秘訣は?
清原:普段は英訳が中心。和訳の受験時は、原文として見ているので何とかできると思って受験。
湯浅:普段は英訳がメインだが、原文は読むので和訳もできた。
Q:辞書は?
加納:英辞郎とWeblio。
永原:オンライン辞書を使用。可能な限り、Google検索等で当業者の情報を探す。
清原:Longmanのオンライン版(無料)で可算・不可算を確認。
湯浅:会社のサーバの辞書を使用。Google Patentsは辞書として使える。
Q:受験場所は?
清原・湯浅:会社の自分のデスク。
梶木:普段の業務環境と同じほうがよい。
Q:合格するために大切なことは?
湯浅:子供にも理解できるように訳す。普段の仕事をしっかり。
清原:普段の仕事をきちんとして、当日は肩の力を抜く。
永原:とてつもなく難しいわけではないので、原文を理解して分かりやすさを意識する。普段から地道に。
加納:日々の業務が受験勉強になる。日々妥協せず、分からないときには徹底的に質問。フィードバックをもらうと成長できる。
Q:特許以外の分野、受験に向けて学習中の人へのアドバイスは?
湯浅:仕事ができることを示せるので、腕試しとして挑戦してほしい。
(会場からの質問)
Q(会場、以下同):受験を始めた級は?
加納:業界的な評価は1級合格者が高いので1級からでよい。
永原:自分が受かると思ったものから受験するとよいが、講評があるので1級からでも。
清原:最初は1級と2級をダブル受験し、2級は合格、1級は不合格。2級でも易しくはないので、2級からでも。
湯浅:2級から受験、その講評で1級の受験を勧められた。おかげで1級も合格できた。
Q:調査の時間はどれくらいか。十分調査できないときは?
加納:ネットを検索して、1ページを約5分で読み、途中でも見るので計約10分。慣れていない分野は、その場で調査できた範囲の知識に基づいて訳すしかない。
永原:文脈等がヒントになるので、全体を読んで流れをつかんでから調べたほうが絞れる。
清原:時間が足りないときは、分かっている範囲で訳す。
湯浅:時間内に訳文を仕上げる方を優先。
梶木:満点でなくても合格できるはず。分かる範囲で解くしかない。
Q:どのように採点されるのか?
湯浅:検定の運営側ではないので、公表分以外は分からない。
梶木:採点者が2名いること以外は不明。
Q:法務実務の試験内容は?
(パネリストには経験者がいないため、聴衆の回答)
中間処理(拒絶理由)と契約書。
Q:1級の面接の内容は?
梶木:試験官1人、ホテルのカフェで面談。試験内容に関する質問はあるが、これで合否を決めるというものではない。本人確認が目的では?20分程度。
永原:試験については5~10分程度か。